映画『アマチュア』(The Amateur)を鑑賞。
『ボヘミアン・ラプソディ』や『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラミ・マレックがCIAのオタク気質な分析官ながら殺しのアマチュアとして復讐者に変貌するさまを描く。
- あらすじ&ネタバレなしの感想
- ネタバレラスト結末・事件の全貌
- ラストシーンの意味を考察
- 歯車から抜け出した主人公、哀愁を背負った敵のコンセプト
- 忖度なしの感想と評価
これらを徹底解説していきます。
映画『アマチュア』あらすじ
キャスト↓
チャーリー・ヘラー(チャールズ・ヘラー)|cast ラミ・マレック(『ボヘミアン・ラプソディ』『007 ノータイムトゥダイ』)
ヘンダーソン|cast ローレンス・フィッシュバーン(『ジョン・ウィック』シリーズ、『マトリックス』)
サラ・ヘラー|cast レイチェル・ブロズナハン
シラー|cast マイケル・スタールバーグ
ムーア|cast ホルト・マッキャラニー
インクワライン|cast カトリーナ・バルフ
カルロス|cast エイドリアン・マルティネス
ジャクソン・オブライエン|cast ジョン・バーンサル
サマンサ・オブライエン長官|cast ジュリアンヌ・ニコルソン
ネタバレなし感想
映像解析担当のオタク系主人公・チャーリーが自ら復讐を果たそうとするプロットが面白い。
ヒョロガリ体型の分析官が与えられた役割を超えて自ら動く姿から、運命を超えようとする者の尊さが垣間見えた。
ただストーリー展開は普通のアクション映画とそこまで変わらず、期待していたよりも満足度は低めだった。
映画『アマチュア』ネタバレ・ラスト結末
チャーリー(ラミ・マレック)は妻が殺されたロンドンのホテル付近の監視カメラの映像を解析し、犯人が裏社会で仕事をしているシラー(マイケル・スタールバーグ)、グレッチェン、エリッシュ、ミシカの4人だと突き止める。
妻を撃ったのはシラーだった。
上司のムーアに犯人を伝えるが、他の大きな計画があるのでテロリストの暗殺に動くことはできないと言われる。
チャーリーは謎の人物インクワライン(カトリーナ・バルフ)から情報を受け、上司のムーアが中東での米軍のドローン誤爆を自爆テロに報告書を改ざんさせたことや、妻・サラを殺したテロリストがCIAの隠密作戦に関わっていたことを知る。
チャーリーは「自分が一定時間ログインしなければ報告書の改ざんや隠密作戦についての情報がメディアにリークされるようにした」とムーアを脅し、「暗殺のトレーニングを受けさせろ」と要求。
チャーリーはヘンダーソン大佐(ローレンス・フィッシュバーン)から射撃や即席の爆弾製造について習った。しかしヘンダーソンから「お前は殺人者にはなれない」とキッパリ言われる。
ムーアはチャーリーの情報リークシステムが嘘だったことに気づき、ヘンダーソンに「チャーリーを始末しろ」と命令。しかしチャーリーはすでにロンドンへ飛んでいた。
チャーリーはパリへ行き、密室でトレーニングしているグレッチェンのところへ。花粉を撒いてアレルギー症状を引き起こさせ、シラーはどこにいるのか?と尋ねた。グレッチェンは逃げ、車に轢かれて死亡。
ヘンダーソンが追ってきたが、お手製の爆弾でどうにか逃げるチャーリー。
その後、チャーリーはインクワラインとコンタクトを取り、トルコのイスタンブールで落ち合った。インクワラインは女性で、「夫は元KGBだったがCIAの情報提供者へ寝返った。しかしKGBから殺された」と話す。
チャーリーはスペインのマドリードへ飛び、屋上のナイトプールを破壊して泳いでいたミシカを地上に墜落死させる。
チャーリーを追っていたヘンダーソンは他のスパイと鉢合わせして乱闘になり、銃で撃たれて動けなくなる。
チャーリーはインクワラインに協力してもらってエリックに武器の取引を持ちかける。しかし2人の居場所がバレ、CIAの部隊に襲撃される。インクワラインは撃たれて死亡した。
チャーリーはエリックと会い、武器の代わりに爆弾を渡し、シラーの場所を聞き出した。エリックは爆発に巻き込まれて死亡。
チャーリーはシラーがいるロシアの港町へ。
CIAスパイで友人のジャクソン(ジョン・バーンサル)がやってきて「もう復讐はやめろ」と説得してくる。しかしチャーリーは聞かない。
チャーリーはシラーの部下に拉致されてシラーの船に乗せられる。シラーはチャーリーが面と向かって人を殺せないことに気づき、撃ってみろと言う。
