映画『ファーストキス 1ST KISS』を鑑賞。坂元裕二脚本×塚原あゆ子監督の超話題作!
涙なしには見られない最高のタイムスリップ夫婦ラブストーリーでした!
あらすじ、ネタバレなしの感想、「ラスト結末のネタバレ解説」「タイムトラベルやミルフィーユ理論についての考察」「視聴後のネタバレ感想 良い点・ダメな点、細かい点」をまとめました!
映画『ファーストキス 1ST KISS』あらすじ・作品情報
公開日:2025年2月7日(金)
上映時間:124分
監督|塚原あゆ子(『ラストマイル』『映画 グランメゾン★パリ』『海に眠るダイヤモンド』)
脚本|坂元裕二(『東京ラブストーリー』『花束みたいな恋をした』『怪物』)
あらすじ:2024年。硯カンナ(松たか子)の夫・駈(かける|松村北斗)は線路に落ちたベビーカーを引き上げて赤ちゃんを助けたが、駈自身は電車に轢かれて死亡。
夫の死後に1人きりになったカンナだったが、ある夜に車で三宅坂のトンネルに入ると15年前の2009年にタイムスリップ。そして思い出の場所でまだ29歳の夫・駈と出会った。若い駈が「初めまして…」と言ってくる。
カンナは駈が死なない世界線を作ろうと何度もタイムスリップし、駈の未来を変えようとするが…。
キャスト↓
硯カンナ|cast 松たか子(『スロウトレイン』)
硯駈|cast 松村北斗(『すずめの戸締まり』『夜明けのすべて』『ホリック xxxHOLiC』)
天馬里津|cast 吉岡里帆
世木杏里|cast 森七菜
天馬市郎|cast リリー・フランキー(『クジャクのダンス、誰が見た?』)
ドラマ制作スタッフ|cast YOU
配達員|cast 竹原ピストル
ホテルの社員|cast 神野三鈴
![](https://music.jpn.com/wp-content/uploads/2025/01/スクリーンショット-2025-01-03-1.20.32-160x90.jpg)
ちょこっと感想(ネタバレなし)
カンヌで脚本賞を受賞した『怪物』の坂元裕二脚本と『ラストマイル』の塚原あゆ子監督がどんな作品になるかと期待していたら、期待を軽々と超えてきた号泣の傑作。
タイムスリップモノとしては比較的シンプルだが、従来の作品のように未来改変の結果にフォーカスしているのではなく、人生という過程に強い焦点を当てているのがすごい!
そして夫婦の純愛ラブストーリーとしてめちゃくちゃ泣けた。すべてを知った時に2人が何を選択するのか?そこに大きな感動が詰まっている。
泣けるだけじゃなくて夫婦のリアルや人生とは何かをしっかり描いていて、自分の実生活と照らし合わせて家族を大切にしようと思えた。全日本人に劇場で見てほしい!
