映画『スーパーマン』(Superman)2025年7月11日公開を鑑賞!
ジェームズ・ガン節に溢れた新生スーパーマンが誕生。
- ネタバレなしの感想
- ネタバレ・ラスト結末・エンドロール解説
- 徹底考察:父と子の物語、ヴィラン・レックスの行動原理、ロシアの侵攻
- 良い点・悪い点の感想と評価
これらの情報を忖度なしでぶっちゃけます。
映画『スーパーマン』2025 あらすじ
DCU(DCユニバース)の第1作目となる本作。
元のタイトルは『スーパーマン・レガシー/Superman: Legacy』だったが、シンプルな『スーパーマン』に変更された。
ジェームズ・ガン監督は「俺がスーパーマンの歴史を作り変えてやる!」とか考えていそう。
ネタバレなし感想
2025年にぴったりの最高のスーパーマン。ジェームズ・ガン節も存分にありつつ、スーパーヒーローとしての葛藤、臨場感のあるアクションが120%堪能できる傑作。
私はどちらかというとバットマンやジョーカー大好き人間でスーパーマンはそこまで…だったのだけれど、今作でスーパーマンのファンになった。哀愁が素晴らしい。チーム戦のカタルシスもある。
スーパーマンやDCコミックス映画を見たことがない初心者でも十二分に楽しめる親切設計。
運命とは何か?という普遍的な問いかけ、ロシアによるウクライナ侵攻のテーマ、人間の知能を超えた反AI的なテーマもあり、ストーリー性も深い。
DCユニバース成功の兆しが見えたか!?
映画『スーパーマン』2025 ネタバレ・ラスト結末
スーパーマンは侵略者?敗れて炎上する
©︎ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
スーパーマンはボリビアからの敵・ウルトラマン(ハンマー)に敗れてしまう。
愛犬・クリプトが助けてくれた。スーパーマンは秘密基地・氷の要塞でヒューマノイド4号たちに助けられてなんとか回復。
世間は「スーパーマンがボラビアの侵攻を止めたのは国際法違反だ」という声が上がっていた。
レックスは要塞の存在を知り、忍び込んでスーパーマンの両親からのメッセージを修復して世間に流す。修復された両親からのメッセージは「惑星クリプトンの最後の1人として、地球を支配してハーレムを作って子孫を残せ」というものだった。
アメリカや世界中の人々がスーパーマンの正体は侵略者だと考え始める。
スーパーマンは、レックスの部下・エンジニアに連れ去られた犬のクリプトを助けるため、レックスの会社に殴り込む。
しかしそこに犬はおらず、スーパーマンに逮捕令状が出てしまう。スーパーマンは仕方なく出頭。
米国政府からスーパーマンに関する監視の外部委託をされていたレックスはスーパーマンはポケットユニバース(レックスが次元に開けた空間)に幽閉する。
エレメントマン(メタモルフォ)がクリプトナイトを生成し、スーパーマンは毒されて動けなくなる。
スーパーマンはエレメントマンに「囚われているお前の息子を助ける」と約束。
エレメントマンは太陽エネルギーを作り、スーパーマンは回復。
スーパーマンは敵を倒して赤ちゃんを助け、クリプトも助ける。そしてポケットユニバースの入り口まで来ていたロイスとミスター・テリフィックに助けられる。
ラスト結末:クローンとの対決
ロイスはスーパーマンを連れて彼の実家へ。
翌朝目覚めたスーパーマン。ボラビアの大統領が再びジャルハンプルに侵攻を開始していた。
さらにレックスの操作でポケットユニバースが拡張し、地域に巨大なクレバスが広がっていた。
ボラビアにはグリーンランタンやホークガール、エレメントマンらジャスティスギャングが向かう。グリーンランタンがボラビアの軍隊を壊滅させ、ホークガールがレックスと裏で繋がっている大統領を殺した。
スーパーマンはウルトラマンと戦う。ウルトラマンの正体はスーパーマンのクローンだった。さらにレックスが攻撃パターンを命令していたため強かったのだ。
クリプトが周囲のAIドローンを破壊してレックスの干渉を妨げ、スーパーマンがなんとかウルトラマンに勝利。
ロイスらデイリー・プラネット新聞社のメンバーは、レックスがボラビア国大統領と裏取引していた情報を記事にしてメディアに流す。
ミスター・テリフィックがレックス社でコードを書き換え、ポケットユニバースの避け目をふさいだ。
