『モアナと伝説の海2』(もあなとでんせつのうみ2/Moana 2)を鑑賞。最高の映像体験ができた。
ただ、ストーリーにはかなり?な部分や思うところがあった。前作が良過ぎたので期待し過ぎた面もあったが、それでもムムムとなる点も多かった。
物語のラストまでをネタバレありで解説。物語で伝えたいことはなんだったのかの考察、モアナ2の良い点と悪い点を忖度なしで書いていく。
『モアナと伝説の海2』登場人物・声優
モアナ(声-アウリィ・クラヴァーリョ/日本語吹き替え:屋比久知奈)
マウイ(声-ドウェイン・ジョンソン/日本語吹き替え:尾上松也)
モアナの航海クルーの新メンバー↓
船大工・ロト (右/ローズ・マタフェオ/鈴木梨央)
農夫のケレ(左/デヴィット・フェイン/山路和弘)
伝説オタクのモニ(後ろ/フアラーライ・チョン/小関裕太)
モトゥヌイ島の村人↓
トゥイ(モアナの父で村長)(声-テムエラ・モリソン)
シナニ(モアナの母)(声-コール・シャージンガー)
シメア(モアナの妹)(声-カリーシ・ランバート=ツダ)
タラ(祖母)(レイチェル・ハウス/夏木マリ))
ヘイヘイ(鶏-アラン・テュディック)
その他↓
マタンギ(アフィマイ・フレイザー/ソニン)
『モアナと伝説の海2』あらすじ
モアナは海や島々を冒険しながら、なぜ他の部族と交流がないのか?なぜ他の部族に会えないのか?と疑問に思う。そしてそれがモトゥフェトゥ島の呪いのせいだと知った。
いっぽうマウイは、モトゥフェトゥ島を沈めた神・ソロと対決するが…。
モアナはマウイやモトゥヌイを救うために冒険の旅へ出発する。
『モアナと伝説の海2』ネタバレ・ラスト結末
ネタバレ1:モアナは新たな冒険へ
前作から数年。モアナは船乗りとして大きく成長していた。さまざまな島へ行き、ある島で土器を発見して自分たちと違う部族の存在を知る。そして、なぜ他の部族と交流がないか不思議に思った。
島に帰ったモアナは歳の離れた妹・シメアと遊び、祖先が旅人だったことを伝える。
モアナは祭りでタウタイ(腕利の船乗り)の称号を与えられる。とつぜん空が曇り、稲妻に打たれるモアナ。意識を失っている間に、祖先のタウタイ・ヴァサの映像を見る。モトゥフェトゥ島へ行って呪いを解けば、他の部族と交流できるようになるらしい。呪いが解けずに他の部族と交流できなければモトゥヌイ島はいずれ滅んでしまうこともわかった。
モアナは、船大工のロト、農夫の老人・ケレ、伝説オタク・モニの3人を新メンバーに加える。そして鶏のヘイヘイ、豚のプアも連れて旅に出た。
ネタバレ2:マタンギ登場
モアナたちはカカモラたち(ココナッツの海賊)に襲われる。しかしカカモラたちもモトゥフェトゥを探していた。彼らも呪いを解いて自分たちの故郷に帰りたかったのだ。カカモラの1人の戦士がモアナたちに協力してくれることになる。
モアナたちは行手を阻む巨大な二枚貝に神経毒の麻酔を打ち、飲み込まれる。そして巨大な貝の体内で、マウイに再会した(マウイは嵐の神・ナロに捕まって閉じ込められていた)。
モアナは同じくそこに幽閉されているマタンギに会う。彼女は、「海に沈んだモトゥフェトゥ島をマウイに引き上げさせて上陸すれば呪いが解ける」と教えてくれた。
ネタバレ3:嵐の神・ナロと対決しモトゥフェトゥ島へ
モアナたちはモトゥフェトゥ島があったはずの場所へやってくる。海は嵐になり、ナロの紫の雷が襲ってくる。モアナたちはナロを引きつけ、その間にマウイが島を引き上げようとする。
しかしマウイは雷に打たれて引き上げに失敗。
モアナは海深く潜り、モトゥフェトゥ島にタッチ。呪いが解けるが、ナロの雷に打たれて心肺が停止した。マウイが祖先の歌を歌う、モアナの祖母や祖先のタウタイ・ヴァサが霊体として姿を現した。モアナは息を吹き返す。左手にはタトゥーが彫られていた。
マウイが釣り針で引き上げ、モトゥフェトゥ島が海上に姿を現した。海流が変わり、他の島の部族たちが船に乗ってやってくる。モアナは新しい人々と出会った。
モアナはモトゥヌイへ帰る。そしてまた新たな冒険へと旅立った。
『モアナと伝説の海2』考察:モアナは神になった?
