黒沢清監督×菅田将暉の映画『Cloud クラウド』を鑑賞。物語自体が時間が経過するにつれて抽象的になっていく雲のような映画。
ストーリーのラスト結末まであらすじ解説。ラーテルやラストシーンの意味、佐野が吉井を助けた理由を徹底考察していく!
『Cloud クラウド』ネタバレ・ラスト結末の解説
吉井は潰れた町工場を経営していた殿山からマイナスイオン医療機器を売値の数十分の一で買い取り、1台20万円で売って600万円ほどボロ儲けした。
しかしアパートの階段にはネズミの死骸が…。
吉井は転売を教えてくれた先輩・村岡を見下すようになっていた。村岡からオークションサイトを立ち上げるから出資してくれといわれるが冷たく断った。
吉井は務めているクリーニング工場の社長・滝本から、おまえに期待しているから管理職になってくれ!と懇願される。しかし吉井は断り、滝本の話も聞かずに会社を辞めた。
ある日の夜、吉井は窓の外に滝本がいるのを見た。滝本の表情が怖かったので居留守を使った。
吉井は東京のアパートに住んでいたが恋人の明子と一緒に群馬の田舎にある湖のほとりに引っ越す。吉井はそこでも転売の仕事を続けるが、秋子にまったくかまわなくなっていった。
吉井は引っ越しの仕事をしていた佐野をアシスタントとして雇うことにする。
ある夜、秋子と寝ていると何者かが外から車の部品を投げ入れ、窓ガラスを割られる。
吉井は翌日警察に相談しに行くが、偽物のバッグを売り捌いてるって噂があるけど?と逆に質問される。
佐野が窓ガラスを割った犯人を捕まえる。佐野の後輩だった。その人物は吉井の成功が妬ましくてやったと白状して逃げる。
しかしその後も、周囲を謎の車がうろつくなど不審な出来事が続いた。
さらに転売商品が売れなくなり、吉井は焦っていく。
吉井は荷物の出荷のために東京へ行くと、村岡と遭遇。雇ってあげてもいいと見下して話た。
いっぽう、ハンドルネーム・ラーテル(吉井)が売った偽物のブランドバッグを購入して横流しした三宅は、買った人物から「全部偽物じゃねーかよコラ!」と言われてボコボコにされる。
三宅はハンドルネーム・ラーテルのアンチコメントから恨みを持つ匿名掲示板に行きつき、彼らがラーテルへの復讐と殺害計画を立てていると知る。三宅はその仲間に加わることにした。
ある日、吉井が転売用の人形を東京で買ってから群馬の自宅に戻ると、秋子がいなくなっていた。さらに吉井は佐野が勝手にパソコンを触ったことに気づいた。佐野は転売について勉強し、アシスタントとしてサポートしたかったと語るが、吉井は手切金を渡して彼を解雇した。
その後、吉井の自宅に滝本、三宅、殿山(医療器具を買い叩かれた人)がやってきて吉井を拉致しようとする。滝本は猟銃をぶっ放した。吉井は森の中へ逃げ、猟友会の建物へ。しかし滝本たちに取り囲まれた。
滝本は騒ぎを聞きつけてやってきた猟師を殺害。吉井はその隙に家へ逃げ帰ると秋子が戻っていた。秋子はクレジットカードのことをしきりに気にしていた。商品の人形は無事でホッとする。しかしパソコンなどは壊されている。
家に村岡がやってきた。村岡も吉井に復讐したいメンバーだった。見下されたのが気に入らなかったという。村岡は銃を向ける。他のメンバーもやってきて吉井は薬品を嗅がされて拉致される…。
映画『Cloud クラウド』感想
前半は吉井(菅田将暉)が転売する様子を描くサスペンスなのだが、バスで後ろから吉井のスマホをのぞく人物の影があるなど、ところどころが不穏で緊張感が途切れないから不思議。
人の歩み寄りと善意を無視する吉井。そのブーメランとして跳ね返ってくる悪意をコンセプチュアルに描いていたが、すごく面白いかと言われると素直に首を縦に振れない(笑)。
雲にまかれてドライブするラストシーンは『クリーピー 偽りの隣人』のようだった。個人的にはそちらのほうが好みだった。
考察:ラーテルの意味は?
ラーテルはイタチ科の哺乳類のことだ。動物や木の実を食べる雑食だが、蜂の巣を襲ってハチミツを食べることでも知られている。
転売屋の吉井のハンドルネームがラーテルなのは、転売屋が甘い蜜だけを吸うような存在という意味もあるのだろう。さらにラーテルは獲物を横取りする。商品を買い占めて消費者に届けない転売屋と重なる。
ラストシーンの意図
本作は人間関係が雲のように軽くなっていく様子を段階的に描いていると感じた。
銃撃戦を終えて吉井が最初にすることは商品が売れているかをスマホでチェック。恋人の安否は気にしない。
ネットの希薄な人間関係が現実にも影響を及ぼしていると諭すような映画だった。そして佐野については悪意や善意を超越した不可思議な存在として描かれていたのが本当に恐ろしかった。
次のページではなぜバイトの佐野が吉井を助けたのか!?について徹底考察&解説していく↓↓