チャーリーは撃てなかったが、船を操作してフィンランドの領海へ侵入させた。
領海侵犯となり、シラーたちは捕まる。ムーアを怪しんでいたCIA長官サマンサ・オブライエン(ジュリアンヌ・ニコルソン)がシラーの一味を逮捕させた。
その後、ムーアは罪に問われてすべてを失い。チャーリーはCIAに復帰できることになった。
ヘンダーソンが現れ、お前は期待以上だったと言う。
チャーリーは妻・サラからプレゼントされた壊れたセスナ機を修理し、空を飛ぶ。
映画『アマチュア』考察まとめ
事件の全貌
上司のムーアが隠密作戦にシラーたち裏社会の傭兵を利用していた。しかしロンドンでCIA関係者とシラーたちの交渉が決裂し、シラーたちは逃げるためにホテルで人質を取った。そしてサラを殺した…というのが真相。
ヘンダーソンと乱闘になったスパイはCIA長官の命令で来ていたのだろう。
ラストシーンの意味
サラがチャーリーに贈った小型パズルの中には方位磁石と手紙が入っており“あまり空高く飛びすぎて迷わないで”と書かれていた。
これは復讐にかられているチャーリーへのメッセージになっていた。方位磁石は“道を誤るな”と伝えている。
チャーリーはこのメッセージを見て、復讐によってこれ以上自分を失うのはやめようと我に返ったのだろう。だからこそ妻に手をかけたシラーを殺さなかったのだと思う。
ラストシーンではチャーリーがセスナ機で空を飛ぶ。
チャーリーはサラがくれたセスナと方位磁石と愛によって人の道を見失わなかったとの表現にみえた。
歯車から抜け出した主人公、哀愁を背負った敵
映画『アマチュア』は歯車から抜け出した主人公と、哀愁を背負った敵たちの物語だった。
まずチャーリーのキャラクターは、『007』でいうとジェームズ・ボンドではなくQ(兵器開発やアシスト担当)に近い。
チャーリーはオタクキャラのQが頑張ってボンドを真似するというセオリーを超えた人物だ。
さらにチャーリーは自らが所属する組織・CIAを敵に回すこともいとわず復讐を進めていく。
複雑に絡み合った歯車から抜け出した男=チャーリーと言ってよいだろう。
それに対して教官のヘンダーソンや敵のシラーは歯車から一歩も抜け出せていない。組織や社会に要請された役どころを頑張って演じている哀愁がにじんでいる。「俺だってこんな生き方したくないけど仕方ないけど…」という心情がヒシヒシと伝わってくる。
ヘンダーソンもシラーもチャーリーを殺せそうなのに殺さなかった。組織の歯車から抜け出したチャーリーに心のどこかで敬意を抱いていたからだろう。
映画『アマチュア』感想と評価
良かった点:オタク系主人公が自ら復讐を決意
暗号解読オタク(ナード)であり戦闘はからっきしダメな主人公が自ら復讐する設定が秀逸だった。
この手のプロットでは主人公にジェイソン・ステイサムやリーアム・ニーソンがキャスティングされ組織から裏切られて孤立しながらも敵を倒しまくる!っていうのがよくある話だが、そのあるあるの意表を突いたような作品だった。
ちなみにジェイソン・ステイサム主演の『メカニック ワールドミッション』でも高層プールの破壊→ターゲットが落ちて死亡のシーンがある。
また、ラミ・マレックの雰囲気がすごく良かった。明らかにジェイソン・ステイサム側ではない彼だが、妻を失った悲しみを十二分に表現できていたと思う。
ローレンス・フィッシュバーンもシラー役のマイケル・スタールバーグも、裏の仕事をいやいややっている感が出ていて良かった。
キャストの演技力が高かったこともあり、妻を殺された男が復讐をやりきって闇堕ちせずに未来を見つめるヒューマンドラマとして楽しめた。
残念だった点:物語自体はそんなに面白くない
ラミ・マレックによるナード系復讐ヒーローが新鮮だった一方、ストーリーのその他の部分についてはまったく意外性がないのが残念だった。
主人公は頭脳派だけど、全体として脳筋アクションヒーローのプロットから抜け出せていなかった印象。
チャーリーが機密情報を持ち出したと見せかけるシーンは良かったけど、上司のムーアが隠密で作戦を決行していてチャーリーを消そうとしてくる展開はあるあるが過ぎる。
CIAがなぜ空港でチャーリーを押さえられないのか?など、結構無能に見えてしまったのも残念だった。チャーリーを引き立てるために無能を演じたようにも見え、一連の追跡劇に臨場感やリアリティを感じなかった。
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