エンタメで哲学!映画・ドラマのネタバレ感想と一般教養!

映画・ドラマ感想を哲学や一般教養を使ってわかりやすく解説(ネタバレあり)

ネトフリの台湾ホラー映画『呪詛』がとにかくヤバイ

ネトフリで2022/07から配信された台湾ホラー映画『呪詛』がとにかくやばい。

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視聴者の認識に働きかけてくる心理学や哲学を応用した視聴者参加型のPOV
ハッキリ言って欧米に多い派手な演出が売りのホラーと比較にならないほど怖い。
というか危険。
すっごく面白いんだけど、ホラーを見慣れている人以外は見ない方が無難かもしれない。
子供が見たら『リング』と同レベルのトラウマを植え付けられることになるだろう。

とにかくホラー映画としてのクオリティは世界最高レベル・一級品なんだけど、心理的な錯覚を使って視聴者の現実にまで影響を与えてくるコンセプトが邪悪。

『哭悲/THE SADNESS』も話題沸騰中だし、台湾ホラーが今すごいという話し。

ネットフリックスドラマ『バイオハザード』がいろいろやばかった件(ちょいネタバレ)

カプコンの人気ゲームの実写化、ネットフリックスドラマ『バイオハザー
ド』が色々とやばかった。2022/07/15公開。

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まず主人公のジェイドが自分の凡ミスで仲間の決定的なピンチを作り出しまくっている感じが痛い。お前のせいで仲間食われてんぞ…。

あとは2022年現在と2036年を2つの時間軸で描いているのだが、現在と過去のキャストの顔が結構違う。
それはまだいいとして、主要人物の1人が2022年と2036年で人種すら変わっている…。誰?っていう感じ。

イヴリンっていう人物がアンブレラのCEOなんだけど、彼女がレズビアンで妻との関係性・不仲について多く言及されているのも気になる。

レズなのは全然いいんだけど、ストーリー上でもっと知りたいことは全然説明されていないにもかかわらず、性的傾向を会話に入れてくるのでバランスが悪い

すっかりポリコレ枠キャラになってしまっている。

2022年と2036年のシーンがコロコロ変わりすぎるのも微妙。

最後は何がヤバいって最後巨大ゾンビクロコダイルが登場。ワニワニパニックの中、ストーリーはまったく何も解決せずに終わるという意味不明な結末。

バイオの実写化は『バイオハザードウェルカムトゥラクーンシティ』も結構叩かれているけど、ネトフリオリジナルドラマ版のほうが数倍やばい。

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ネットフリックス自体は好きだしいつも利用してるけど、『バイオハザード』をみた後では脚本とか企画の段階で精査がうまくいってないのかという印象を受けてしまったというお話。

『ナイトエージェント』ネタバレ感想評価,マクガフィンの重要性,ネットフリックスドラマ

ネットフリックスドラマ『ナイトエージェント』

ネットフリックスのスパイアクションドラマ『ナイトエージェント』(2023)を全10話一気見したネタバレ感想と、サスペンスにおけるマクガフィンの重要性を解説。

ネットフリックス『ナイトエージェント』あらすじ

地下鉄に乗っている最中に爆弾を見つけ、乗客を避難させることに成功したFBIエージェントのピーター(ガブリエル・バッソ)。しかしピーターの死んだ父親が機密情報を売った疑惑があったため、ピーター自身も陰謀論者からテロ事件の犯人扱いされてしまう。

それから1年後。ピーターはホワイトハウスの地下で夜にエージェントからの電話を取る任務についていた。

ある日、ローズという女性から叔母夫婦が殺されたと電話が入る。ピーターはローズに暗殺者から逃げる方法を指示するが…。

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『ナイトエージェント』のネタバレ感想

スリリングなアクションや、テンポ感に優れた75点くらいの佳作。サスペンスのストーリーラインが弱かったのが難点だった。

ピーターはローズという女性を助け、孤立した二人でホワイトハウス内部の陰謀・テロ計画を阻止する内容。

2人が暗殺者に狙われながら、ホワイトハウスの上層部の誰が裏切り者なのかを探るまでは非常に面白い。

ボニー&クライドよろしく、恋人同士である暗殺者2人の切ないストーリーも見応えがある。

しかし中盤で、犯人が誰かあっさり判明し、巨大なテロ計画の動機まで分かってしまうのはいただけない。

しかも動機が微妙なものなので興が削がれた。テロ計画とその動機に魅力がないならいっそのこと詳細は不明の脅威にすればよかったのに。

たまには使おうマクガフィン

サスペンスが好きならマクガフィンを知っているかもしれない。

マクガフィンとはサスペンスの帝王アルフレッド・ヒッチコック監督が広めたストーリーの道具で、例えば機密情報の入ったマイクロフィルム!など。

内容そのものには意味がないが、それをめぐって敵と味方が争うためのプロット装置だ。

マイクロフィルム、重要書類、研究データなどなど、それっぽいものを映画やドラマで見たことがあるだろう。それがマクガフィンだ。

敵味方が争うほどすごく重要だけど、中身は最後までわからないものとも言い換えられる。

マクガフィンヒッチコックが使いすぎたこともあってか、最近のサスペンスではきっちり事件の詳細や動機が語られることも多い。

Netflix『ナイトエージェント』もそうだ。

しかし、ホワイトハウス内部の陰謀というのは、陰謀論に踊らされて中東の指導者をテロリストだと誤解した副大統領が、地下鉄を爆破してその時に地上にいたその指導者を暗殺しようとした…というもの。

