実写映画『はたらく細胞』(CELLS AT WORK!)を劇場で鑑賞。
良い部分と悪い部分がハッキリした人を選ぶ作品だと感じた。良い点と残念な点を解説していく。
ストーリーあらすじネタバレ解説もあり。ラスト結末のネタバレにも触れる。
後半は完全に忖度なしの感想レビューなのでご注意。「ネット上の賛否の意見」もまとめてみた。
実写映画『はたらく細胞』あらすじ
あらすじ:新米の赤血球(AE3803/永野芽郁)は、肺に行くまでの道で迷って肺炎球菌に遭遇してパニックになる。白血球( U-1146/佐藤健)が肺炎球菌を切り裂いてピンチを救ってくれた。
赤血球は「助けてくれてありがとう…」とお礼を言う。実は赤血球(AE3803)と白血球(U-1146)は、赤血球がまだ赤芽球だった頃に出会ったことがあった。
赤血球は、白血球、キラーT細胞(山本耕史)、NK細胞(ナチュラルキラー細胞/仲里依紗)がカッコよく外敵と戦っているのを見て、自分はなんのために働いているのだろう?と存在意義に揺れるのだった…。
人間の世界:漆崎日胡(うるしざき にこ/芦田愛菜)の体内では、赤血球(AE3803)や白血球( U-1146)が懸命に働いている。
日胡は父・茂(しげる/阿部サダヲ)が不摂生な生活をどうにかやめさせたかった。日胡のおかげで茂の体内環境は良くなっていくが、日胡が突然体調を崩し…。
ネタバレ・ラスト結末までの解説はコチラ↓
実写『はたらく細胞』キャスト
実写映画『はたらく細胞』ネタバレあり感想
良かった点:ビジュアル
アニメや原作もそうだけど、自分の体の中の細胞が擬人化されることで、体に対して感謝の気持ちが生まれるコンセプトは本当に素晴らしい。
アニメを少し見た程度のニワカな自分からしたらキャストは豪華で良かったと思う。赤血球の永野芽郁さんはキュートで良かったし、クールで残酷な白血球を演じた佐藤健さんもハマっていた。
松本若菜さんが演じたマクロファージも美しかったし、後半は強キャラ感が漂っていてかっこよかった。
全体的にビジュアルは良かったと思う(コスプレ感ゼロとは言えないが)。
あとはエンドロールで芦田愛菜の受験対策ノートでキャラクター紹介している演出は良かった(絵がうますぎ、そんな細かく描く時間あったの?というツッコミは置いておいて)。
ひどかった点
子供たちが楽しめる内容ではあるのだろうけど、正直ストーリーに関しては大人の私が見て面白いと思える要素がほとんどなかった。
悪く言えばコスプレ出オチ映画で、体内の細胞を豪華キャストがこんなビジュアルで演じてるんだ〜という以外に楽しめる部分がなかった。出オチがピークみたいな作品。
笑えない
武内英樹監督は『テルマエロマエ』『翔んで埼玉』『もしも徳川家康が総理大臣になったら』など、登場人物が多い“わちゃわちゃ系”を実写化することに長けた人物。映画でボケまくってツッコミまくって笑わせてくれる監督だった。
しかし今作『はたらく細胞』ではそこまで笑えるシーンがない。みんなクソ真面目すぎてシュールで笑える!かと思いきや、そこまでこみ上げてこない。
笑いの数が違ったら印象が全然違う作品になっていたと思う。
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キャラが多すぎて共感できない
キャラクターが多すぎるし、さらに体内細胞パートと人間パートでシーンの切り替わりも多いので、それぞれの登場人物への感情移入がしづらいのが映画として問題だと感じた。
ぶっちゃけ主人公の赤血球(永野芽郁)にも、白血球(佐藤健)にも、人間の日胡(芦田愛菜)にも感情移入できなかった。
それぞれのキャラのストーリーがはしょられているからだ。
共感できたのは「立派な白血球になりたい!」と言っていたが異常があって闇落ちした白血病細胞(Fukase)と、娘が病気になって必至に励ましていた茂(阿部サダヲ)くらいかな。
ニコとアラタのとってつけたような高校生同士の恋愛も微妙だった。
ゲーム性やスリルがゼロ→間延び
ゲーム性や緊張感がなかったのも非常に残念。そのせいで後半に展開が壮大でピンチになればなるほど間延びして眠くなった。
まず時間や空間についての説明がないので、赤血球が適当に移動しているようにしか見えなかった。時間的な制約がある“働き”ではなく、情熱で突っ走っているだけ。
「何分でこの場所まで行って酸素を供給しなければならない…」「何日で白血病細胞を殺さなければ放射線治療が始まって体内世界が…」などの時間的な制約をサラッとでも説明していればもう少しスリルが出たと思う。
空間についても細胞にとって体内は超(腸)広いはずなのに、行きたいところにサクッと言っているような感じが気になった。移動時間は短くていいけど、もっと長い距離を移動しているように見せてくれた方が臨場感が出たと思う。
セットとセットを移動している感じしかない。