クリプトがレックスをボコボコにし、レックスは逮捕される。
スーパーガールがスーパーマンの孤独の要塞にやってきた。
エンドロール後
スーパーマンは別の星でクリプトと一緒に地球を眺めていた。
スーパーマンはミスター・テリフィックにポケットユニバースの塞ぎ目がずれていると言って彼を怒らせた。
『スーパーマン 2025』考察(ネタバレ)
ジェームズ・ガンによる父と子の物語
ジェームズ・ガンはガーディアンズオブギャラクシーシリーズや、ドラマ『ピースメイカー』シリーズで一貫して父と子の物語を描いてきた。
もっと具体的に言えば、毒親・毒父による子供への影響を描いてきたが、そのテーマが本作でも踏襲されていた。

本作ではブラッドリー・クーパーがスーパーマンの実の父親ジョー・エルを演じていて残されたメッセージ映像のみの出演だった。
ジョー・エルは「地球の人たちを守れ!ではなく、クリプトン星の生き残りとして地球を支配してたくさんの子孫を残せ」というメッセージを残している。地球人を単純と言っており、明らかな優生思想(能力の優れた人間だけが残ればいい)を持っている。
最初はフェイク音源かと思ったが、レックスは「あれはフェイクではない」と言っていたし、スーパーマン自身も偽物とは一切言ってなかったので、おそらくメッセージは本物なのだろう。
そしてスーパーマンのクローンであるウルトラマンは、悪い父親(ジョー・エルやレックス)に洗脳されてしまったかもしれないスーパーマン自身の写し鏡に見えた。
最後はスーパーマンは地球の父と母の映像に囲まれて体を休めていた。本物の父親が運命を決めようとも、実際にスーパーマンが地球で誰と会い、何を感じ、どう行動したいのか?後天的な要素の方が大切だという救いに満ちた結末だったと思う。
ガーディアンズオブギャラクシー2でも、主人公ピーター・クイルは全てを支配しようとする父より仲間を選んでいる。父親からの呪縛を乗り越えるには、最高の仲間が必要。ベタだけど真理をついたジェームズ・ガンからのメッセージが感じられた。
レックスの行動原理が深い?
スーパーマンのせいで天才の自分が目立てないと妬んでいるレックスだが、彼の行動原理も非常に深く本質をついたものだったと感じた。
スーパーマンは異星人であり、人類を超えた超人。レックスがスーパーマンを憎むのは、人類が自分たちで未来を選択できない漠然とした恐怖からくるものだと考える。
スーパーマンの能力値が高すぎて、すべての命運がスーパーマンにかかっている。レックスがいくらすごい発明をしようとも、スーパーマンの腕力ですべて解決する。果たして人類やレックスの存在意義はあるのか?
レックスの妬みや憎しみは人類の存在意義を代表するものだった。
最近だと生成AIの進化が目覚ましく、汎用人工知能が数年内に誕生したら人類の意義あるの?問題があちこちで語られている。
そういった存在意義の喪失に関わる恐怖がレックスの妬みの根幹にあったと考える。
先ほどの優生思想の問題ともリンクする。スーパーマンや超人の遺伝子が広がれば、その遺伝子を持たない普通の人々は能力が低すぎて弱者として虐げられるかもしれない。
(自分の周囲の人間たちが自分よりも頭がよく、体格も見た目も良く、優しくて性格もいいやつ…どんな事で競っても勝てない奴ばかりだったら生きるのは地獄である)
レックスのやり方はともかく、意見としては敵ながら確信を突いていると思った。
スーパーマンもスーパーマンで、「支配しろ」というクリプトン星のやり方に疑問を感じ、アイデンティティを喪失しかけている。
スーパーマン2025はアイデンティティを巡る戦いだった。
スーパーマンはパワー型でレックスは頭脳派。思想から何から何まで対極だ。
レックスは憎いスーパーマンを印象操作で排除し、他国にIT大国を作ろうとし、ポケットユニバースが裂け始めても「自分の街じゃないから」と言い放つ人でなしで、世界を変える力を持っている。
いっぽうでスーパーマンも世界を変える力を持っており、危うい。2人は写し鏡のような存在同士だった。
ロシアのウクライナ侵攻を反映
ボラビアによるジャルハンプル国への侵攻はロシアのウクライナ侵攻を投影したものだろう。
ロシアのウクライナ侵攻は2022年の2月。ジェームズ・ガンらが本作の制作を開始した時期も2022年8月頃からで、世界中でロシアへの非難が巻き起こっていた時期と重なる。
