映画『ドールハウス』(doll house)を鑑賞。
“ドールミステリー”との謳い文句だが、実際のところは?!「怖い?」「怖くない?」
- あらすじ・ネタバレなしの感想
- ネタバレ・ラスト結末の解説
- 考察①:ラストシーンの怖すぎる本当の意味
- 考察②:洗濯機で事故が起こった理由
- 考察③:虐待について
- 忖度なしの感想と評価
これらの情報をまとめました。
映画『ドールハウス』あらすじ
©︎東宝
本作はポルトガルで行われたポルト国際映画祭(ファンタジー系の映画祭)でグランプリを受賞している。
原作なしの映画オリジナルで、映画のノベライズ版とコミック版がある。
映画『ドールハウス』あらすじ:鈴木佳恵(長澤まさみ)が買い物に行っている間に、5歳の娘・芽衣(本田都々花)がかくれんぼをしていて洗濯機に隠れ、そのまま窒息死してしまう。
佳恵と夫の忠彦(瀬戸康史)は娘の死に絶望した。
それから1年後。佳恵はまだ精神的に不安定な状況が続いており、病院のセラピーに通っていた。ある日、佳恵は骨董市で芽衣にそっくりの古い少女人形(アヤ人形)を見つけて即購入。人形を芽衣のように可愛がった。
忠彦は人形に驚き、佳恵のことが心配になる。しかし精神科医の竹内(西田尚美)から「海外ではドールセラピーが効果があると実証されているから大丈夫」と言われる。
そしてまもなく、佳恵は妊娠。第二子となる真衣を産んだ。
真衣が生まれると、佳恵は少女人形のことを気にかけなくなり、雑に扱うようになる。やがて買ったときについていたお札が貼られた箱に入れ、押し入れにしまった。
5歳になった真衣(池村碧彩)は押入れの人形を見つける。佳恵は人形の髪が伸びていることに驚く。人形は昭和7年製作と古く、髪の毛に人間の髪の毛が使われているようで毛髪が伸びていた。なぜか爪も伸びている。
真衣は人形とよく喋るようになった。人形の名前はアヤと言い、喋るらしい。
その頃から佳恵の家庭で不可解な出来事が頻発。真衣の行動もおかしくなり、保育園で首吊りの絵を描くようになった。
佳恵はアヤ人形が動いているのではないかと怪しむが?
果たしてアヤ人形の秘密と呪いは?
ネタバレなし感想:ゴリゴリの最恐ホラー!
想像の5倍くらい怖かった!いい歳してめちゃくちゃ怖くて映画館でブルブル震えた。
ゾクゾクのドールミステリーという触れ込みは決して間違ってはいないのだが、いや、ガチのホラーじゃん。
ゾクっと背筋が凍る演出、驚かせるジャンプスケアの演出、意味深で胸糞な謎解きストーリーもうまくできている三拍子揃った傑作ホラー。
クオリティが高く、ポルト国際映画祭でグランプリを取るのも納得の出来栄え。邦画もまだまだ捨てたもんじゃない。
ホラーがあまり得意でない私からすると「勘弁してください」って感じだった。
ホラー好きにはぜひ見てほしい作品!
ただ、ホラー系が苦手な人にとっては夜中に1人でトイレに行けなくなるくらいには怖いので要注意!