全体的に主要キャラである赤血球、白血球、キラーT細胞、NK細胞らが都合よく適当に動いているようにしか見えなかった。敵を倒すところにゲーム性を出せたらもっとエンタメとして楽しめたと思う。
アクションに見応えがない
実写『るろうに剣心』のようなワイヤーっぽいアクションが個人的に退屈だった。佐藤健さん繋がりで同じスタッフなんだろうな…と思っていたら、やはり「るろうに剣心」シリーズの大内貴仁さんがアクション演出に起用されていた。
この手のアクション好きな人もいるのかもしれないが、現在はハリウッドや韓国など世界ではリアリティがあってかつアクロバティックなアクションが主流になっているので、ちょっと時代遅れだと感じてしまった。
アニメだと白血球はもっとリアルに怖い感じで敵を殺していくのに、実写だとチャンバラしているだけに見えた。
年齢制限がある関係で血がブッシャーとかできなかったんだろうな。
アクションシーンが結構長いので、この手のアクションが好きでない人にとっては退屈だったと思う。
ラスト結末のチグハグ感
- 日胡(芦田愛菜)が白血病になる
- 放射線治療で頑張って働いていた細胞たちがほぼ全滅
- 白血球(佐藤健)は白血病細胞を倒して死亡
- 赤血球(永野芽郁)も放射線で死亡
- 日胡が生き延び、新しい骨髄から赤血球や白血球が転生(したように見える)
なんと赤血球(永野芽郁)や白血球(佐藤健)も全員死亡してしまう。
たとえ未来がなくても自分たちの使命をまっとうする。最後まで戦い続けるというシリアスで大人向けの素晴らしいテーマだった。
ただやはり、登場キャラクターに強い感情移入ができないせいでシリアスな展開で大きく感動できずチグハグ感が残った。
こんな真剣なテーマに向き合う雰囲気じゃなかっただろ…。序盤にはしゃいでいた子供の観客たちはラスト見てどう思うんだろ? 子連れのお母さんたちは「赤血球(永野芽郁)は放射線で死んだんだよ」って説明するの?
子供向けの部分と大人向けの部分が上手く調和していない印象だった。
あとは考えすぎかもしれないけど、赤血球たちが死滅したあとに登場した天使のような風貌の骨髄ちゃんが外国人の少女だったのがひっかかった。
なんか欧米に侵略されている感じが出ていたからだ。西洋医学や西洋文化に染まった日本のメタファー(悪いことではないと思うけど)に見えてしまった。
ネットの賛否はこんな感じ
ネット上では私の感想と違ってかなり肯定派が多かった印象(楽しめたならそれが1番)。目立たコメントを掲載しておく↓
肯定派の意見
『はたらく細胞』感想
前半はお祭り、後半は戦争映画
このコミカルなキービジュアルから想像付かないくらい後半はシリアス全開の展開。
武内監督ってこんな作劇も出来ることに驚きを隠せなかった。
これは作り手が観客に本気で身体を大事にして欲しいメッセージ性が詰まってると自分は思ったよ。 https://t.co/73uiOrfF6L pic.twitter.com/PITc0vKVEc
— かっか (@VbXiqGBbW34vdTe) December 14, 2024
12/13公開『はたらく細胞』試写感想。素晴らしかったですわ…カリカチュアした世界と設定をここまで作り込み、これだけの豪華俳優陣とエキストラを集結させて、アクションも含め本気で作った「実写化」の試み、そして人間の世界の連動の意義に、笑いを超えた感動があったよ!
※WBの招待で鑑賞… pic.twitter.com/hYTG1WFCp3— ヒナタカ@映画 (@HinatakaJeF) November 27, 2024
否定派の意見
『はたらく細胞』映画にするには題材が難しかったな……というのが正直な感想。もちろんこの制作陣なので、凡百の実写化作品とは異なりビジュアル化/物語化の再構築を施しているのだが、「体内作用の擬人化を面白がる作品で、ウェットな人間ドラマは発生し得ない」という根本的問題が解決できなかった
— しの (@mouse15278) December 14, 2024
実写版はたらく細胞
欲張りすぎてテーマが散らかっているのと、舞台の映像化のようなセットと大袈裟な演技が気になりました。
現実パートとの差別演出なのはわかるんですがね。
あくまで個人的な感想ですが、自分には合いませんでした。#はたらく細胞 #映画はたらく細胞 pic.twitter.com/4FZJqzkRqU— のぶと (@agjupddwt) December 15, 2024
まとめ
忖度なしでいうなら、『はたらく細胞』は完全にNot For Meな作品だった。
体内のことを勉強できて感謝の気持ちも生まれて、キャストのビジュアルも面白いけど、1本の映画としては突き抜けた部分のないコスプレ勉強映画に見えてしまった。
『翔んで埼玉』ばりにギャグ全開にしたほうが良かったのでは!?
2024年日本作品レビュー↓
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