
背筋さん著のホラー小説『口に関するアンケート』を読了!短編だけどめっちゃ怖かった。
何回も読んでストーリーの意味、「地獄は下にありますから」、テーマやコンセプト(なぜこんな小説になったか)を自分なりに咀嚼してみた。自説を解説していく。
口に関するアンケート実写映画の考察とストーリーネタバレ、原作との大きな違いはこちら↓

ストーリーの意味:翔太の呪い、杏の復讐
ストーリーの表層的な解釈をするなら、呪われた木によって死んでしまった杏が、復讐のために5人を木に集め、全員に証言させて誰の仕業か突き止め、復讐を果たしたのだろう。
竜也の死を願って結果的に杏を殺すことになった犯人の翔太は「じゃあ、死にますね」と言っていたので確実に死亡したと考えられる。
他の4人も死んだ可能性があるが「死にます」とは言っていなかった。生きて解放された可能性も残されている。ただ木の呪いの力や、次の項目で解説する赤い文章の意味を考えると全員死んだ線のほうが濃厚かな。
最後のアンケートの五問目に「書き起こしの音声データは何に記録されていたと思いますか?」と書かれていたが、これは肝試しのときに杏が木の前で錯乱して落としたスマホ。
スマホに録音された5人の音声がSNSで広がり、日本中に呪いが拡散されてしまう今後を示唆しているのだろう。
呪いを拡散するのは呪われた木の意志だと考えられる。
『口に関するアンケート』考察まとめ(完全ネタバレ)
地獄は下にありますから、高くしないと
翔太は、次にここを通る人物が羽化寸前に死んだセミのように死ぬことを願った。しかし木に向かって「(セミの死骸を見つつ)あんな風に殺してください」としか願わなかった。
その結果、言葉の意味がゆがんで伝わり、杏は羽化寸前で死んだセミになりきるように死んでしまった。つまり、木に登ったが、飛び立つ前に首を吊って死んだ。
美玲の証言によると、杏は必死に木に登ろうとしていた。死んだセミの魂が乗り移ってしまったようだ。だから口からセミの声が聞こえたのだろう。
(セミも呪いの木の力で死んだのかも)
川瀬健が首が普通の2倍くらいある杏を見たとき、彼女は穴をほりながら「地獄は下にありますから」「高くしないと、高くしないと」と言っていた。
杏が「地獄は下にありますから」と言いながら穴を掘っていた意味は、セミが7年間苦しんできた地中に犯人を埋めたいからだろう。
「高くしないと、高くしないと」は、ロープをかける位置を高くしないと、首を吊ったときに足が地面についてなかなか死ねない…という意味だろうか。
杏はいつの時点で死んだのか?
警察が健と颯斗に「ここで女性が首を吊ってなくなってました」と言っているので、その前に肝試しをした2人は生きている杏でなく幽霊をみたと考えて良いだろう。
颯斗は死体について「顔が腐りかけていた」と言っているので、1カ月前に失踪してから少し経ったあと、呪われた木で首吊り自殺をしたと考えられる(健と颯斗が肝試しをしたあとに死んだわけではない)。
周りに行ったことのある奴がいない→全員死んでいる
オカルト研究会の川瀬健が、呪われた木は有名な割に周囲に行ったことがある人間がいないと言っていた。これは、実際に行った人間が全員死んでしまった示唆ではないだろうか。だから行ったことのある人間が残っていないのでは?
一連の出来事は翔太の呪いによって殺された杏の復讐と考えられると最初に書いたが、杏の復讐であれば、オカルト研究会で別のグループだった川瀬健や堀田颯斗が巻き込まれる理由がわからない。
木の下にいた首の長い杏を見たから?それだけでは健と颯斗は復讐対象にならない気もする。
やはり“呪われた木”自体が持つ呪いによって近づいた者全員が命を落とすのだろう。
アンケートの問題の真の意味
木はもともとは人々から良いお願いをされていた。それが、呪ってくれと言われるようになった。さらに呪われた木と呼ばれるようになってしまった。
木は、「肝試しでやってきた者を全員殺せば、また自分に良いお願いをしてくれる人ばかりになる」と考えているのかもしれない。
なぜ5人の音声が残っていたのか、最後のアンケートの意味については、同じく背筋さん著の『近畿地方のある場所について』のように呪いを拡散させる意味がありそう。
深読みすればアンケートは、もともとの意味をねじ曲げるような、木についての悪い噂の拡散者になりそうな回答をしたヤツを呪いにかけて殺すためのリトマス試験紙なのかもしれない。
考察すること=呪いの増幅装置
私も、みんなも、『口に関するアンケート』を読んでいろんな説を考察したことだろう。
思い出して欲しいのが、颯斗が話していた「木に良いお願いをする」→「悪いお願いをするようになる」→「呪いをかけさせる」→「呪いの木になる」→「呪われた木になる」という過程。
人の噂が関わることで、木の意味が少しずつ変わっていく。そして最終的に呪われた木になり、悲劇が起こる。
考察の過程も同じだ。
わざわざ「創作怪談」と書かれている理由は、「創作」が考察によって「本物の呪い」になってしまうことを表現したかったからだろう。
“口”が吐き出す言葉によって呪いが生まれる過程をテーマにした、メタなホラー小説。非常に斬新なコンセプトだ。
みんながストーリーを面白おかしく解釈して、深読みして、どんどん本質からずれて、本物の呪いが生まれる。
口に関するアンケート実写映画の考察はこちら↓

背筋著の『近畿地方のある場所について』実写映画レビューはこちら↓



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