映画『湖の女たち』を鑑賞。湖近くの介護殺人がテーマのサスペンスかと思いきや、登場人物が全員が微妙に壊れている濃厚なヒューマンドラマで、意味不明と見せかけて深いメッセージのある作品だった。
映画『湖の女たち』あらすじ
老人ホーム・もみじ園で働く豊田佳代(松本まりか)は夜勤明けの朝方に西湖に車を止めて自○行為をする。釣りに来ていたを西湖署の刑事・濱中圭介(福士蒼汰)はそれを目撃。
ちょうどその時間帯にもみじ園で100歳の男性・市島民男が死亡。
濱中と上司の伊佐美佑(浅野忠信)は、市島の体調が急変したり人工呼吸器の異常があった場合は大きなアラームが鳴るはずだと考え、誰もそのアラームを聞いていないことから殺人事件として取り調べを進める。
伊佐美は、担当していた介護士・松本郁子(財前直見)が犯人だと決めつけ、濱中に命じて取り調べ中に自白しろと脅迫。
実は17年前、伊佐美と西湖署は50人以上の死亡者が出たMMO薬害事件が政治家の圧力で不起訴になり、犯人を追い詰められなかったトラウマを負っていた。
記者の池田由季(福地桃子)はMMO薬害事件を調べ、死亡した市島民男との意外な関係に気づく。
濱中は佳代に無理やり肉○関係を迫る。そして佳代もそれに逆らえなくなっていくのだった…。
ネタバレ感想:人間性と警察組織の崩壊
登場人物全員の行動原理が意味不明。佳代は自○行為を濱中に見られたからといって彼の言いなりになってしまうし、濱中と伊佐美の相手を脅す取り調べもいつの時代だよって違和感がある。
ただ元刑事の河合が言っていた「警察組織も人間と同じようにトラウマを持ってしまう」セリフでこの物語が何を言いたいのかが見えてくる。
『湖の女たち』では佳代の異常性と警察組織の崩壊を同列に扱っているのだ。佳代の人間性が崩壊していくことと、警察組織の正義が崩壊していることを湖を軸に対比させている。やや抽象的な目線で見ると、登場人物の行動原理のついていけなさにも納得できる。
登場人物はみな湖を眺める。湖は美しい。しかし、振り返って人間の社会を見てみると、介護施設で殺人事件は起こるし、佳代と濱中の関係はヤバすぎだし、MMO薬害事件は揉み消されるし、731部隊がらみの凄惨な事件も明らかになるし、殺人の犯人とその動機も救いようがないし…と腐りきっている。
湖の美しさと、人間社会の汚さを対比させるコンセプトに優れた芸術的な作品だった。
次のページでは真犯人と動機の解説と731部隊の関連性、佳代と濱中の関係性の本当の意味や、佳代が湖に飛び込んだ理由について考察していく↓↓
コメント