背筋『目が』考察,死ねば見る側になれる?意味不明な小説のネタバレ解釈

背筋さんの新作短編ホラー小説『目が』

『口に関するアンケート』を読み、実写映画を見た帰りに勢いで背筋さんの新作短編ホラー小説『目が』を買って読んだ。

かなり難解で意味不明な部分が多かったが、何回か読んで腑に落ちたので考察&解説を書いていく。

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小説『目が』あらすじネタバレ

「視線」「神様」「功徳」「天国」の4つの章からなる。

「視線」は大学生のI(アイ)が、視線についての研究をしている先輩から、人がたくさんの視線を感じる廃墟の窓の話を教えてもらう。その廃墟では、一日中外を見つめていた老女が死んだらしい…という内容。

「神様」はMという女性がホテルの一室に入れられた中年男性が狂っていく様子を監視するバイトをする内容。男性は「お前は壁の向こうからずっと監視されている」と言われたせいで狂った。

その男性は死亡したと思われるが、Mは目がたくさんついたその男性に見つめられるようになり、狂っていく…という内容。

「功徳」は、大学生の樹が、彼女の明日香が“ポイントを貯めるため”にセミを踏み潰すなど悪いことをして最終的に“ポイント”が溜まって死亡…という内容。

「天国」は、明日香が彼女を見下していた樹に恨み節を述べ、「神様」に登場したMは明日香で、彼女自身が書いたものだと暴露。明日香は「天国はポイント制だ」と言い、その後に死亡した。
樹もポイントを集めることにした。そこで小説を書き、ポイントをゲットし、あなた(読者)と見つめる側になった…という内容。

小説『目が』考察ネタバレ

いつも一方的に見られる復讐

本作は視線についてのホラーである。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ…というのは哲学者ニーチェの有名な言葉だが、この概念がコンセプトの中心にあるのだろう。

自分は姿を見せずに相手を一方的に見つめる。ここには非常に大きな力関係がある。
カメラによる監視、のぞき行為などなど、相手を一方的に見て、弱点を笑うことができる。他人のSNSの投稿を見てバカにする。力関係は相手を見つめる方が上である。

樹と明日香の関係でいえば、樹は明日香を一方的に観察していると思い込んでいた。しかし、実際には明日香に“人を見下す人間性”を観察される側だったという結末。見ると見られるが逆転している。

視線には互換性があるのだ(深淵をのぞく時、深淵もまた…)。

明日香は復讐として樹に「お前も見られる側の人間だ」と教えた。
樹は自分が見られる側だということに我慢ができず、この小説を書いて霊感テストを載せ、私たち視聴者が俺に見られる側だと教えた。

見られている側は、見る側に回らないと我慢できない。そんな人間の習性を表していると感じた。死んで幽霊になってでも、相手を見つめる立場でありたい。人間の思考上のバグである。

死ねば“見る側”になれる

「視線」の章の内容を解釈するに、人が“見られている”と感じるのは主観的なものである。

だから、明日香の幽霊になって樹を監視しているのが事実でないとしても、樹はそれを想像することで見られる側に回ってしまう

逆にいえば、人は死ねば“自分は見られずに相手を見る側”になることができる
ホラー関係なしに「亡くなった身内がもし見ていたら、自分の行いをこんなふうに思うだろうな…」と想像したことがある人は多いと思う。それと同じ構図である。

明日香はそれに気づいたので死んで見る側に回ったのだ。明日香の霊が存在しないとしても、樹は彼女の視線を気にし続けることになる。そして耐えられなくなった。

自分が視線を意識した時点で、自分の中でそれが現実になってしまう。口による噂の力でただの大きな木が心霊スポットになってしまう『口に関するアンケート』の構図と一緒だ。

ポイントを貯めるの意味

神様が見ているから、人は善行を積む。では、明日香のようにセミを踏み潰す悪い行いは“誰が”見ているからやるのか?

そう考えると、神様の対義にある悪霊が見ているから悪行でポイントを積んだとも推測できる。

他のホラー作品や肝試しでは普通、人間が見る側。幽霊が見られる側である。

しかし本作『目が』では、幽霊こそが人間を見る側であるという、地味にすごい発想の転換がなされている

ポイントが貯まるのは、たくさんの視線を自分に注視させたときだと考えられる。明日香は悪いことをして他人の視線を得た=ポイントゲット。

小説を読ませるのも読者の視線を注視させることになる。だから明日香も樹も小説を書いた。

樹はこの小説『目が』を私たちに見せたことで、たくさんの目(視線)を集めた。自分の存在を私たちに意識させて、一方的に見る側に回った。そういう構造的に怖いホラーだと思った。

SNSの炎上行為と明日香の悪行

明日香のセミを踏み潰すとか、お地蔵様に飲み物をかけるとか、道路に供えられた花を持って帰ってお茶にして飲むとかの悪行は、いわゆるSNSで炎上するような行為である。

炎上動画にはたくさんの人間の視線=たくさんの目がそそがれる。明日香がフジツボのような目がたくさんある形態になったのは、たくさんの視線を集めたメタ的な表現だろう。

深淵を見つめる者は…の言葉通り、炎上動画を見ている私たちもXやGoogleのアルゴリズムに見られている。そんなメッセージがある気がした。

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映画やドラマの考察歴5年。映画好き歴20年。映画鑑賞累計2000本前後。ドラマは数百本。Webライター歴8年。いくつかのメディアでの執筆歴あり。2026年は日曜劇場『リブート』や『身代金は誘拐です』の考察を的中させました。映画やドラマの本質を追求するような解説や考察が書けるように日々精進しています。パーソナルな感想に普遍的な何かが少しでも宿っていれば幸いです。

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