是枝裕和監督の短編映画『ラストシーン』(last scene)を鑑賞。
全編がiPhone 16 Proで撮影されているというから驚き。ジャンルはSF恋愛コメディで、仲野太賀と福地桃⼦が未来を変えるために奮闘する。
- あらすじと本編動画
- ネタバレ解説
- 忖度なしの正直な感想
これらをまとめました。
映画『ラストシーン』あらすじ
脚本家の倉⽥(仲野太賀)は、担当しているドラマ『もう恋なんてしない』の最終話を書き終えた。倉田はファミレスでプロデューサーの山瀬(黒田大輔)と視聴率がガクッと下がらないか心配で話し合っていた。
山瀬が店を出た後に、倉田の席に由⽐(福地桃⼦)という女性がやってくる。何でも由⽐は50年後の未来からやってきたらしい。由⽐は倉田の孫だという。
倉田は今後このドラマの主演女優・琴乃と結婚することになるようだ。
しかし倉田は自分が書いた脚本のせいで『もう恋なんてしない』は0.3%という最悪の視聴率を叩き出し、もう脚本を書けなくなったらしい。
それだけでなく琴乃も低視聴率女王と呼ばれて引退。さらに最終回をきっかけにドラマというフォーマット自体が衰退して消滅してしまったようだ。
倉田と由⽐は未来のドラマを救うために最終回の脚本を変えようとする。
映画『ラストシーン』全編の動画
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映画『ラストシーン』ネタバレ結末解説
倉⽥(仲野太賀)と由⽐(福地桃⼦)は最終回を撮影中の由比ヶ浜へ向かう。由⽐は50年後の世界で女優を志していたが、祖母の琴乃が低視聴率女王のために誰も起用してくれないと話す。
倉田と由⽐は最終回を撮影中の由比ヶ浜に到着し、脚本のいくつかを直す。
それから観覧車へ行き、ラストシーンの脚本を「やり直さなくてもいい、後悔したっていい」という趣旨に変えた。ドラマの最終回で視聴率がしっかり取れれば、由⽐は未来で存在しないこともわかっていた。それでも2人はドラマの未来を救いたかった。由⽐は観覧車の中で未来へと消える。
50年後:麗奈は友達と観覧車に乗った。外から麗奈を見つめる老人・倉田を見て懐かしい感情が込み上げてくる。
映画『ラストシーン』考察
倉田と由⽐が脚本を書き直して未来が変わった結果、倉田は琴乃と結婚せずに由⽐も生まれていない。しかし由⽐と瓜二つの麗奈が50年後の未来にいた。
麗奈は観覧車の上から、倉田は観覧車の外からお互いに見つめ合う。麗奈はもちろん倉田のことは知らないだろうが、おそらくあの日の由⽐と同じ観覧車に乗っていたために、倉田のことを他人とは思えない超常的な力が働いていたのだろう。
由⽐という名前は由比ヶ浜から取られたという設定も粋だった。
例え最低な視聴率を記録した作品だったとしても祖母・琴乃にとっては倉田の作品を撮影した場所として最高の思い出だった。だからこそ、由比と名付けたのだろう(多分 祖母の琴乃が付けたんだよね?)。
映画『ラストシーン』感想と評価
会話劇としては面白かった。特に「頑張ったから後悔が残る」というセリフが胸に刺さった。
いっぽうでストーリーはけっこう雑。正直いってあくまでiPhone 16 Proの宣伝用といった印象を受けた。脚本などを練る時間はあまりなかったのかもしれない。同時に短編なので情報が少なくて余白が大きすぎるところも大きい。
倉田は孫の由⽐に多少の恋愛感情を抱いているであろうこと。加えて二人の関係は恋愛を超えたところにもあり、倉田は老人になっても観覧車に乗り、その思い出を消したくなかったこともわかる。
かなり繊細で複雑な感情が行き来していたとことは頭ではわかるが、見ていて感情が乗らなかった。
映像は仲野太賀と福地桃⼦が夕陽をバックに観覧車で最後の会話をするシーンは素敵だった。
しかしそれ以外の場面は、iPhone 16 Proで撮影しているんだ…と割り切ってみないと物足りない感がある。
映像自体はスマホで撮ったと思えないほど綺麗なんだけど、会話のシーンで仲野太賀を映して、それから福地桃⼦を映して、みたいなカット割がちょっと多くて臨場感が削がれた。
iPhoneだとパンなどが上手く行かないのだろうか?
リリー・フランキー演じる観覧車のスタッフ・まるおかが、観覧車から倉田だけ出てきたのを見てオロオロするシーンは良かった。
設定も気になった。一番気になったのはWikiが50年後にもある設定。Wikiがあるってことはまだみんな今と同じようなパソコンやスマホ、Google検索とか使っているってこと?未来感ゼロでは。
また50年後にはパンケーキをホットケーキと呼ぶなど、昭和のリバイバル的な世界観になっている設定も個人的には気になる。由⽐がファッションもカメラも昭和レトロ。昭和を残したいのかな?
是枝監督はNetflix『阿修羅のごとく』で昭和の同名ドラマをリメイクしていたが、古き良き昭和にノスタルジーを感じているのかもしれない。
ちなみに本作のドキュメンタリーを見ると是枝監督は編集もMacでやっているようだった。日本におけるAppleの広告塔になっている。
まとめると『ラストシーン』では是枝裕和らしい会話劇やテーマ性は垣間見えた。いっぽうで宣伝用作品だから当然かもしれないが物足りない感も残った。やはり長編がみたい。
是枝裕和作品のレビュー↓




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