TBSの日曜劇場『御上先生』(みかみせんせい)第7話が放送された。隣徳の裏口入学などが明らかになる一方で、非常に社会派で面白いエピソードだった。椎葉を守るための生徒たちの行動に感動。
椎葉の問題と是枝の変化、古代理事長の思惑、塚田の切り捨て計画(4つに並べられたチョコの意味)、冴島が読んでいた「オズの魔法使い」の意味を徹底考察&解説!
『御上先生』第7話あらすじネタバレ結末


『御上先生』第7話の考察:
椎葉について:格差社会とジェンダー問題が融合
第7話は特に社会問題に対する問題提起が神がかり的に鋭かった。
椎葉は、和菓子屋を営んでいた祖父が認知症になり、ここ1年で経済的な苦境に立たされていた。
椎葉が生理用品を万引きした理由は、お金で困っていること以上に自分が血を流していること(問題を抱えていること)を誰かに気づいて欲しかったから。
かつて和菓子屋では地域の女の子の初潮祝いとして赤飯を販売していた。そのため椎葉は生理を大切なものだと認識していた。しかし、祖父の認知症によって赤飯を見ることがなくなり、さらに経済的な苦境に追い込まれPMS(月経前症候群)を発症。
生理に対する周囲のサポートの象徴である赤飯が無くなった→生理に伴うPMSがひどくなったというリンクがある。生理を伴う複雑な心理描写に赤飯の要素を入れたことで問題がわかりやすくなっていた気がする。周囲の理解が大事なのだ。
貧困・格差の問題とジェンダーの問題をうまく融合させていたコンセプトが素晴らしい。
キーポイントは是枝先生。是枝先生は、御上が椎葉に生理用品を盗んだことを生徒たちに話させようとすると「女性にそんな話をさせるなんて!」と怒って止めようとした。
しかし、発言を止めることは問題にフタをすることにしかならない。
さらに是枝は「男並みに仕事ができるを褒め言葉だと思い、それを目指していた」と語った。これはジェンダーの根本的な問題としてよく語られることで、男女平等と言いながら、男性の価値観に合わせられた女性だけが評価されていく社会の現状がある。
是枝はそれを変えなくてはいけないと決意した。
日曜ドラマと思えないほど社会派。『御上先生』は同じ詩森ろばさん脚本の『新聞記者』の上位互換のような作品になっていると感じた。
裏口入学と古代理事長の思惑
御上と一色先生の会話から、隣徳学院が裏口入学・不正入学をさせているらしいと明らかになった。
古代理事長は塚田から東元官房長官の孫娘の隣徳不正入学を頼まれたが、どうしようか迷っている。スキャンダルに見舞われれば隣徳ブランドが地に落ちるからだ。
隣徳の経営状態が悪かったときに仕方なく不正入学をさせて寄付や助成金をもらった過去があるが、現在は隣徳ブランドが軌道に乗ってきたので古代は不正をなくしたいのだろう。しかし塚田や中岡がそれを許さない。
塚田と古代の会話、4つのチョコ包み
塚田は事務次官のポストにつくために、東元官房長官からの頼み=孫娘を隣徳へ不正入学させることを実現したく、古代理事長に直接電話して掛け合った。そして誰を切るべきか考えるように話した。
その際に一旦電話を置き、チョコレートかキャンディーのようなお菓子を手に取ってテーブルに4つ並べた。
- 銀色の包み=御上
- 白とピンクの包み=槙野
- 青の包み=中岡
- オレンジの包み=溝端
それぞれなぞらえ、銀色の包みのものを食べて他のものはテーブルから弾き飛ばした。
見たまま受け取れば、御上を仲間に取り込み、槙野、中岡、溝端を排除する意味に取れる。
おそらく塚田は槙野が裏で動いているのを知っているのだろう。
中岡と溝端については、不正問題が明らかになった場合に罪をなすりつけようと考えているのかもしれない。塚田と古代理事長の会話はこの本音を伝えるためのものだったと考えられる。
津吹の入院による槙野の心情
文科省で倒れた津吹(櫻井海音)。脳の血管が詰まっていて手術が必要とのことだった。
津吹は、妻・まいの出産予定日と手術日がかぶってしまったことで何のために働いているのかわからなくなったと言った。
