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韓国映画『キル・ボクスン』殺人アクションとダイバーシティ(多様性)

Netflix韓国映画『キル・ボクスン』

シングルマザーが暗殺者として暗躍するNetflix韓国映画『キル・ボクスン』を視聴。

殺人アクションもスタイリッシュでとっても面白かったのだが、それはまあ別記事で詳しく語るとして、韓国の作品ってダイバーシティ(多様性)をめちゃくちゃ意識して作られているなということ。その是非について語っていく。

映画『キル・ボクスン』と多様性

本作『キル・ボクスン』みたいな殺人アクション対決が目玉の映画に多様性を入れ込む手腕は見事という他ないだろう。

シングルマザー問題、子供がLGBTQという問題、暗殺会社に勤めてサラリーマンのように搾取される暗殺者たちと、さまざまな問題をうまく包含させている。

いろんな問題は含まれているけど、メインの殺人アクション劇のノイズにはなっていない。

結論からいうとネットフリックスの『キル・ボクスン』は映画と多様性のバランスの最適解だと感じた。

2010年代後半からハリウッドでも多様性という目標が掲げられ、2024年からはアカデミー賞のノミネート案件に多様性も含まれている。

簡単にいうと、人種的、性的なマイノリティをキャスト、キャラ、製作スタッフに入れなければいけないという決まりがある。

それもあって、世界的に作品にLGBTQのキャラクターを入れ込むことが主流になっている。

そんな時流の過渡期だからということもあるが、マイノリティキャラを入れるためにマイノリティを作中に登場させるという、作品のノイズになるようなものも多い。

最近だと良し悪しは置いておいてネトフリのドラマ版『バイオハザード』はウェスカーを黒人にしたのはいいとして、女性社長が同性婚をしている設定がストーリーに関係ない部分で主張されていたのが気になった。

スターウォーズ最後のジェダイ』では宇宙船の整備士ローズ役にアジア系のケリー・マリー・トランがキャスティングされ、彼女自身にはなんの問題もないのだが、キャラクターがストーリーにマッチしなかったために、ネットで炎上し、ダイバーシティのために映画を台無しにしたとケリー自身がバッシングを受けることになってしまった。

多様性という課題クリアのためだけのキャスティングはやめよう

黒人やLGBTQなど差別是正のために多様性のクリアは重要だ。ただバランスが重要で、そこだけが先行してストーリーに馴染まなければ結果として作品だけでなくキャストが個人攻撃されてしまう最悪の事態も起こりうる。

作品内で多様性の旗手のような振る舞いをさせて多様性を満たす一助になった俳優が人種差別の的になる。これほど不憫なことはない。

『キル・ボクスン』みたいなクライム系アクション映画でうまく多様性が入れ込めるのだったら、他の映画もできるはずだ。

本作のような、多様性もあってしっかり面白い映画が増えることを祈る。