計画が強引で、動機も微妙。、1人を暗殺するのに犠牲が大きすぎる…。

それなら、こんな時こそマクガフィンを使えばよかったのでは?

主人公たちが機密データを奪い合う話にして、副大統領の上にも黒幕がいるていにして、テロ計画の詳細や動機はベールに包んでもよかったと思った。

しょうもない計画や動機なら隠されていた方がストーリーの推進力は増す。

なぜなら人は謎そのものに惹かれるからだ。

Netflix『ナイトエージェント』からはそんな教訓が反面教師的に学べた。

 

韓国ドラマ『ザ・グローリー』日本のドラマとの差。いじめ問題は起こったら終了!(ネタバレなし)

韓国ドラマ『ザ・グローリー』

ネットフリックスの韓国ドラマ『ザ・グローリー』をパート2の結末まで全16話視聴。

壮絶ないじめを受けた女子高生・ドンウンが18年後にいじめっ子のヨンジンたちに復讐する話なのだが、本作にあるすごい怖いテーマに気づいた。

感想や日本のドラマとの差について語っていく。

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韓ドラ『ザ・グローリー』いじめ問題は基本的に取り返しがつかない

(ちょっとからかったり、ちょっと仲間外れにされるような誰もが経験するようなものはいじめから除外)

『ザ・グローリー』を見ていてヒシヒシと伝わってくるのは、主人公は自分の尊厳を取り戻すために復讐をしているのであって、いじめの問題を解決したいのではない!ということ。よく考えると怖い事実。

いじめの問題は発生したらもう遅い、基本的に解決が不可能だということ。

本人の努力や、いじめた人間の謝罪では基本解決しない。なぜなら心が壊されているからだ。

心の問題は体のように目には見えないが、回復しないダメージを負うことがある。事故で腕を失ってしまったらつなげることができない(すぐに処置しない限り)と同じだ。

一緒にすると色々誤解がありそうだが、いじめを受けた人は戦場でのPTSDや親の虐待によるトラウマと近しいダメージを負うことになる。

ドラマ『ザ・グローリー』から学べるのは、いじめは起こってしまったら取り返しがつかないので、絶対に起こしてはならないという倫理規範だ。

端的にいうと、「子供同士でいじめが起こっても人生長いしなんとかなる」というのは大人の都合の良い解釈でしかないと知り、そういう考えは捨てるべきだということ。

そんなシリアスなメッセージが浮かび上がってきた。

日本ドラマと韓ドラの差

K-POPなどの影響もあり、今や年配の方だけでなく若い世代にまで韓ドラが浸透している。イカゲームはNetflixの世界ランキングで1位を獲得するほどの人気を見せた。

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私は日本のドラマも韓ドラもそれなりに見ているが、脚本や演出は韓国ドラマのほうが平均的に高いと感じることが多い。ザ・グローリーもキム・ウンスクによる優れた脚本・ストーリーラインが見どころだった。

  • 日本の製作陣は海外で最新技術やノウハウを学ぶ機会が少ない
  • 日本はガラパゴス的な制作環境により分業化が進まず、細かい分野のプロがいない
  • 韓国は国がエンタメにしっかり投資し、若手の海外研修なども多い
  • 韓国の人は作品のクオリティに超辛口だから手が抜けない

などなど理由はたくさんある。

結論をいうと世界をマーケットとしている韓ドラと、国内だけに目を向けている日本の違いがある。

日本は人口が多いこともあり、日本だけでビジネスが成立する。海外受けを狙う必要はないという前提条件が、いつしかスポンサーがそれなりに設けられればいいと良くないカタチで固定化されてしまったのだろう。

あと個人的にかなり問題だと思うのが、日本のドラマには韓ドラ(ザ・グローリー)のように社会的・倫理的なテーマを上手に入れ込んだ作品が少ない。

社会問題を入れたら入れたで話が小難しくなるので、メインターゲットの中高年には受け入れられないというジレンマがあるのだろう。

結果、日本では表面上だけで泣かせてくる記号的な作品が量産されている

極論をいえば、海外に受け入れられなくても日本独自のすごいドラマや映画が作られればそれでいいと思う。しかし挑戦できる構造やクオリティを求める構造にはなっていないのだ。

斬新なドラマを求めている私にとっては切ない現実だ。