映画『ドールハウス』ネタバレ・ラスト結末
アヤ人形の周囲で不可思議な出来事が
夜中、佳恵と忠彦が寝ているベッドに真衣が入ってきた…と思ったらアヤ人形だった。
さらに佳恵は真衣の腕に引っ掻き傷があるのを見つける。
佳恵はアヤ人形が動いている怪奇現象を体験し、恐ろしくなってアヤ人形をごみ収集車の作業員に捨ててもらう。しかし、作業員がゴミ収集車に巻き込まれて重傷を負った。
夕方、真衣がアヤ人形を連れて帰ってくる。佳恵は真衣が洗濯機に隠れていることに驚いて助け出す。しかし真衣の顔は悪霊の姿に。佳恵が突き飛ばすと、真衣は頭を打って泣いた。
忠彦は病院で経緯を聞く。真衣は軽傷だった。ただ真衣の腕に引っ掻き傷があり、佳恵が精神的に不安定になって虐待してしまった可能性があった。忠彦は佳恵を病院に入院させることにした。
忠彦は母・敏子(風吹ジュン)の家に真衣を預けた。そしてお寺の住職にアヤ人形のお焚き上げを依頼。
忠彦は人形について調べる。アヤ人形の作者は安本浩吉という有名な人形作家で、行方不明になった娘・礼(アヤ)の代わりにと制作したものを浩吉の妻・妙子が可愛がり、妙子の墓に一緒に入れられらしい。
盗人に墓が掘り返され、アヤ人形が連れ出されたのだろうか。
忠彦はアヤ人形の秘密を追って新潟県蔵川郡の神無島へ探索に行ったYoutuberオカルトレンジャーの動画を見る。特に怪しい点はなかった。
夜、敏子は真衣とそばにあったアヤ人形がなくなっていることに気づく。真衣は橋の手すりに座って落ちそうになっていた。しかし敏子が真衣を助けようとすると、小さな少女に噛みつかれた。
騒ぎを聞きつけて忠彦がやってくる。刑事の山本(安田顕)から監視カメラの映像を見せてもらう。橋の手すりに座っていたのがアヤ人形で、敏子に噛み付いたのが真衣のようだった。
忠彦は人形を住職に渡した。寺でお焚き上げ(燃やす供養)が終わる。しかし住職(今野浩喜)はアヤ人形をすり替えて骨董市に売ろうとしていた。住職の口から髪の毛が出てくる。住職はエスカレーターから落ちて死亡した。
アヤ人形の怖い秘密
忠彦のもとに別の住職が人形を持ってきて「手に負えない」と言う。
忠彦は神主であり霊能力者・呪禁師でもある神田(田中哲司)にアヤ人形の対処を依頼。
忠彦は病院でアヤ人形をCTスキャンしてもらう。すると人形の中に人骨(子供の骨)が入っていることが判明。状態が回復した佳恵は退院することになるが、人骨が入っていたと知って驚愕する。
神田がやってくるが、人骨が入っていて事件性があるということで、山本刑事(安田顕)が人形は科学班の解析に回すと言って持って行った。
山本は車の運転中にトンネルで子供を轢いてしまう。車から出ると子供はいない。車にアヤ人形が絡まっている。山本はショックでその場から動けなくなり正気を失う。
そこへ神田がやってきて人形を専用の箱にしまい。忠彦と佳恵と一緒に安本浩吉の人形コレクターのもとへ。
コレクターの高齢の男性は昔、蔵前郡の駐在をやっていたらしい。その頃に浩吉から「妻の妙子が娘の礼(アヤ)が病弱のなのを苦にして母子で首吊りの無理心中を図り、娘の礼だけが死んだ。私は礼の骨に石膏を塗りアヤ人形を作った」と聞いたと話す。
行方不明の浩吉の娘・礼(アヤ)=アヤ人形だったのだ。
ラスト結末:最悪の幸せ
神田はアヤ人形を神無島にある母・妙子の墓に入れて供養しようと提案。佳恵と忠彦も新潟の蔵前へ一緒に行く。神田はオカルトレンジャーの動画を見て「帰りに1人増えている(霊が)」と指摘。
夜に旅館で神田たちはアヤの霊に襲われ、神田は足を怪我してしまった。
翌日、佳恵と忠彦は神無島へ渡り、妙子の墓を掘り起こし、封印がされたアヤ人形を入れる。しかし佳恵が芽衣の写真を落としたのを拾おうとしたところ、アヤの亡霊に襲われた。
忠彦は洗濯機に入っている芽衣を助けた。しかしそれは幻覚だった。
佳恵が妙子の墓に引き摺り込まれそうになってたが、死んだ芽衣の霊の助けなのか2人は助かる。
佳恵と忠彦は無事帰り、真衣と一緒に幸せな暮らしを取り戻した。
その後、敏子が「1週間連絡が取れていない」と言い、神田を連れてマンションにやってくる。
神田は録画されていた子供用カメラの映像を見て(敏子が持っていた)「失敗した」と言う。
アヤは母・妙子を恨んでいた。生前、妙子から虐待されていたのだ。
録画に真衣とアヤ人形の会話が残っていた。アヤは「お母さんを取り替えよう」と言っていた。
真衣は敏子の車の中からベビーカーを押す佳恵と忠彦を見ていた。気づいて欲しくて呼びかけるが2人には真衣が眼中に入らない。
ベビーカーに乗っていたのはアヤ人形だった。
映画『ドールハウス』終わり
『ドールハウス』考察まとめ
ラストシーンの怖い意味、本当の意味
ラストシーンでは佳恵と忠彦がアヤ人形に取り憑かれているようだった(真衣は敏子に預けられているまま)。絵に描いたようなバッドエンドだが、深読みするともっと怖い。
芽衣の仏壇に飾られていた花が枯れたのが気になる。
アヤは真衣に「お母さんを交換しよう」と言っていた。お母さんを交換したのは、アヤの霊と芽衣の霊なのでは?
