踊る大捜査線のスピンオフ映画『室井慎次 敗れざる者』を鑑賞。続編の『室井慎次 生き続ける者』と前後編で秋田の湖のほとりの死体や、最悪の猟奇殺人犯・日向真奈美の娘・杏(あん)の秘密に迫るサスペンス×ヒューマンドラマ。
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『室井慎次 敗れざる者』あらすじ
室井慎次(柳葉敏郎)は「現場が捜査をしやすいように警察組織を変える…」という青島(織田裕二)との約束を果たすために警察庁組織改革審議委員で5年間奮闘した。しかし何も変えられず委員は解散させられた。
「俺は敗れた…負け犬だ」そう考えた室井は定年前に辞職。地元秋田の山の湖のほとりにある民家を改築して、3年前に母が殺された高校生・森貴仁(齋藤潤)と、父が強盗で服役中の小学生・柳町凜久(りく|前山くうが&前山こうが)を引き取り、里親として手探りで生活していた。
ある日、湖の向こうで異臭があり、土の中から腐乱死体が発見される。死体は20年前の『 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の犯人グループの1人瀬川吉雄のものだった。瀬川は18年間服役していたが、2年前に出所してまた同じ仲間たちと強盗や特殊詐欺を働いていたようだ。
死体と一緒に腐った洋梨も発見される。仲間割れか?
ネタバレ1:日向杏の正体は?
そんな中、室井は日向杏(ひゅうがあん|福本莉子)という女の子が離れの建物で倒れているのを発見。看病すると杏はすぐに元気になった。杏の里親からの手紙を持っていた。杏が非行を繰り返したため、室井に面倒を見て欲しいという内容だった。杏はしばらく室井の家で暮らすことになる。
室井は身元を確認させる。杏の母親は12年前に脱獄してまた青島に捕まった凶悪殺人犯・日向真奈美(小泉今日子|1作目『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間』と3作目『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』に登場した猟奇殺人鬼)だった。
真奈美は14年前に獄中出産し、相手の男性は不明。警察の上層部は獄中出産を揉み消したという。
杏は貴仁と凛久に「室井が何度もぶった」と嘘をつき、関係に亀裂を入れようとする。
室井は杏の怪しい動向に気づくが、「人に迷惑をかけるな」としか言わなかった。
ネタバレ2:母を殺した人物と面会
ある日、新米弁護士の奈良育美(演-生駒里奈)が室井の家を尋ね、貴仁に「被告からたくさんの謝罪の手紙を送ったけど読んでくれた?」と話す(貴仁は読んでいなかった。)。謝罪の気持ちを受け入れたことを法廷で証言させ、依頼人である被告の刑期を軽くするのが目的だった。
貴仁は奈良の行動に怒りを募らせる。しかしそれだけでは解決にならない。貴仁は自分の気持ちに踏ん切りをつけるために室井と一緒に被告に面会に行った。刑務官は森下孝治だった(かつて湾岸署の立番をしていて室井ときりたんぽ鍋を食べうよと約束した人物)。
貴仁は犯人に「母さんはあんたみたいなヤクザ者と付き合っていた、金をせびるどうしようもないやつで、酒を飲んでは情けなく泣いていた。おまえもそんなヤツだろ!」と強く言い放つ。被告は何も言い返せなかった。
面会は終わった。その後、被告は殺人を自白したという…。
ネタバレ考察&ラストの意味:犯人や杏の目的、青島は?
室井慎次が青島との約束を果たせずに引退し、被害者の遺族だけでなく加害者の遺族も引き取って保護者として奮闘しながら暮らす。想像以上に濃厚で完成度の高いヒューマンドラマだった。(ちなみに織田裕二演じる青島俊作は過去の映像でしか出ない)
特に、貴仁が母を殺した犯人に面会して「あなたは情けない人間だ!」とキッパリ決別の言葉を放ったあと、室井が貴仁の肩に触れるのをためらってやめるシーンが素晴らしい。室井はこのときに貴仁のことを1人前の大人として認めたのだろう。すごく感動したし、演出としても素晴らしかった。
室井は警察キャリアとして組織を変えることはできなかったが、事件で1番心の傷を負う子供たちに手を差し伸べている。誰が彼を敗れた者といえるだろうか。彼は間違いなく敗れざる者なのである。
ただサスペンス部分の謎や手がかりがほとんど解明されなかったのは少し残念だった。もともと1作にまとまった内容だったものを、ヒューマンドラマ部分がよかったから前後編に分けたのかもしれない。踊るプロジェクトの賑やかな感じが好きなファンは肩透かしを喰らったのではないだろうか?
次のページでは、青島と因縁がある猟奇殺人犯・日向真奈美の娘・杏が室井のもとに来た理由は何だったのか? 杏の父親と獄中出産の謎、 瀬川を殺した犯人は誰なのか?続編・「室井慎次 生き続ける者」の内容について徹底考察&解説をしていく↓↓
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