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実写ドラマ『沈黙の戦艦』ネタバレ感想!なぜ漫画の実写は成功しにくいのか?

実写『沈黙の戦艦』

実写『沈黙の戦艦

Amazon Prime Videoで2024/02/09から公開された実写ドラマ『沈黙の戦艦』を視聴しました。

海上自衛隊所属で潜水艦の艦長・海江田(大沢たかお)と乗組員がアメリカ所属の原子力潜水艦ジーバットを乗っ取り、米軍を相手にしながらある目的を達成しようとするストーリーです。

「やっぱり漫画の実写化は難しいなあ」と思いました。ドラマを視聴した少しネタバレありの感想と実写化について気づいたことを書いていきます。

全話のレビューはこちら↓

cinemag-eiga.com

実写ドラマ『沈黙の戦艦』ネタバレ感想

米軍との共同作戦だった原子力潜水艦・シーバットを乗っ取り、米海軍と戦闘しながら戦争スレスレの状況で日米同盟からの脱却を図るというコンセプトにワクワク!

海江田ら乗組員が原子力潜水艦を巧みに操作し、アメリカの潜水艦や戦艦を手玉に取るシーンは痛快です。

ただ、全体的にすごく面白いかと言われると微妙で、戦闘シーン以外に大きな見どころを見つけられませんでした…

 

実写ドラマ『沈黙の戦艦』が微妙な理由

沈黙の戦艦』を視聴した後に原作漫画を読んでみて、漫画の実写化が微妙になってしまう理由が明確になったので3つの理由をまとめておきます↓

尺の都合よるストーリーの端折り

沈黙の戦艦』は全部で32巻もある大作なので、映画どころか全8話のドラマにしても尺を削りまくらなくてはなりません。

その結果、本筋のストーリーに関係ない細かいエピソードやセリフがカットされまくることになります。

しかし実際は、「神は細部(ディテール)に宿る」の言葉からわかるように、その作品の面白さはディテールにこそあるのです。

原作漫画のディテールを削ってしまった実写化作品が面白くなるはずがありません。

しかし、尺(時間)の都合があるので、どうしてもディテールを削らなくては実写化はできません。

話が長い作品を実写化する場合は、そのジレンマが必ず起こります。

そこで、ストーリーの脚色(原作のストーリーの変更)が必要になるわけです。

脚色が上手くいっていて素晴らしい作品になっているものもたくさんあります。

しかし実写ドラマ『沈黙の戦艦』の場合は原作のストーリーが長いので、削ることしかできなかった印象を受けました

物語の骨組みだけで、話の面白さとなる“肉”が少なかったと思います。

もしかするとミリタリーファンなら潜水艦同士のバトルだけで大満足!かもしれません。

しかしストーリー性を求めると『沈黙の戦艦』は物足りないと言わざるをえないでしょう。

時間感覚を無視できる漫画、できない実写

漫画は現実の時間感覚をある程度無視できます。

実写は時間感覚の無視はできません(スローモーションや早送り的な表現をのぞいて)。

漫画は時間の伸縮を自在にデフォルメできるメディア!といえばわかりやすいかもしれませんね。

そこに漫画と実写の根本的な違いがあり、情報量のコントロールの難しさが生まれます。

漫画ならたった1コマで「したり顔をした敵キャラが自分の作戦や感情を読者に説明する」ことができます。

実写だと文字をイチイチセリフにしないと行けないので、同じ情報量を伝えようとすると思ったより時間がかかってしまうケースが多いです。

文字を読むのと、語るのと、どっちが早いかの違いですね。

また漫画なら1コマに複数のキャラクターを書き込み、一瞬で全員の表情を読み取らせることも可能です。

実写だと漫画のコマに比べて物理的に見なければいけない範囲が広いので、全員の表情を確認するために1人1人を映し直したりします。

さらに、漫画なら一瞬の攻防を数ページにわたって描くことができます。

実写でそれをやるためにはスローモーションにするしかありません。

このような時間表現の違いが何を生み出すかというと、物語の情報についての満足感です。

漫画の場合は読者がじっくり読めば、そのコマの細部で何が起こっているかいくらでも時間をかけて想像できます。

コマとコマの間も実は脳内で補完しながら読んでいます。

読み手が能動的に補完しているので、必要な情報を得たという満足感は高まるでしょう。

逆に実写の場合は鑑賞者がそのシーンに使える時間が限られているため、満足に情報を得られなかったと感じやすいのです。

リアリティラインを変える必要がある

実写にするとリアリティラインを上げなくてはいけない場合が多いです。

実写映画『カイジ』など挙げればキリがないですが、漫画的なストーリーをそのまま実写にすると、現実味がなさすぎる場合が少なからずあります

ドラマ『沈黙の戦艦』でいうと、核弾頭を積んでいる可能性のあるアメリカ海軍の原子力潜水艦を強奪した海江田を総理大臣たちがサポートする流れがリアリティなさすぎて物語に没頭できませんでした。

現実でこんなことが起きたら内閣は絶対に海江田をサポートしないだろ…と、フィクションだとわかっていてもツッコミが頭をよぎってしまうからです。

まとめ

実写『沈黙の戦艦』がイマイチだった話から、漫画と実写でメディアとしての性質が違いすぎるので難しいというところまで語りました。

題材にもよりますが、改めて考えるとやっぱり実写化が失敗を招くのは避けられない気もします。

それでも実写化みたくなっちゃうんですよね。人類全体のジレンマです!