脳の血管が詰まっているという症状は、文科省・官僚の世界が硬直しきってほとんど正常ではない状態だということの比喩だろう。
槙野は血管の詰まりについて、俺が焼肉を食わせすぎたから…と落ち込んでいた。それが直接の原因じゃなかったとしても、槙野は自分が部下の津吹をケアしてあげられないどころか、仕事をたくさん任せてしまったことに責任を感じているのだろう。
槙野はかつての同僚・高見を救えなかったことを後悔している。しかし、槙野自身が巨大な官僚のシステムの1パーツとして動いてしまっていることへの葛藤もある。槙野自身、加担もしているのだ。自分が所属するシステムから逸脱して改革できるかの問題提起が非常に興味深い。
冴島の不倫と裏口入学の関連
冴島が自分の不倫問題について真実を話さないのは、担当していた生徒が不正入学をした事実を明るみに出すことになってしまうからかもしれない。
不正入学を生徒自身が知らなければその生徒は被害者でもある。偏差値が高い隣徳の授業レベルについていけず落ちこぼれて苦しんでいる生徒がおり、冴島はその生徒が非行に走ってしまったかトラブルに巻き込まれたかで助けたのではないだろうか。
(椎葉の件と関連させると)マッチングアプリでラブホテルに誘い込まれ、被害者か加害者になりそうなところを冴島と筒井が助けたのかもしれない。
その生徒が有力者の子供だったので、神崎に不倫の暴露記事を出された際に古代理事長から口止めされたのではないか。冴島はその生徒から不正入学について聞かされたのかも。
冴島に助けられた生徒(かばわれている生徒)こそが謎の青年の可能性もある。神崎と次元が卒アルで探している人物はこの謎の青年ではないだろうか。
もしくは謎の青年は冴島の不倫相手とされる筒井の息子とか。
御上の生徒・千木明の親も政治家なので、彼女も不正入学で入ってきた可能性もある。本人はその事実を知らされてなさそう。
古代がその件を公にされたくなかったら大人しくしてろと御上を説得する展開がありそうだ。
また、弓弦が国家試験会場で殺人を犯した動機はDVを振るった父親への反抗だと考えられているが、母・冴島に世間の目を向けさせて不倫問題が虚偽だと誰かに知ってほしかった意図も少しはあるのかもしれない。それに付随して隣徳の不正入学についても明るみに出ることになりそうだ。
冴島が読んでいたオズの魔法使い
7話のラストで冴島(常盤貴子)はオズの魔法使い(英語版)を読んでいた。
読んでいたページは最終章で主人公の女の子・ドロシーが家に帰って叔母と抱き合うシーンだった。冴島はいつか娘の弓弦が帰ってきて抱き合う未来を思い描いているのだろう。
深読みすると、古代理事長=オズの魔法使い(ペテン師)とも取れる。
オズの魔法使いの本の下にはミヒャエル・エンデの児童文学「モモ」が置かれていた。みんなが時間を節約するようになって心が貧しくなっていく話なので、冴島が忙しくて娘・弓弦をケアしてあげられなかったことを悔やんでいると示唆しているのかもしれない。
『御上先生』キャスト
御上孝(みかみ たかし)|cast 松坂桃李
隣徳学院の教員↓
是枝文香(これえだ ふみか 国語教師)|cast 吉岡里帆
溝端完(みぞはた たもつ 学年主任)|cast 迫田孝也
一色真由美(いっしき まゆみ 養護教諭)|cast 臼田あさ美
文部科学省の官僚↓
槙野恭介(まきの きょうすけ/御上の同期)|cast 岡田将生
津吹隼人(つぶき はやと)|cast 櫻井海音
塚田幸村(つかだ ゆきむら)|cast 及川光博
隣徳学院 3年2組の生徒↓
神崎拓斗(かんざき たくと)|cast 奥平大兼
富永蒼(とみなが あおい)|cast 蒔田彩珠
次元賢太(つぎもと けんた)|cast 窪塚愛流
椎葉春乃(しいば はるの)|cast 吉柳咲良
宮澤涼(みやざわ りょう)|cast 豊田裕大
2025年の日本ドラマ考察レビュー関連記事↓


コメント