Netflix映画『フランケンシュタイン』考察&ネタバレ感想,ギレルモ・デル・トロ版の解説2025

5.0

ギレルモ・デル・トロの新作映画『フランケンシュタイン』2025

ギレルモ・デル・トロの新作映画『フランケンシュタイン』を鑑賞!!

古典名作が現代に蘇った珠玉の映像美。私の想像を超える強烈なメッセージ性に心を打たれた。

  • あらすじ・ネタバレラスト結末の解説
  • 本作の深いテーマ
  • ギレルモ・デル・トロ監督が伝えたかったこと

これらについて徹底考察していきます!

映画『フランケンシュタイン』あらすじ(2025)

1857年。北極で倒れているところをアンデルセン船長に発見されたヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)は、怪物を創造してしまったすべての経緯を話し始める。

野心的な外科医ヴィクター・フランケンシュタインは、死と生命の境界を越える研究に執着していた。彼は幼少期に、弟・ウィリアムの出産で母を失い、父による弟ウィリアムの優遇を目の当たりにして育った。ヴィクター少年は「死を克服し、人間を創造する」ことを決意する

ヴィクターはクリミア戦争で犠牲となった兵士や死刑囚の遺体を、彼は電気とリンパ系の流れを用いて再構築し、死から復活させた生きた肉体を創り上げた。だが、その創造物=“怪物(クリーチャー)”は想定外の知性と感情を持ち、ヴィクターの制御を超えて暴走を始める

怪物は森に逃れ、老盲人との静かな交流を通じて“人間らしさ”を学び、自分が一人きりであることに気づく。そしてウィリアムと婚約者エリザベス(ミア・ゴス)の結婚式の夜、創造主ヴィクターに“伴侶”の創造を迫るが拒否されてしまい…。悲劇が巻き起こった。

映画『フランケンシュタイン』ネタバレ・ラスト結末の解説

怪物は「死ぬこともできないからせめて伴侶を作ってほしい」と言う。ヴィクターは「もう怪物を作るのはごめんだ」と断り、怪物に向けて銃を撃つ。エリザベスが怪物をかばって銃弾を受けた

怪物は飛びかかってきたウィリアムを吹き飛ばした。ウィリアムは頭部から血を流し、ヴィクターに「怪物は兄さんだ」と言って死亡

怪物は瀕死のエリザベスを抱いて洞窟へ。エリザベスは怪物に「言葉では言い表せないものをあなたの中にみた」と言い残して死亡

怪物は北へ向かう。ヴィクターはどこまでも怪物を追っていった。北極についたヴィクターは怪物に襲われ、ダイナマイトを出す。怪物はそれで死んでみようと試みるが、死ねなかった。

ヴィクターはアンデルセン船長と船員に助けられる。ヴィクターはこれまでの話をアンデルセン船長に聞かせた。怪物も船の中に入ってきて自分のこれまでの話を聞かせる。

ヴィクターは「すまなかった息子よ」と語る。怪物はヴィクターを許すと言う。

ヴィクターは死に、アンデルセンたちは船で故郷へ戻る。

怪物は北極に残り、日の出を見て涙する

『フランケンシュタイン』感想と考察まとめ:ギレルモ・デル・トロの真意は?

ヴィクターと怪物の関係

ヴィクターと怪物

©︎Netflix

オスカー・アイザック演じるヴィクターは、傲慢さと絶望を同時に抱えた人物として強烈。

ジェイコブ・エロルディ演じる怪物は、肉体の恐怖を超えて“美しさ”と“悲しみ”を兼ね備えた存在として描かれている。

この2人は創造主と創造された者として、さまざまな事柄のメタファーとして機能している。

ヴィクターと怪物は、そのまま神と人類の関係(聖書における)を表している。ヴィクターが怪物を作ったことを後悔しているように、神も人間を作ったことを後悔しているのでは?という問いかけがあった。

また、物語の最後にヴィクターが「息子よ」と言ったように。父と息子の関係があった。

ヴィクターは父が母を殺した(と思っている)と憎み、良い関係を築けなかった。母を奪った“死”を克服するために怪物を作った。しかし、その裏に父への憎悪があったために誕生した怪物を愛することができなかった。

ヴィクターは怪物と、父と息子の健全な関係を築けなかった。

あとは、怪物=自らの認めたくない負の感情が分離したものにも見えた。
ヴィクターが怪物を監禁したのは、己の負の感情の具現化を直視できなかったからではないだろうか。

怪物の人間離れした容姿に関してはヴィクターの狂気が肉体を持ったようでもある。

母を失った絶望、そして父が母を殺したと憎む気持ちがヴィクターの中に燻り続け、その感情が怪物として具現化された。しかし、負の感情それ自体は純粋なもので、存在する権利がある。

最後に、バイロン卿の言葉「心は壊れても、壊れたまま生き続ける」の言葉が映し出されたが、これには負の感情として生まれた怪物も生きるしかないという真理が込められていると感じた。

エリザベスと怪物の関係

エリザベスと怪物の関係は、同じくギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』における主人公と半魚人の関係に近いと考える。

エリザベスは蝶や虫について「神が与えた生命のリズムを刻んでいる」と語っていた。
また彼女は「概念は意味を持たない。名誉や国などの概念はそれ自体は美しいが、それに踊らされて戦争で汚い死に方をしている…」と哲学的な真理も語っていた。