芽衣の霊は佳恵と忠彦を助けて天に召されたような感じだったが、実際は芽衣の霊は妙子の墓に引きずり込まれてしまったのではないか?
アヤは死んでからも人形にされて妙子のそばに置かれ、墓にまで入れられた。アヤの霊は妙子が憎く、そこから逃げたかったのだろう。実際に呪いをかけているのは妙子の霊なのかもしれない。
旅館で見えた霊は、フラッシュをたいた瞬間しか見えなかったので定かではないが、子供にしては大きかった気もする。もしかして妙子の霊?
佳恵も妙子もアヤ人形を溺愛した。佳恵や妙子ら母親が娘を死後も人形として束縛し続ける狂気がこの映画の本質に見える。
いずれにしても佳恵と忠彦以上に、亡くなった娘・芽衣の霊が不憫に思える胸糞ラストだった(話しとしては面白いけど)。
神無島から出る道を佳恵、忠彦、芽衣の3人で手を繋いで楽しそうに歩いていたが、実際はこのときアヤ人形と手を繋いでいたのだろう。
アヤ人形は芽衣の代わりになった。芽衣はアヤの代わりになった。
真衣はそもそも佳恵にとっては芽衣の代わりだったが、その座すらアヤに奪われた。
そんな悲しすぎるバッドエンドだった。
ちなみに真衣が描いた首吊りの絵は、妙子がアヤと無理心中した時のもの。
水の中で茹でられているような絵は、アヤが死んでから浩吉によって茹でられて骨にされた時のもの。
茹でられたとき、アヤは熱さを感じたのだろうか?怖い。。。
アヤの霊の怖い形相は、首吊りか釜茹での時に顔が変形してしまったのだろう。
洗濯機で事故が起きた理由
洗濯機に隠れて窒息死してしまった長女・芽衣。これにもアヤ人形が関わっていると考える。
終盤、忠彦は洗濯機の幻覚を見せられて妙子の墓の上部をスコップでガンガン叩いていた。
洗濯機は佳恵にとって過去のトラウマそのものであり、妙子の墓のメタファーでもある。
洗濯機=妙子の墓とすると、アヤは「かくれんぼ」で芽衣が洗濯機に隠れるよう誘導したのでは?との考えが浮かぶ。
アヤは自分の身代わりとして、芽衣を母・妙子の墓に封印したかったのかもしれない。
芽衣は洗濯機で死亡し、最後には芽衣の霊と写真がアヤの代わりに妙子の墓に封印されたかのようだった。
佳恵は真衣を虐待していた?