映画『ファーストキス 1ST KISS』ネタバレ・ラスト結末解説
45歳の硯カンナ(松たか子)は、死亡した夫・駈(かける|松村北斗)との15年間の結婚生活を回想する。恋愛結婚して最初は楽しかった。しかし、化石が大好きで古生物学者を目指していた駈は、生活できないからと不動産会社に転職。2人は徐々にすれ違い、寝室も生活空間も別々の家庭内別居に陥っていた。駈が死亡した日、彼は離婚届を市役所に提出する予定だった。
現在。舞台美術の仕事をしていたカンナは夜に呼び出されて車で現場へ向かう。その途中で三宅坂トンネルを通ると落盤が起きてパニックに…トンネルを抜けると自然が豊かな場所にいた。小学生くらいの少女がチェキでカンナの写真を撮る。カンナはその場でプリントされた写真を奪い取った。
カンナは近くにある星ヶ丘リゾートホテルへ歩いて行く。そして思い出した。ここは15年前に29歳の駈と初めて会った場所だった。カンナはホテルの30周年イベントの美術担当として、駈は古生物学の教授・天馬市郎(リリー・フランキー)の発表を手伝う研究員として来ていたはずだ。
カンナはホテルの庭でたくさんの犬たちに囲まれる。犬嫌いだったカンナは苦しみもだえた。すると若い駈がやってきて助けてくれた。カンナがかき氷のTシャツを着ているのを見て、駈は近くに美味しいかき氷のお店があると言う。2人は一緒に行列に並び、楽しく会話をした。
夜になり、30歳のカンナがホテルへ到着。近くにいたカンナ(45歳)は苦しみもだえる。過去と現在に同じ人間が同じ場所にいられないようだ。つまり夜8時ごろまでしかホテルにいられない。
カンナは車でトンネルを走ると元の2024年に戻っていた。
カンナは、駈が生存できるように過去を改変しよう!と思い立つ。駈が死んだ日の行動をあらためさせるために、2009年8月1日(この日にしか来れない。滞在時間は8時間がリミット)に何度もタイムバックして、コロッケ屋や本屋へ行く15年後の事故当日の行動を回避させようとする。
しかし、2024年での駈の死の事実を変えることはできなかった。
過去の駈に「線路に降りるのでなく非常停止ボタンを押せばいい」と教えたが、2024年に戻ってみると、ボタンを押すタイミングが悪く、何十人も死ぬ大事故になっていた。さすがにこれではダメだ。
カンナは「過去の駈が自分と結婚しなければいい」と思い立った。カンナは2009年のホテルで天馬教授の娘・里津(吉岡里帆)に接近。里津は駈のことが好きなようだ。カンナは彼女にどうやったら駈を落とせるか教えた。
しかし駈はそれでも2009年にきた45歳のカンナをすぐに好きになってしまう。カンナは「あなたに興味がない」と強い言葉で駈をふった。
しかしカンナは駆がいない人生が耐えられず、また2009年に戻ってきてしまう。
カンナが落としたメモ付箋をかき氷屋で見た駈は、自分が2024年の7月10日に死亡すると知ってしまう。カンナは「自分が未来からきた」と話す。駈はカンナが自分の妻になると勘づいた。
カンナは「私と一緒になったらあなたは死ぬ」と言う。駈は「15年待てば今のあなたに会えるなら、僕は死ぬとしても同じ選択をする」と答えた。
カンナは2人が離婚しようとしていたことも話す。
駈は「精一杯努力する」と言った。2人はキスをする駈にとってはファーストキスだった。カンナは元の時代に戻る。
その後、2009年の駈は若いカンナと出会って結婚。15年間夫婦で幸せに暮らし、15年後の2024年に赤ちゃんを助けて電車に轢かれて死亡した。
カンナは駈が残した手紙を読み、自分が夫を救うために何度もタイムスリップしていたと知った。タイムスリップするたびに少女が撮っていたたくさんの写真も手紙に同封されていた。
映画『ファーストキス 1ST KISS』終わり
映画『ファーストキス 1ST KISS』考察まとめ
結果でなく過程にフォーカスしたタイムトラベル物語
タイムスリップモノながら、結果を変えるのではなくて過程を変えることにフォーカスしたコンセプトが斬新で、そこに深い感動があった。
『バックトゥザフューチャー』だったら未来が変わってめでたしめでたし(主人公のマーティーの成長譚でもあるけど)!のところを、『ファーストキス 1ST KISS』の場合は未来や結末は変えられないけど、そこへ歩んでいく過程は変えられるとシフトチェンジしていた。
切ないタイムスリップ恋愛映画という意味では『バタフライエフェクト』に通底する部分があった。特に、過去で駈に停止ボタンの存在を教えて未来に戻ったら何十人も死亡する大事故になっている点が似ている。本作は映画『バタフライエフェクト』へのアンサーソングとも言えるだろう。
