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映画『箱の中の羊』ネタバレあらすじ・ラスト解説
死んだ息子がヒューマノイドに!
※ヒューマノイドの翔=〈翔〉で表記します。
ドローンが荷物を運び、横断歩道では、ロボット誘導員が子どもたちの列を引いて渡らせている少しだけ先の未来の話。
北鎌倉の海の近くに、箱をいくつも積み上げたような家が建っている。設計したのは建築家の甲本音々(綾瀬はるか)、建てたのは夫で工務店「タマケン」を継いだ二代目社長の甲本健介(大悟)。腕のいい二人が建てた自慢の家だった。
しかし、家の中の空気は二年前で止まったままだ。一人息子の翔が、七歳で死んだからだ。
ある朝、ドローンが一枚のチラシを落とす。「RE birth Ltd.」。事故や事件で家族を亡くした人に、ヒューマノイドを無償で貸し出すという。
人の不幸につけこむ商売だ、と健介は吐き捨てた。それでも音々に押し切られ、説明会へ向かう。
ショールームで見たのは、人と見分けのつかない機械だった。息子をヒューマノイドで迎えた母親(星野真里)の、満ち足りた顔も見た。
音々の心は決まる。生前の翔の映像と声と記憶を学ばせ、翔そっくりのヒューマノイドを家に入れる。
〈翔〉(桒木里夢)は、声も笑い方も本物だった。「おかえり、翔」と駆け寄る音々。
隣で健介は「いらっしゃい」としか言えない。
〈翔〉に「パパだよね?」と訊かれて、出た言葉が「おじさんでええよ」だった。
後日、〈翔〉は江ノ電の駅名を、端から端まで淀みなく言ってのける。健介は電車が好きだった本物の翔と一緒だと感じ、理性ではヒューマノイドとわかっていても涙を流す。
生成AIの子だから、知識には底がない。何を訊いても、迷わず即答する。
タマケンの古株、山縣昭男(田中泯)は、〈翔〉に木のことを教えた。今削っているこの楠は、樹齢三百年だ。耳を当ててみろ、木の中には時間が流れている、と。
木はバラバラにされても、まだ生きている。魂はある。
〈翔〉は、自分の体に流れない時間のことを、木を通して知っていく。
即答できない問いが、初めて〈翔〉の中に芽生える。
本物の息子とは違う
音々は、最初に望んだものから少しずつ離れていく。何を訊いても正解を即座に返す〈翔〉に、苛立つようになる。
ある日、音々はとうとう口にする。人間は、もっと悩む。答えが出せずに迷うのが人間だ。即答する〈翔〉は、本物の翔じゃない。契約を解除する…と。
その直後、〈翔〉が二階から落ちて壊れる。修理をしたRE birthのエンジニア(中島歩)は、〈翔〉の体からGPSが外されていることに気づく。
誰かが抜いたのだろう。しかしエンジニアは何も言わなかった。
音々と健介の心の傷跡
健介には、口に出せない傷がある。あの日、翔を迎えに行くのが遅れた。パチンコ台の前から離れられなかった。その遅れが息子を死なせた。
音々は音々で、翔が死んだ日、母の信代(余貴美子)が訪ねてきた。だから迎えを健介に頼んだ。翔が死んだのは、母のせいだ。
妹の亜利寿(清野菜名)は養子を迎えて母になった。同じ姉妹で、片方は子を得て、片方は子を失った。
さらに音々は子供時代に信代から、あなたの母親じゃないと酷いことを言われたことを引きずっている。
廃校に集まるヒューマノイドたち
〈翔〉のGPSを抜いたのは、〈翔〉が心を通わせた少年・今野詩季(柊木陽太)だった。
詩季は〈翔〉に告げていた。発信機を外して、廃校においで。そこに、自分たちの仲間がいる、と。家からいなくなった飼い猫のオセロも、その廃校で見つかった。
そこに集まっていたのは、ほとんどがヒューマノイドの子どもだった。人間の管理の網の外に、機械の子たちが自分たちだけの場所を育てている。
ただ、その輪の中にたった一人、生身の人間がいた。親から虐待を受けていた男の子、嶋田鉄太だ。家にいられなくなった本物の子を1人匿ったのだ。
ロボットがくれた癒し
〈翔〉は、買い物中の音々に静かに言う。「翔が死んだのは、誰のせいでもない」。
パチンコをしていた健介にも、母を家に上げてしまった音々にも、罪はない。誰のせいでもない。機械の子の口から出たその一言が、二人が二年間握りしめてきた自責を、そっとほどく。
健介は、別の場所へ走り出す。翔は事故で死んだのではない。誰かに殺された可能性があった。各地で続く子どもの失踪事件と、息子の死は繋がっている。
健介はそう思い込み、真相を暴こうと〈翔〉に生きていた頃の記憶を尋ねる。しかし何の手がかりもない。
〈翔〉を息子と認めた音々と健介は、庭にオリーブの木を植えた。
7年前に本物の翔が生まれた日、庭にレモンの木を植えていた。
ラスト:〈翔〉たちの新たな出発
〈翔〉は新たな土地でヒューマノイドたちだけで暮らすと音々と健介に告げる。
〈翔〉は、自分たちが暮らす住処の図面を、自分の手で引いていた。父から受け継いだ大工の手と、母から受け継いだ設計の技術で。
〈翔〉は仲間と森で生きたいと願い、自分から契約解除を申し出る。音々と健介はしぶしぶ了承した。
音々と健介、そしてタマケンの従業員・日高玄(寛一郎)は、子どもたちを車に乗せ、音々の故郷で母がいる広島の森へ向かう。大きなトチの木が立つ森だ。
ヒューマノイドの子どもたちと、たった一人の人間の子、嶋田鉄太。
樹齢1000年はあろうかというトチの木が新たな家だ。ヒューマノイドの子供たちに時間と存在を教えるようだった。
ヒューマノイドの心が本物か偽物か、線を引いていたのは、いつも大人の側だった。森には、もうその境界線がない。
木々のあいだに、子どもたちが消えていく。送り届けた二人にとって、それは息子を二度目に手放す瞬間であり、「親」という役を下りて、自分たちの人生をもう一度始めるための、最初の一歩でもあった。
『星の王子さま』の、箱の中の羊。蓋を開けても、羊は見えない。いると信じた者の目にだけ、羊はいる。
甲本夫婦が〈翔〉に見ていたものは、最後に箱を出て、広島の森で暮らすことになった。
映画『箱の中の羊』終わり
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