先程とは違うパターンの考察。
妙子と佳恵には人形を我が子として扱った共通点がある。
妙子は病弱な礼(アヤ)を虐待していた。
真衣は「手の引っ掻き傷は誰にやられた?」と聞かれた時に「言ったらまたやられるから言わない」と答えた。アヤ人形がやったと思いきや、佳恵が虐待していた可能性もある。
佳恵は芽衣の存在をアヤ人形に重ね、次は真衣に重ねた。
真衣は佳恵が自分を見てくれていないことに気づき、芽衣の写真を塗り潰した→佳恵が激怒して虐待したとか。
佳恵が芽衣を虐待しているとすればアヤの霊は「お母さんを交換しよう」とは言わないはずなので、やはり佳恵から真衣への虐待はなかったと考える方が自然だろう。
ただ、アヤの霊には自分と似た境遇の真衣を救いたかった、芽衣の代わりの“人形”のような扱いをされる真衣を助けたかった想いもあったのかもしれない。
アヤ人形が凶暴化したのは、佳恵が芽衣を虐待し始めたからではないだろうか。
映画『ドールハウス』感想と評価
良かった点:ゾクゾクする演出の数々
怖かった。リングの次くらいに怖かった。
演出が良い。真衣が首吊りの絵や釜茹での絵を描いたシーンは、これから何が起こるのかとゾクゾクした。
忠彦が母・敏子に噛み付いたのは真衣だと気づいて歯形を確かめようとしたときに真衣が目を見開いて絶叫するシーンはトラウマになりそう。
アヤ人形から乳歯が出てきて、CTスキャンしたら人間の骨(アヤの骨)がまるまる入っているとわかる演出も怖すぎ。背筋が凍りついた。
神田がアヤ人形を持っている山本刑事の写真を写す→山本が後でその写真を見てみるとアヤ人形が恐ろしい形相をしているシーンも怖い。
旅館でカメラを撮影したら、暗闇の中でフラッシュがたかれたときだけアヤの霊の恐ろしい形相が見えるのも怖い。海外の最新ホラーもしっかり研究して作られていると感じた。
また、根底に子供を失った親の絶望とトラウマが漂っており、それが作品に奥深さや重厚感を与えていた。
佳恵は絶望によって自らアヤ人形を引き寄せたともいえる。
抽象的な見方をすれば芽衣の死というトラウマがアヤ人形にカタチを変えて何度も襲いかかってくるかのようでもあった。
余韻もあり、いろんな解釈ができる。
設定についてはいろんなホラー映画の詰め合わせ感もあるが、各伏線回収、洗濯機と墓の相似、子供がかなり酷い目に遭うなどの点によって独自の雰囲気になっていた印象。
Jホラーと海外の人形ホラーを組み合わせたようなテイストだとも感じた。
人形ホラーは『アナベル 死霊館の人形』『M3GAN ミーガン』『ザ・ボーイ人形少年の館』など数多あるが、『ドールハウス』は日本の香りがする人形ホラーとして海外でもウケそう。
残念な点
残念な点はない。強いて言えば、ドールミステリーとの謳い文句だったので、そこまで怖くないかな?と警戒心を解いていたところでガチ怖だったので、心の準備ができていなくて精神的なダメージを負った。
おそらくだけど、「ミステリーと見せかけてガチホラー、→怖すぎる口コミ広がる!」という戦略の映画なのかもしれない。
あとは田中哲司さん演じる霊能力者についてだが、アヤの対処法をもろに間違っていて笑った。能力は高いけど、アヤが母・妙子を恨んでいることまでは見抜けなかった…ある意味で戦犯。しかも足を怪我して神無島に行く前に退場してるし。
まとめると『ドールハウス』はゾクゾクミステリーの枠を超えたゴリゴリの傑作ホラー映画だった。脚本・演出面での完成度が非常に高い。矢口史靖の新たな代表作になるのでは。
長澤まさみ主演の映画レビュー↓


2025年公開の邦画レビュー↓







映画『ドールハウス』キャスト
鈴木佳恵(専業主婦)|cast 長澤まさみ
鈴木忠彦(佳恵の夫、看護師)|cast 瀬戸康史
鈴木真衣(芽衣亡き後で生まれた佳恵の長女)|cast 池村碧彩
鈴木芽衣(5歳で死亡した佳恵の長女)|cast 本田都々花
鈴木敏子(忠彦の母)|cast 風吹ジュン
神田(霊能力者・呪禁師)|cast 田中哲司
山本刑事|cast 安田顕
竹内(精神科医)|cast 西田尚美
住職|cast 今野浩喜
人形コレクター|cast 品川徹
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