他国に干渉するスーパーマンはウクライナに介入するアメリカのメタファーである。
序盤でロイスがスーパーマンにインタビューして大喧嘩になったように、他国への軍事介入については議論で答えが出る問題ではない。
映画内に限って言えばスーパーマンの行動は正しかった(明らかにボラビア大統領とレックスが悪のため)。
しかし武力介入のポジティブな側面だけでなく圧倒的な武力で他国に介入することに議論が巻き起こる構造もしっかり提示されていた。
企業のスポンサーがついているグリーンランタンは「政治問題に介入しない」と言いつつ、最後は侵攻されていたジャルハンプルの国民たちを助けた。
スーパーマンも別に米国を代表して他国に介入しているわけではない。1人の人間として罪もない人々が殺される戦争を止めたかっただけである。
国や企業を超えた人々の信念に一縷の希望が残されているメッセージが垣間見えた。
逆にいうと国や企業が介入して利害関係が発生してしまうと、現実で起こっている「アメリカはロシアは非難するけどイスラエルは非難しない」みたいな論争から先へから進まない。それについての問題提起も暗になされていると感じた。
映画『スーパーマン』2025/感想と評価
良かった点:パンクロックとの融合!
シリアスな展開の最中に、スーパーマンがクリプトにかじられるなどジェームズ・ガンらしいオフビートな演出があり抜群のバランス感覚だった。
スーパーマンが瀕死の状態で北極で倒れているところから物語がスタートする。シリアスさ全開の冒頭からいきなりクリプトが突っ込んでくるのが笑える。
物語は、他国への武力介入の是非、自分の存在意義など非常にシリアスなのに、ところどころで張り詰めていた空気がプシュッと抜ける。
善悪の概念のない犬のクリプトがレックスをボコボコにする善側の行動を取るところにある種の哲学が感じられる。
劇中歌のセンスもいつも通り抜群で、アクションシーンに拳を握りしめながらも肩の力が抜ける。このテイストはジェームズ・ガン監督ならではだろう。
ロイスはパンクロックが好きで、ケントもマイティ・クラフト・ジョイの大ファンというパンクロック愛に溢れていたのも特徴。
「全人類を疑わずに愛するのが真のパンクだ!」というスーパーマンの意表をついたセリフに泣けた。
パンク=おバカなという意味で、パンクロックは感情をストレートに表現するもの→パンクが持つストレートさや愚直さと、スーパーマンが持つ人類愛に通底するものがあるとは!このセリフは深いし斬新。
パンクロックのエネルギーに満ち溢れていているスーパーマン。このちょっとした外しにより、印象がぜんぜん違うものとなり、スーパーマンがより人間的に映っていた。
真面目でどこか抜けているだけじゃない新時代のスーパーマン像だ。
残念なところ、DCUは大丈夫なのか?
正直、スーパーマン2025は予想を超えてきた。2時間以上あったがテンポもよく中弛みもゼロ。悪い部分はない。
スーパーマンの原作とか過去作を好きな人は本作のジョー・エルのメッセージ(スーパーマンに地球を支配させようとしていた)をどう思うかはわからないが、個人的にはストーリー性を深める設定だったと思う。
あとはこのままDCUが上手くいくのかが心配。
ミリー・オールコック主演で映画『スーパーガール』が決定している。ミリー・オールコックは『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が記憶に新しい。本作でも最後に登場し、破天荒なコメディアンヌっぽい感じだった。DCUはこのオフビート路線でいくのだろう。
問題はDCで人気ナンバーワンの『バットマン』と今後どうシンクロさせるかである。
映画『バットマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生』みたいな消化不良な感じにならないか心配。
ジャスティスリーグは映像は凄かったけどストーリーはイマイチで世間の評価も割れている。
そもそもスーパーマンとバットマンの能力値が違いすぎるので、ユニバース自体に無理があると思う。
まとめるとスーパーマン2025は、テーマ性、アクション、雰囲気すべてが最高の傑作ヒーロー映画だった。
2025年公開の映画レビュー↓


コメント