映画『ウィキッド ふたりの魔女』(ウィキッド ふたりのまじょ/Wicked )パート1を鑑賞。
シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの超絶ハーモニーに感涙。ひと味違う社会派としての側面もあった。
ネタバレなしの感想、ラスト結末までネタバレ、視聴後の良い点・ダメな点、正直な感想・評価、斬新なメッセージの考察をまとめました。
映画『ウィキッド ふたりの魔女』あらすじ・作品情報
キャスト↓
エルファバ・スロップ|cast シンシア・エリヴォ(『刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン』,実写『ピノキオ』)
グリンダ・アップランド|cast アリアナ・グランデ=ブテーラ
フィエロ・ティゲラール|cast ジョナサン・ベイリー
ディラモンド教授|cast ピーター・ディンクレイジ声(『ゲーム・オブ・スローンズ』)
マダム・モリブル|cast ミシェル・ヨー(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』)
オズの魔法使い|cast ジェフ・ゴールドブラム
感想(ネタバレなし)
オープニングからラストまで怒涛の歌とダンス!!シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの相性も抜群で2人のハーモニーに至福のときを感じた。
2人の歌声が超絶なだけでなく、それぞれの楽曲もめちゃくちゃ素晴らしい。衣装や舞台もゴージャスで芸術的だった。
正直、歌だけ聴いていれば楽しめる内容だが、2人の友情に加えて差別の問題などを上手く入れ込んだ物語もなかなか楽しめた。
ミュージカル映画が少しでも好きな人は今すぐ劇場へGo案件。生きる力が貰える珠玉のファンタジー!
映画『ウィキッド ふたりの魔女』ネタバレ・ラスト結末
モリブル学部長はエルファバとグリンダを相部屋にする。グリンダはエルファバが緑色なのをみんなで馬鹿にし、さらに魔法の才能に嫉妬していた。
ある日、大学にフィエロ王子が編入してくる。フィエロはみんなをダンスパーティーへ行こう!と誘う。
グリンダはボックから「今夜一緒に踊ろう」と誘われたが嫌だったので、「車椅子のネッサローズを誘った人はヒーローだと思う」と言葉巧みに彼を誘導した。
ボックはネッサローズを誘った。エルファバはそのことでグリンダに感謝し、モリブル学部長に「グリンダも特別レッスンを受けられるようにしてほしい」と頼んだ。
そうとは知らないグリンダはエルファバに黒い醜悪な帽子をプレゼントする。エルファバはその帽子を被ってダンスパーティー会場のスターダストにやってきてみんなに笑い物にされるが、涙をこらえて自己流の奇妙なダンスを踊った。
グリンダはエルファバがレッスンを受けれるように学部長に頼んでくれたと知り、感動して一緒にヘンテコなダンスを踊る。2人はその日から親友になった。
オズの国ではかつては対等だった動物への差別が進んでおり、ヤギのディラモンド教授が捕まって連れていかれる。
エルファバは魔法でその場にいた全員を眠らせ、フィエロ王子と一緒に檻の中にいたトラの赤ちゃんを逃した。フィエロはエルファバの行動や考え方に衝撃を受け、自分を見つめ直す。
エルファバはオズの魔法使いから招待を受けてエメラルドシティへ。グリンダも連れていく。
オズの魔法使いはエルファバに誰も読めない呪文書・グリモリーを見せる。モリブル学部長もやってきた。オズの魔法使いは「衛兵のチンパンジーたちが翼を欲しがっている」と嘘をつく。エルファバはなんとグリモリーを完璧に読みこなし、チンパンジーたちに翼を生えさせた。
エルファバはオズの魔法使いが魔法を使えないペテン師で、彼こそが動物を虐待している真犯人だと知り、グリモリーを持って逃げる。グリンダがエルファバを説得するためについていく。城の頂上まで来たところで、エルファバはグリンダと一緒に魔法のほうきで飛び立とうとするが、グリンダは衛兵たちに捕まる。
エルファバは「動物たちを救う!」と宣言し、西の空へと消えていった。
『ウィキッド ふたりの魔女』終わり
『ウィキッド ふたりの魔女』感想と評価
良かった点
歌唱力、楽曲、衣装や舞台などの映像美の三拍子がそろったミュージカルの良作。
個人的には、美人だけどかなり嫌味なキャラのアリアナ・グランデが素晴らしかったと思う。憎らしいけど憎めない彼女の絶妙なキャラ作りが映画を一段階うえに押し上げていたと言っても過言ではないだろう。ファルセットでの歌唱も抜群。何オクターブ出るの?
