ネットフリックスのスパイアクションドラマ『ナイトエージェント』(2023)を全10話一気見したネタバレ感想と、サスペンスにおけるマクガフィンの重要性を解説。
ネットフリックス『ナイトエージェント』あらすじ
地下鉄に乗っている最中に爆弾を見つけ、乗客を避難させることに成功したFBIエージェントのピーター(ガブリエル・バッソ)。しかしピーターの死んだ父親が機密情報を売った疑惑があったため、ピーター自身も陰謀論者からテロ事件の犯人扱いされてしまう。
それから1年後。ピーターはホワイトハウスの地下で夜にエージェントからの電話を取る任務についていた。
ある日、ローズという女性から叔母夫婦が殺されたと電話が入る。ピーターはローズに暗殺者から逃げる方法を指示するが…。
『ナイトエージェント』のネタバレ感想
スリリングなアクションや、テンポ感に優れた75点くらいの佳作。サスペンスのストーリーラインが弱かったのが難点だった。
ピーターはローズという女性を助け、孤立した二人でホワイトハウス内部の陰謀・テロ計画を阻止する内容。
2人が暗殺者に狙われながら、ホワイトハウスの上層部の誰が裏切り者なのかを探るまでは非常に面白い。
ボニー&クライドよろしく、恋人同士である暗殺者2人の切ないストーリーも見応えがある。
しかし中盤で、犯人が誰かあっさり判明し、巨大なテロ計画の動機まで分かってしまうのはいただけない。
しかも動機が微妙なものなので興が削がれた。テロ計画とその動機に魅力がないならいっそのこと詳細は不明の脅威にすればよかったのに。
たまには使おうマクガフィン!
サスペンスが好きならマクガフィンを知っているかもしれない。
マクガフィンとはサスペンスの帝王アルフレッド・ヒッチコック監督が広めたストーリーの道具で、例えば機密情報の入ったマイクロフィルム!など。
内容そのものには意味がないが、それをめぐって敵と味方が争うためのプロット装置だ。
マイクロフィルム、重要書類、研究データなどなど、それっぽいものを映画やドラマで見たことがあるだろう。それがマクガフィンだ。
敵味方が争うほどすごく重要だけど、中身は最後までわからないものとも言い換えられる。
マクガフィンはヒッチコックが使いすぎたこともあってか、最近のサスペンスではきっちり事件の詳細や動機が語られることも多い。
Netflix『ナイトエージェント』もそうだ。
しかし、ホワイトハウス内部の陰謀というのは、陰謀論に踊らされて中東の指導者をテロリストだと誤解した副大統領が、地下鉄を爆破してその時に地上にいたその指導者を暗殺しようとした…というもの。
計画が強引で、動機も微妙。、1人を暗殺するのに犠牲が大きすぎる…。
それなら、こんな時こそマクガフィンを使えばよかったのでは?
主人公たちが機密データを奪い合う話にして、副大統領の上にも黒幕がいるていにして、テロ計画の詳細や動機はベールに包んでもよかったと思った。
しょうもない計画や動機なら隠されていた方がストーリーの推進力は増す。
なぜなら人は謎そのものに惹かれるからだ。
Netflix『ナイトエージェント』からはそんな教訓が反面教師的に学べた。