新木優子がアンドロイドの妻に!?
Amazon Prime Videoの映画『不都合な記憶』(Previously Saved Version)を鑑賞してみた。『愚行録』や『ある男』の石川慶が監督を務める。あらすじと正直な感想を語っていく。
映画『不都合な記憶』あらすじ(ネタバレ少し)
スペースコロニーでマユミ(新木優子)が陶芸をしている。マユミは記憶の大部分を失っていた。
夫のナオキ(伊藤英明)がその理由を説明をする。4年前の大規模な津波でマユミは意識不明の状態になり、その後になんとか目覚めたが記憶がなくなっていたらしい。地球には住める部分が少なくなり、富裕層はほとんど宇宙で暮らしているようだ。ナオキは宇宙開発の第一人者で、世界的に有名な人物だった。
マユミはAIロボットのKYUUと一緒にコロニーでナオキの得意料理を作る。しかしベッドではナオキに拒否されてしまい、不思議に思った。
マユミはドビッシューの月の光のレコードをかけた。それを聞いたナオキは、「お前のバージョンにその記憶はダウンロードされていないはずだ!」と言ってナイフでマユミの首を刺した。白い液体があふれ出す。マユミの機能が停止する。
彼女は死んだ本物のマユミの代わりに作られたアンドロイドだったのだ…。
↓ストーリーのラスト結末までの解説&テーマの考察はこちら↓
ネタバレ感想:薄めのフェミニズムSF
あまり人様が作った作品に文句は言いたくないが、本作は多少は批判されても仕方ないクオリティ…特にストーリーに問題があった。
ひとことでいうと、間延びしたフェミニズムSF。サイコサスペンスロマンスという触れ込みだが、サイコもサスペンスもロマンスも、いずれの要素も薄っぺらい。
夫・ナオキがマユミのアンドロイドを何度も作っては破壊していた理由は→そのアンドロイドが、生前のマユミがナオキのDVを苦に他の女性と不倫した事実を思い出してしまうから…。このオチもそこまで面白くない。
終盤で新木優子のアンドロイドが10体くらい登場する以外に想像を超えてくる部分がなかった。
また、男のDV性質と女性の連帯を対比させたフェミニズムのテーマも少し安易に見えた。そもそもナオキのようなすぐにブチ切れて暴れる粘着DV男が世界有数の科学者という設定にあまり説得力がない。
2200年前後の設定だが、新木優子がいるスペースコロニー以外の舞台がほぼ出てこずSF映画としての世界観が見えてこないため没入感も少なめ。
また宣伝の時点でマユミがアンドロイドだとネタバラシしなくても良かった気がする。(その情報が伏せられていたとしてもそこまで面白くない作品だったことには変わりないかもしれないが)。
石川慶監督の作品は『ある男』はすごく好きだけど、『Arcアーク』はかなり微妙だった。本作は『Arcアーク』寄り。
『Arcアーク』でも死んだ人間をそのまま保存する技術が登場する。石川慶監督は死んだ人間をそのまま保存することに執着する癖があるのだろう。その癖をもっと上手く昇華できるはずだが、本作では表面的に見えてしまったのが残念だった。
『不都合な記憶』は考察しがいのある作品ではあったので、次のページではアンドロイドに記憶が戻った理由や、フラッシュバックでの血が赤い理由について考察&解説していく↓↓
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