
映画『あんのこと』を鑑賞。実話をもとにしたかなり生々しい内容で、心がずっしりと重たくなった。河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎の3人の関係の儚さに心をズタズタにされる傑作。
映画『あんのこと』あらすじと相関図

21歳の女性・杏(河合優実)が薬物使用の罪で警察に捕まる。
杏は幼い頃から母親に暴力を振るわれ、義務教育を途中でやめて12歳で母に売春を強要され、14歳になる頃には裏の世界の客に覚醒剤を覚えさせられた。
杏は取り調べでアウトローな刑事・多々羅(佐藤二朗)から、シャブをやめたかったら協力すると言われる。杏に手を差し伸べてくれたのは彼が初めてだった。
多々羅は杏を元薬物中毒者たちを救う会に連れてくる。多々羅はその会の主催者で、元患者たちの社会復帰の支援をしていた。記者の桐野(稲垣吾郎)が救う会の取材をしている。
杏は真面目に働こうとするが、家に帰るとまた母・春海から暴力をふるわれて金を巻き上げられ絶望。
多々羅は、杏に家庭内暴力の被害者をかくまうアパートを紹介して一人暮らしをさせた。
杏は桐野の紹介で老人介護施設で働くことになる。真面目な仕事ぶりが評価された。初給料で、多々羅と桐野と一緒に酒を飲む杏。夜間中学も行き始め、勉強も頑張っていた。しかし桐野の調べで多々羅の裏の顔が明らかになる。
新型コロナが流行し、杏は職場にも人員削減でいけなくなり、中学の授業も無くなった。杏は孤立し、そこへまた母親がやってくる…。
ネタバレ感想:ハッピーエンドを願わずにはいられなかった…
傑作だけど胸が本当に苦しくなって寝込みそうになった。
序盤から中盤にかけて、杏と多々羅、そして桐野の3人の関係が美しくて、このままハッピーエンドで終わってくれ…と願わずにはいられなかった。
しかし雲行きは怪しくなり、多々羅が救済の会の女性に手を出していることが判明。そして杏がどんどん坂道を転げ落ちていく鬱展開。見ていて頭を抱えそうになる。
杏が同じアパートに住む紗良から幼児の隼人を押し付けられて、隼人の世話をするシーンだけが救い。しかし実話をなぞったラストには絶望…。これほど見るのが辛い映画は久しぶり。
河合優実の演技について、日本アカデミー賞受賞
『あんのこと』によって河合優実は第48回日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞したが、それだけの演技をしていたと思う。
河合優実演じる杏は自分の意思ではなく、どこか社会の理不尽さに流されて生きているような表情を浮かべていた。圧倒的に「実話なのだ」と思わせてくれる何かがある。
もうすでに日本を代表する俳優の仲間入りをしていると言っても過言ではないだろう。
実話をベースにした『あんのこと』だが、河合優実はじめキャストの演技によってまるで本当にあった出来事をそのまま見ていた気にさせられた。
次のページでは、実話・ハナ(仮名)の解説や映画との違い、杏と多々羅と桐野の3人の関係性について深掘り考察していく↓
河合優実の主演作『ナミビアの砂漠』ついての考察&解説記事↓
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