歌の回数はアリアナ・グランデの方が多かった気がする。シンシア・エリヴォの独唱をもっと聴きたい…と思っていたらラストで大迫力の声を聞かせてくれたので大満足。
2人とも歌い方や声質が全然違うから、喧嘩するシーンではあえてハモリを抑えてユニゾン(同じ音程)で歌ってたりしたけど、それもまた良い。最高のコンビだと思った。
アカデミー賞での2人のパフォーマンスをどうぞ↓
ダメな点
表面でコッテコテの学園ドラマをやりつつ、差別の問題提起をしてくるストーリーは興味深かったけど、中盤〜後半は中だるみ感があった。
オズの魔法使いが魔法を使えないことを簡単に白状したり、モリブル学部長がいきなり悪いおばさんになったりと、コイツら本気でエルファバを利用する気ないだろ…って感じ。もっとマシな嘘をつけばいいのに(笑)。
くわえてパート1とパート2が分かれていることもあってかストーリーが極上とまでは言えなかったので、傑作とまで評価するのは難しい印象(パート2も今作と同じくらいのクオリティとメッセージ性があれば傑作と呼んで良いかもしれない)。
『ウィキッド ふたりの魔女』ガチ考察
原作となるブロードウェイのミュージカル『ウィキッド』(Wicked)がかなり社会問題てんこ盛りな作品なことに加えて、アジア系のジョン・M・チュウが監督(『クレイジー・リッチ!』で有名)を務めたこともあって、アメリカの差別な問題をシニカルな目線で切り取っていることに成功している。
従来の差別ダメ、絶対系の映画とはテイストがひと味違うと感じた。
エルファバが緑色の肌で差別されることに関しては、黒人への差別の構造をストレートに表現していると思った。くわえてエルファバは母親と不倫関係にあった男性の子供なので、肌の色が違うから不倫相手の子供だとすぐにバレてしまうことがあるという多民族国家ならではの問題点がサラッと入れ込まれている点がすごいと感じた。
また、オズの国では動物もしゃべれて人間と対等だったけど現在は差別されている構造について、人間中心主義ではなく、ポストヒューマニティーズ(動物など人間以外の存在とどう関わりあうか)の視点が盛り込まれているとも感じた。
黒人差別や原住民虐殺のキッカケとして「彼らは人間ではない」という考え方が移民・開拓期にはあったらしい。そういう考え方が差別の根底にあるなら、いっそ動物にも人間と同じ権利があると考えてみてはどうか?という意図もあるのだろう。
あとは、ヤギのディラモンド教授など知的な動物が愚かなマジョリティに排除されていく構図は、トランプの共和党に敗れた民主党支持者の叫びにも見えた。まあ深読みしすぎかもしれないが、いろいろな捉え方・考え方ができて社会派としての完成度も高いと感じた。
『ウィキッド ふたりの魔女』はグリンダのような無自覚な差別主義者というテンプレを入れつつも、差別の構造の根幹に切り込んでいる作品だった。
きっと西の魔女・エルファバは生きているんだろうな。パート2となる『ウィキッド: フォー・グッド(
Wicked: For Good)』も2025年中に公開が決まっているので今から楽しみ!
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