これらのセリフから、エリザベスが純粋無垢な存在を求めていることがわかる。

怪物は概念から生まれた汚い戦争の遺物だが、怪物自体は美しい心を持っている。エリザベスはその再生・サイクルに希望を見たのだろう。

エリザベスが怪物から受け取ったカエデの葉も、生命サイクルの象徴のようだった。

情景から湧き上がる寓意

オスカー・アイザック

北極の氷海、戦争と遺体――これらのシーンがただの美しい背景ではなく、孤独や再生といったテーマの象徴としても機能している。

北極はヴィクターと怪物の孤独を強調し、そしてアンデルセンが象徴する人類にとって踏み入ることができない未到の領域を示していた。そんな人類にとっての絶望の地・北極でヴィクターと怪物が和解したところに物語としての重みがある。そこにある種の希望も示されていると感じた。

怪物については、戦争の遺体から作られていることに注目したい。戦争は人類最悪の罪である。その罪から生まれた存在が人間性を獲得し、自分に酷い仕打ちをしたヴィクターを許すところもまた希望の表現なのではないか

傷がすぐ治ることに関しても、戦争の傷跡を時間が消し去ってしまう希望と絶望が混在しているようだ。

感想まとめ

ミア・ゴス

ギレルモ・デル・トロ監督の職人技がたっぷり詰まった極上の芸術を堪能できる2時間半だった。

言葉で語ると陳腐になってしまうほど芸術性やメッセージ性に優れた傑作だった。5点満点中だと5点。セリフも哲学的で、思考が追いつかないほどだった。

ギレルモ・デル・トロ自身が「30年かけて作りたかった作品」だと明言しており、彼の美学が凝縮されていた。彼の最高傑作と言っても良いと思う。

映像や怪物の造形がもたらすある種の知性に圧倒された。どのセリフも極上だったが、語らずとも映像に没頭すれば伝わってくるものがあった点が素晴らしいし、それこそが映画の醍醐味だと思った。昨今は特に邦画など説明過多で興醒めしてしまうものも多いが、その対極にある芸術作品だった。

ラストは怪物が北極点で日の出を眺めるシーンだったが、日の出に涙する=怪物が人間だという証明になっていた

“人間の死”から作られた怪物が、日の出という生命の源の尊さを知る。最後のシーンに、命とは何か?の問いに対する答えが詰まっていた。

ギレルモ・デル・トロは怪物こそ聖人のような存在だと語っており、希望だけでなく人間以外の存在が1番人間性を持っている皮肉も垣間見える。

映像は19世紀ヨーロッパを舞台に濃密な色彩が選ばれ、「ただの時代劇ではないモダンな怪談」として設計されている。ミア・ゴスの衣装など、ディティール全てが素晴らしすぎる。

メイク・造形・スタジオ撮影により、CG一辺倒ではない怪物のビジュアルも高く評価されている。怪物が初登場したシーンで目がギョロっとしている絵が本当に素晴らしかった。

また、メアリー・シェリーの原作への忠実さを保ちつつも、デル・トロは「異邦者」の物語として「創造主」と「創造された者の関係」を、より情動的・倫理的に掘り下げている。

「何が人間性を構成するか」「創造者が犯す罪とは何か」という古典的テーマが、デル・トロならではの叙情性で再構築されていた。

最近だとNetflixの『ギレルモ・デル・トロ 脅異の部屋』も本当に素晴らしいアーティスティックなホラーだった。Netflixとデル・トロのいい感じでズブズブな関係を今後も続けてほしい。

ありがとうギレルモ・デル・トロ!長生きしてくれよ!

ギレルモ・デル・トロ監督の過去作品のレビュー↓

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作品情報・キャスト

項目 内容
タイトル(原題) Frankenstein
日本語仮訳 『フランケンシュタイン』(2025年公開)
監督・脚本 ギレルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)
原作 Frankenstein; or, The Modern Prometheus(メアリー・シェリー著 1818年)
製作・配給 米国/カナダ、スタジオ「Double Dare You」「Demilo Films」「Bluegrass 7」他。
配信:Netflix
公開日/上映時間 Netflix配信予定:2025年11月7日
上映時間:150分(2時間30分)
役名 役柄 俳優
ヴィクター・フランケンシュタイン(Dr. Victor Frankenstein) 死を克服せんとする天才外科医。創造の罪と向き合う。 オスカー・アイザック(Oscar Isaac)
クリーチャー(The Creature/フランケンシュタインの怪物) ヴィクターによって“生命”を与えられた存在。深い孤独と知性、感情を抱える。 ジェイコブ・エロルディ(Jacob Elordi)
エリザベス(Elizabeth) ヴィクターの弟ウィリアムの婚約者。ヴィクターの創造に直接巻き込まれていく。 ミア・ゴス(Mia Goth)
ハインリヒ・ハーランダー(Henrich Harlander) 武器商人。ヴィクターの研究資金を提供し、創造実験に深く関わる。 クリストフ・ヴァルツ(Christoph Waltz)
この記事を書いた人

映画やドラマの考察歴5年。映画好き歴20年。映画鑑賞累計2000本前後。ドラマは数百本。Webライター歴8年。いくつかのメディアでの執筆歴あり。映画やドラマの本質を追求するような解説や考察が書けるように日々精進しています。パーソナルな感想に普遍的な何かが少しでも宿っていれば幸いです。

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