
映画『エデン 楽園の果て』(Eden)。
- 物語のラスト結末までネタバレ解説
- 実話:ガラパゴス事件について解説
- 考察:エデンの本当の意味、食中毒や歯を抜いた理由、島の権力構造の皮肉
これらを徹底レビューしていきます!

映画『エデン 楽園の果て』ネタバレ・ラスト結末の解説
3家族による島での生活
1930年代のフロレアナ島(ガラパゴス諸島)。この地に4年間定住して世界を救う理想について執筆し続けているフリードリク・リッター博士(ジュード・ロウ)と、彼の信奉者であり恋人の恋人ドーラ・シュトラウヒ(ヴァネッサ・カービー)が暮らしていた。
フリードリクはときどきくる船に原稿を渡した。それが新聞で掲載され、彼の生き方に感化された人たちが現れる。ハインツ・ウィットマー(ダニエル・ブリュール)もその1人で、彼は妻・マーグレット(シドニー・スウィーニー)と息子・ハリーを連れてやってくる。
フリードリクはハインツたち家族が島から出て行くよう荒れた土地を割り当てるが、ハインツとマーグレットは泉を作り、野菜を育て、牧畜にも成功。マーグレットは出産もする。
その後、男爵夫人の身分と偽るエロイーズ(アナ・デ・アルマス)が下僕のような男性たち、ルーディとロバートを連れてやってくる。エロイーズはこの地にホテルを作るというが、完全に無計画で行き詰まる。エロイーズはハインツ達からものを盗み、やがて島の秩序が崩壊→
ラスト結末:最悪の殺人事件が勃発
エロイーズの暴走を見過ごすわけにはいかず、ハインツが彼女の下僕を殺害。フリードリクがエロイーズを殺害した。犯人のフリードリクは食中毒で死亡。エロイーズと下僕の死体は見つからず、事件は闇に葬られた。
マーグレットは2000年まで島で暮らし、96歳で亡くなった(実話)。
実話:ガラパゴス事件:フロレアナ島定住ミステリー解説
この映画がもとにしているのは、1930年代初頭にフロレアナ島(ガラパゴス諸島)で起きたガラパゴス事件、通称 “Floreana Island settlement mystery”(フロレアナ島定住ミステリー)
1929年頃から、文明生活への反発・理想社会への憧れを持った数名のヨーロッパ人(特にドイツ人)が、フロレアナ島へ移住を始めた。
フリードリク・リッター博士(ドイツ人医師・哲学者)とドーラ・シュトラウヒ。
ハインツ・ウィットマーらウィットマー家族。
“男爵夫人”エロイーズ・ベアボン・ド・ワグナー・ブスケ(Baroness von Wagner-Bousquet)とその愛人たち。
彼らは島で自給自足の平和共同体を目指した。
しかし、次第に内輪での対立が激化。価値観・生活様式の違い、所有・支配の衝突、嫉妬と裏切りが噴出。
1934年あたりから不審な行動・失踪・死亡が相次ぐ。特に、男爵夫人・エロイーズとその愛人の失踪、リッター博士の死(食中毒疑惑)の真偽は不明なまま未解決事件として残っている。
のちにドイツに帰国したドーラと、島に定住したマーグレットが事件についてそれぞれ手記を書いたが、言い分が食い違っている。
マーグレットの家族はその後も島で生活し、現在は子孫がホテルを経営している。
映画『エデン 楽園の果て』考察:理想郷ではなくコピー
日本でいうとアナタハンの女王事件(終戦前後、アナタハン島では女性・比嘉和子1人、男性30名という状況になり、多数の行方不明者が出た)に似ている。
興味深いのは、ジュード・ロウ演じる哲学者・フリードリクは文明を離れて腐敗した資本主義の次の思想について考えていたはずが、追い詰められて行く過程で弱肉強食の資本主義の論理に完全にのまれてしまったこと。
エデンは理想の場所ではなく、外の世界と同じ権力構造・欲望・支配を軸に回っている。
言い換えると「Eden(楽園)」は原点回帰の理想郷ではなく、“外の世界のコピー”だ。
フリードリクは腐った文明社会を根底から変える思想・アイデアを探究していた。そんな彼が生きるために盗みをはたらこうとし、銃で邪魔者・エロイーズを殺し、恋人・ドーラに愛想を尽かされ、腐った鶏肉を食べて死亡。これ以上はない痛烈な皮肉だ。
フリードリクは、化膿したドーラの歯を抜いた。これは彼自身が現実の生きる痛みから逃れてしまったメタファーだった。
またタイトルの「エデン」は、具体的な場所ではなく「純粋な理想を求める人間の心の構造」そのものを指してる。しかし、楽園を求めると、地獄が始まる。
人が「完全」を目指すとき、必ず「排除」と「犠牲」が生まれてしまう。不完全さこそが健全だと気づけなかったフリードリクの末路には考えさせられた。
2025年ネット配信作品考察レビュー↓


コメント