映画『少年と犬』ネタバレ感想:ツッコミどころ満載, ラスト結末つまらない点レビュー,実話?

映画『少年と犬』

映画『少年と犬』を鑑賞。東北にいた1匹の犬が、たくさんの人と関わりながら大切な人がいる南の地へ冒険する物語。

『ラーゲリより愛を込めて』の制作スタッフが集結した期待の感動作!と思いきや…!

あらすじ、ラスト結末のネタバレ解説、和正と美羽の関係の考察、良かった点・残念なポイントを忖度なしでぶっちゃけます!

映画『少年と犬』あらすじ・作品情報

監督:瀬々敬久
脚本:林民夫
原作:馳星周の小説『少年と犬』(2020)
劇伴:小瀬村晶
主題歌:SEKAI NO OWARI「琥珀」
映画『少年と犬』あらすじ:2011年の東日本大震災から半年後。中垣和正(高橋文哉)は働いていた工場が倒壊して仕事を失い、仕方なく窃盗団の運転手として働いていた。そんなある日、首輪に多聞(たもん)というタグがついた犬と出会う。多聞は南を見ていた。まるで南の方に大切な人がいるかのようだった。和正は多聞を飼うことにする。和正の母は認知症だったが、多聞を見ると昔飼っていた犬を思い出して元気になった。多聞は窃盗団とのトラブルで和正の元から引き離される。
2013年。滋賀県で暮らす須貝美羽(西野七瀬)はある罪を犯した。そんな美羽のもとへ犬の多聞がやってくる。美羽は多聞と暮らしはじめる。多聞を訪ねて和正もやってきた。2人は運命に翻弄されながらも多聞に心を救われていく。。

キャスト↓

映画 少年と犬のキャスト

中垣和正|cast 高橋文哉
須貝美羽|cast 西野七瀬(『シン・仮面ライダー』『1122』)
沼口正|cast 伊藤健太郎
中垣麻由|cast 伊原六花
片野弥一|cast 柄本明
内村徹|cast 斎藤工(『シン・ウルトラマン』)
内村久子|cast 宮内ひとみ
猟師|cast 柄本明
木村|cast 一ノ瀬ワタル
獣医|cast 江口のりこ
デリヘルの元締め柳田|cast 渋川清彦
美羽の母|cast 美保純
獣医|cast 眞島秀和
嵐莉菜
木村優来
栁俊太郎
手塚理美
益岡徹

ネタバレなし感想

実話っぽいけど実話ではなくフィクション。正直、期待を大きく下回るクオリティだった。

詳細はネタバレありの感想で語るが、全体的に演出が全く良いと思えなかった。視聴者を泣かせにきているようなケレン味たっぷりのつくりはどうなのか

すごく重たい話のはずが、ところどころ軽妙なノリなのも気になった。共感性羞恥(きょうかんせいしゅうち)も煽られる。

ラストは感動したけど、特に前半はムムムなポイントやツッコミどころが満載。人によっては好きかもしれないけど個人的にはオススメできない作品となってしまった(すいませんけど)。

映画『少年と犬』ネタバレ・ラスト結末

2011年。和正は外国人窃盗団の運転手を引き受ける。仕事は成功するが窃盗団同士のトラブルに巻き込まれて事故に遭い大怪我をする。車に乗っていた多聞は窃盗団の女性に連れていかれてしまう。その後、その女性は遺体で発見された。

和正は姉・麻由(伊原六花)に窃盗団で働いていたことがバレて家を出て行けと言われる。

2013年。美羽は山に死体を埋めていた。そこへ怪我をした犬の多聞が現れる。美羽は多聞を病院へ連れて行った。美羽は多聞をレオと呼び、一緒に暮らすことにする。デリヘル嬢として働いていた美羽にとってレオは心の癒しだった。そんなある日、和正が現れる。和正は美羽がSNSに投稿したレオの写真を見て訪ねてきたという。

和正は母や姉とやり直したいから多聞を返してほしいと言うが、美羽は断る。

和正は成り行きで美羽の妹の結婚式へ行き、彼女がデリヘルという仕事のために妹や母親から疎まれていると知った。

美羽は和正と多聞と一緒にバーベキューをする。翌朝、ニュースで自分が埋めた死体が上がったと知った美羽は入水自殺をしようとした。多聞が気づいて吠え、和正が美羽を水から引き上げて止めた。

美羽は自分の罪を告白する。ギャンブル中毒の恋人の借金を返すためにデリヘルで働いたが、恋人が自分が渡した金を借金返済に充てずに他の女と遊んでいるのを見た。そのあとにまた金をせびられ、衝動的に恋人を包丁で刺してしまったのだ

美羽は自首することにする。和正は多聞を南へ送り届けることと、美羽の出所を待つことを約束したが、居眠り運転のトラックに突っ込まれて死亡

その後、多聞はガンを患う猟師の(柄本明)を看取った。そして南へ向かう。

多聞は熊本の内村ひかる少年のもとへやってくる。ひかるはもともと東北に住んでいたが、東日本大震災にあって海が怖くなり、父・徹(斎藤工)と母と一緒に熊本へ引っ越してきたのだ。

ひかるは喋れなくなっていた。徹は犬の多聞が、ひかるが東北でよく遊んでいた犬だと気づいた。ひかるが祖母に連れられてよく行っていた公園に、多聞も当時の飼い主とよくきていた。多聞とひかるはまるで前世で生き別れた2人が出会ったように仲が良かった。