補足だが、カンナが2009年にタイムスリップしてくるたびに写真を撮る少女と少年は神出鬼没で超常的な存在に見えた。彼らがタイムスリップを司っているのだろう。
ミルフィーユと古生物学:全ての時間が同時に存在
時間については、カンナの同僚の世木杏里(森七菜)が過去・現在・未来がミルフィーユみたいに同時に存在していると語っていた。
これはよく言われている理論で、時間は流れているのではなく過去・現在・未来が同じ時空に存在するという内容(ブロック宇宙論やそこから派生したスポットライト理論からの引用だと思われる)。
劇中にならってミルフィーユ理論としておこう。
駆が16歳年上の45歳のカンナを出会って数十分ですぐに好きになることに違和感を抱いた方もいるかもしれないが、これもミルフィーユ理論で説明ができる。
つまり45歳のカンナを見た駆は、ひとめ見ただけで2人で過ごした全ての時間を感じ取ったということ(すべての時間が同時に存在するなら)。
駆は自分がカンナを愛する未来を感じ取った。すでに好きだった…とも言い換えられる。
駆が古生物学者という設定も生きてくる。45歳のカンナを化石になぞらえるのは怒られる表現かもしれないが、駆が45歳のカンナに2人で過ごした時間の積み重ねを見てとったことは確かだろう。
時間がミルフィーユのように積み重なって存在しているように、45歳のカンナも30歳のカンナも全体の一部でしかない。年齢関係なくカンナという存在に駆をぞっこんにさせる設定が実はすごくロマンチックだった。
トロッコ問題など
線路に落ちた見知らぬ赤ちゃんを助けて家族を悲しませるのか?というのがトロッコ問題のようだったが、例え未来で死ぬと分かっていても同じ人と一緒にいたいという過程を変える決意に昇華されていたコンセプトが美しい。
選択をしてどんな悲劇が起こったとしても2人で過ごした時間は無くならない。
そして、何も考えずに赤ちゃんを助けに線路に降りた駆だからこそ15年の幸せな時間を作れた。
トロッコ問題にひとつの答えを提示したと思う。その場の選択と結果ではなく、大事なのはこれまでの歩みなのだ。
また、カンナは犬嫌い、駈は野球が好きじゃないなどの細かい設定も良かった。みんな同じものを好きになる必要はないし、好みが違うからこそ、柿の種とピーナッツをそれぞれで分け合えるのだと思った。
映画『ファーストキス 1ST KISS』感想と評価
良かった点:斬新さと感動の融合
たとえ死ぬとしても一緒に過ごしたい!そんな究極のテーマが込められた超感動の作品。
家庭内別居状態の夫婦が、タイムスリップで年の差恋愛をしてお互いの気持ちを再確認して15年間の夫婦生活を幸せにやり直すストーリーは涙なしには見れなかった。
セリフも刺さるものが多いし、笑えるシーンもたくさん。
15年後のきみに会えるなら同じ道を選ぶ…という駈のセリフに心を揺さぶられた。そのセリフは、15年間ずっと幸せにすると同義ではないか(一緒にパン屋をやろう!がプロポーズなのと同じように)。
恋人同士、夫婦、家族でもなんでもそうだけど、お互い大切に思っているはずなのにボタンの掛け違えが起こる。でも、駆がそうしたように今がやり直した世界線だと思えば歩み寄れるかもしれない。
映画『ファーストキス 1st KISS』を鑑賞して、相手を思いやって生きて行きたいと感じた。
坂元裕二さんによる公式シナリオも読んでみようと思う。
坂元裕二作品としては、ネットフリックスで公開されたラブコメ映画『クレイジークルーズ』みたいな空気感が強かったが、その作品のように笑いだけで終わることがなかった。感動があるからこそ笑える。笑えるからこそ感動できることを再確認させてくれた素晴らしい映画。
塚原あゆ子作品としても1番好き。最近だと野木亜紀子さんとタッグをくんだ『ラストマイル』や『海に眠るダイヤモンド』も良かったけど、本作はそれ以上にストレートに心をえぐってきた。
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ダメな点
ダメな点はほぼないけど、強いていえば教授の娘・里津(吉岡里帆)が駈を好きになった理由がよくわからなかったのでモヤっとした。
タイムスリップの設定に関してはご都合主義といえばそうだけど、タイムスリップの原理を追求するような作品ではないのでそこも全然許容できる。
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