マウイと先祖たちの歌によって息を吹き返したモアナの左手にタトゥーが現れた。
モアナは不思議な力を得たようだった。タトゥーはモアナが少しだけ神に近づいた証明だと思う。モアナもマウイと同じような半神半人の存在になるのではないか。
エンドロールの意味
モトゥフェトゥ島を復活させて他の島の人々との交流を復活させたモアナ。そしてモアナを敵視する神・ナロ…。なんだかアベンジャーズみたいな展開になってきた。
ナロが腹を立てているエンドロールは続編の『モアナと伝説の海3』への伏線だろう。続編ではモアナとマウイが本格的にナロと戦うことになるのだと思う。そしてマウイが自分を捨てた両親と再会する展開などがあるのではないか。
マタンギについては、ナロに弱みを握られているようだが、続編では味方になると考える。
タマトア(前作に登場した巨大なカニ)もナロのところにやってきたので、ヴィランの一員として加わるのだろう。
「ナロは陰謀論のメタファー」「ネットやコロナによる断絶」などテーマや伝えたいことについての考察はコチラ↓↓
『モアナと伝説の海2』感想
良かった点
多くの続編映画と同じく『モアナと伝説の海2』も普通の映画になってしまっていた印象。
まず映像はめちゃくちゃ良かった。紫色に光る玉をバックにしたマウイの登場シーンなんか痺れたし、タウタイ・ヴァサ(モアナの先祖)がジンベイザメとして姿を現しているシーンも惚れ惚れするほどに美しかった。
波の表現も最高。全画面がため息が出るほど美しい映像の美術館。アニメーションだけで言えば文句なしの100点満点だろう。
残念だった部分
前作の焼き直し
モアナが島を守るために冒険の旅に出るのも一緒だし、ココナッツの家族カカモラも登場するしで、ほとんど前作の焼き直しに見えた。
もともと本作は映画ではなくディズニープラスで放送される数話のアニメ企画だったようだが、映画として公開するにはストーリーに新しい要素やコンセプトが足りなかった印象。
前作のモアナがそのまま冒険するだけで、『モアナ2』というより『モアナ1.5』と表現したほうが近いと感じた。
海外の大手レビューサイト・ロッテントマトズの批評家評価が前作は95%だったのに対し、今作は62%で大幅に支持を下げている。
北米の興行成績は前作を超える勢いらしいが、それはシンプルに前作が良かったから見にいった人たちが多いだけで、作品の評価を反映しているわけではないと思う。
批評家のまとめコメントは「見事なアニメーションの波に乗っているが、ストーリーが漂流している」と皮肉られている。
新メンバー必要だった?
モアナの船の新メンバー、船大工のロト、農夫の老人・ケレ、伝説オタク・モニの3人は果たして物語に必要だっただろうか? ただ場をにぎわせるために登場させただけに思えた。
また老人のケレを入れることでディズニーが推し進めている多様性・ポリコレを担保させているようにも感じられた。
なぜ3人が必要なかったかというと、3人の性格や生い立ちなどに乗り越えるべき要素がないからだ。
物語に登場したはいいが、3人がラストまでで特に成長した様子はない。モアナが落ち込んでいるときに船を直しただけ。協調性が増したくらいで、ほとんど成長してないし変わらない。主要キャラのポジションにいるはずが、3人まとめてモブキャラ扱いだった(ちょっと可哀想)。
3人のバックグラウンドや成長した部分にもう少しスポットを当てるべきだったのでは?
3人が何を求めて旅をしているのか?キャラクターの掘り下げの描写を少しでも入れたほうが面白くなったと思った(尺の問題もあるが)。
ディズニーは映画『バズ・ライトイヤー』と同じ失敗を繰り返していると感じた(『バズ・ライトイヤー』も取ってつけたようなメンバーが気になる作品)。
モアナと一緒に豚のプアと鶏のヘイヘイ、カカモラの戦士もいるので、人間のクルーを加えるとしてもプラス1名で良かったのでは?
キャラ立ちしてるか微妙な3人ではなく、モアナの妹・シメアを連れていけば良かったじゃん。
成長譚として成立していない変な作品
1番残念だったのが、結局だれも成長してないじゃん…という問題。
先ほどのロト、ケレ、モニはもちろん。モアナ2ではモアナもマウイも成長しているように見えないのがストーリーの致命的な部分だと思った。
全体として「ありのままでいい!変わらなくていい!」というメッセージを伝えたいのだろう。近年のポリコレはこの傾向にある。それはそれで素晴らしいメッセージだし、ポリコレの全てが悪いわけではない。
ただ、登場人物が変わらなくてもいい!というのは、言い換えれば「じゃあ物語にしなくていいじゃん。映画にしなくていいじゃん…」という話になる。
前作はモアナとマウイの心の成長がひしひしと感じられた。しかし2では2人とも人格が完成されていて特に直すところがない。
ありのままでいい!というテーマはディズニーらしいが(『アナ雪』も『ウィッシュ』もそんな感じだよね)、それがディズニーのコンテンツを縛っていると思う。近年のディズニー作品低迷の大きな理由をモアナ2に見た気がした。
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