ひかるの祖母も多聞の飼い主も震災で死亡した。

多聞と再会したひかるは喋るようになる。しかし、2016年の熊本地震に遭い、多聞は倒壊した自宅でひかるをかばって死亡した

刑期を終えて出所した美羽はネット上で内村徹とやりとりをして多聞のことを知った。

美羽は幽霊となった和正から多聞の冒険の話を聞いた。和正は幽霊になってからも多聞の冒険について行ったのだ。

美羽は兵庫で1人の少女と出会い、多聞や和正の話を聞かせる。

映画『少年と犬』終わり

映画『少年と犬』考察:和正と美羽の関係

多聞とひかるは前世で生き別れた恋人のようだと、ひかるの祖母が行った。

和正と美羽も今世で生き別れた関係。多聞とひかるの前世は、和正と美羽のような悲劇の運命を辿った人物なのかもしれない。

この考察が当たっているかわからないが、犬と少年の関係から人間同士の深い結びつきまでを想像する余白があったことは確かだ。

窃盗団の外国人女性も、難民出身で生きるために悪事に手を染めなければならなかった切ない運命を辿った1人だ。和正はこの女性を救えなかったが、美羽の人生は救うことができた。

外国人女性は「最初の友達が犬だった」と語る。ひかる少年を探した多聞のように、この女性を探す犬もまたいたのかもしれない。重奏的なストーリーを感じた。

映画『少年と犬』感想ネタバレ:共感できそうでできない

良かった点

多聞はいち早く大好きなひかる少年のもとへ駆けつけたいはずなのに、和正、美羽、猟師のおじさんなど困っている人を見ると放って置けないところが良かった。

忠犬ハチ公ではないけど、自分よりも人間を優先させてしまう犬の性分が無性に切なくて泣ける。多聞にも幸せになってほしかった。多聞とひかる少年が楽しそうに遊んでいるシーンで終幕しても良かった。

さくらという名前の犬が多聞を演じているようだが、キャスティングはバッチリだったと思う。

西野七瀬も良かった。見る角度によって色んな表情を見せてくれる彼女。シーンによって別人が演じているように見えてすごく興味深い。稀有な存在だと思う。いい俳優になってきたなあ(偉そうですいません)。

あとは少年の父・徹を演じた斎藤工さんも良かった。しゃべらない息子・ひかるを見つめる淡々とした表情と、渋い声で淡々と語られる言葉。登場シーンは少なかったけど彼も東日本大震災の悲劇や闇を抱えていることが一発で伝わってきた。

残念な点、問題点

東日本大震災と孤独な人間というすごく重いテーマのはずが、演出によって軽妙な感じになっていたのがいただけない

特に高橋文哉さんが演じる和正の軽妙な感じが作品にマッチしていなかった。悪そうな感じがゼロなので窃盗団の手伝いをしている設定に対しての説得力もゼロ。
立派な家もあるしそこまで差し迫った感じがない。まっとうな仕事をしたかったヤツという設定だが、普通にまっとうな仕事をしそうなヤツに見えた。

あとは和正が雪道でトラックに轢かれるシーンもなんだかなあ。他に何もない場所で大型トラックが近づいてきたら、音とか振動でわかりそうなものだけど…(イヤホンしてたっけ?)

そして、そういう時に限って多聞は助けてくれない(笑)。吠えたり引っ張ったりしてくれよ!

また和正が幽霊になったのも、突然『シックスセンス』っぽくなって違和感だった。幽霊は匂わせ程度にしておけば良かったのに、完全にいる感じの演出だったので前半と後半でリアリティラインがチグハグになっていた印象。

あの人が消えた』もそうだけど、高橋文哉さん幽霊役多いな。。

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和正が美羽の妹の結婚式で「恋するフォーチュンクッキー」を歌い出したときには共感性羞恥で劇場でソワソワしてしまった。ティーン向けの恋愛映画より恥ずかしい。

和正だけでなく、母についても、認知症のわりには体の動きがキビキビしすぎていて少し違和感。

美羽のキャラにしても、人を刺し殺して埋めたばかりにしてはそこまで影がない感じなのが少し気になった。

ストーリーとしては(原作ありきなので仕方ないかもだけど)、内村家が東日本大震災でも被災し、熊本地震でも被災した設定がやりすぎだと思った。多聞がひかるを守って死ぬのもやりすぎていて現実味が薄い。

悪い言い方をすると、多聞がみんなを泣かせるための装置になっていた。多聞が忠義を尽くして死ぬ忠犬という記号的なキャラに成り下がっていて残念

多聞とひかる少年が幸せに暮らしました!でいいじゃない。

感動した部分もあるけど、演出やストーリーの突飛さにツッコミどころも多々あった映画だった。

わかりやすさ→つまらなさにつながる

内容やテーマ的に、もっとシリアスで説明を抑えたほうが良かった。

近年の感動系の邦画(もちろん良い作品もあるが)に漂っている、鑑賞者に対して「どうせ難しく作ってもわからないだろうからわかりやすくしてやるよ」的な感じが好きではない。

徹(斎藤工)が「ひかるがしゃべった。。。」とか言っちゃうセリフも見ればわかるんだからいらないでしょ。

5年しゃべらなかった息子が口を開いたときに「〇〇がしゃべった!」って説明台詞を言うか普通?クララが立った!じゃないんですけど…。

いちいち口で説明されると白けてしまう。視聴者をなめているのでしょうか(笑)。

言わなくても伝わる。それが日本の本来の美学だったはずでは?

同じく瀬々敬久監督と林民夫脚本コンビの『ラーゲリより愛を込めて』(2022)も説明しすぎが気になった部分はあった(本作よりはラーゲリの方が良かったけど)。説明セリフがくどいのは、わかりやすくするために意図的にやっているのだろう。

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映画『少年と犬』は、わかりやすく“がリアリティを損なうことに繋がっている→現在の邦画の問題点だと再認識させてくれた作品でした

2025年公開の邦画レビュー↓

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