映画『宝島』ネタバレラストの意味考察,死のメッセージ解説

3.5

映画『宝島』(HERO's ISLAND)

映画『宝島』(HERO’s ISLAND)のあらすじネタバレ・ラスト結末をまとめました!

ラストの本当の意味、死によるメッセージについて徹底考察

映画『宝島』ネタバレあらすじラスト結末

公開:2025年9月19日
長さ:191分
監督:大友啓史
脚本:高田亮、大友啓史、大浦光太
原作:真藤順丈
製作費:25億円
音楽:佐藤直紀
撮影:相馬大輔
編集:早野亮
制作会社:クロスメディア

戦果アギヤー、オンの失踪

1952年、米軍統治下の沖縄。物資の不足が大きく、貧困にあえぐ住民たちが多い。そんな中、米軍基地から物資を盗み出して貧しい人々に分け与える若者たち「戦果アギヤー」というグループが活動していた。ヒーローのように扱われ、希望の象徴となっている。中心人物はオン(永山瑛太)、そして幼なじみのグスク(妻夫木聡)、オンの弟のレイ(窪田正孝)。オンたちは嘉手納基地への襲撃を企てる。オンの恋人のヤマコが米軍基地に入ったオンたちの無事を金網の外から祈る。

しかし米兵たちに見つかって失敗。オンはグスクたちに先に行けと言った。グスクは走って逃げ、サガリバナの下の御嶽(うたき、霊力が高い拝む場所)のようなところで体を横たえる。そして突然、どこからか女性の叫び声を聞いた。レイがやってくるが、彼は米兵に捕まる。グスクはどうにか基地の外に逃げ切った。

レイは刑務所に入れられた。リーダーのオンはそれから行方不明になった

6年後、それぞれの道と最悪の事故

グスクはオンを探すために刑事になり、彼の情報を集め続けていた。沖縄では米兵による婦女暴行や殺人事件が頻発していた。グスクはたとえ犯人を挙げたとしても沖縄の警察が逮捕できず、基地に連行されてしまう現実に嫌気がさしていた。グスクは米諜報部のアーヴィン・マーシャルと手を組んで、凶悪事件を起こす米兵を次々に逮捕していった。

レイは怒りと復讐心を抱え、ヤクザのような裏社会へ入り、暴力的な道を選ぶ。やがて刑務所仲間のタイラ(尚玄)と一緒に女性を連れ込もうとする米兵に制裁を加えるようになった。

ヤマコは恋人・オンを探し続けていた。ヤマコはスナックで米兵の相手をしながらたくさん勉強して教師になる。そしてオンの帰りを信じながら、宮森小学校で新任教師として生徒と触れ合う。

ある日、宮森小学校に米軍の戦闘機F-100Dが墜落。小学校の建物は倒壊して火事になる。ヤマコは、オンがいつか小学校を建てると言い、自分が教師になると夢を語り合った日々を思い出して叫ぶ。やってきたグスクに助けられた。墜落で小学生11人が犠牲になる。付近の家屋も何十軒も破壊され、一般住民6人が死亡。全部で210人が重軽傷を負う大惨事となった。

身寄りのないハーフの少年・ウタがヤマコに花を渡してなぐさめる。

戦闘機の墜落事故以降、ヤマコは米軍基地反対と本土復帰を目指すデモに積極的に参加するようになる。

レイは兄・オンを密輸業者に売ったのがヤクザの辺土名(村田秀亮)だと知り、彼を滅多刺しにして殺害。返り血を浴びた姿でヤマコに会いに行き、俺を愛してくれと抱こうとする。ヤマコはレイから「恋人オンと同じ匂いがする。抱けばいい」と言った。兄の姿を重ねられたレイは動揺して退散する。

ラスト結末:予定外の戦果とオンの運命

さらに数年が経過。沖縄県民は、米軍基地・知花弾薬庫に毒ガス兵器が隠されていたことを知り、怒りの抗議デモをする。米軍はジョンストン島へ兵器を移動した。

グスクは軍関係者から拷問を受け、彼らが基地から予想外の戦果を持ち帰ったオンを探していると知る。コザでは米軍人が一般人を車で轢いて逃亡しようとする事件が発生。住民たちが怒り狂い、米車両をひっくり返して燃やしていくコザ暴動が起こった。グスクは「なんくるならんど〜!」と叫ぶ。

グスクは基地に侵入するレイを発見して彼を追う。レイは、米軍の関係者を拉致してVXガスを作らせ、そのガスで軍関係者を大量殺戮するテロを犯そうとしていた。グスクが彼を止める。ヤマコとウタがやってきた。米軍たちに囲まれる。ウタはレイをかばって撃たれる。グスクたちはウタを担ぎ、アーヴィンに見逃してもらって基地の外へ出ることに成功。

ウタは自分が助からないことを悟って浜に車を向かわせる。そこには白骨死体があった。服からオンの遺体だとわかる。

当時、オンが基地から持ち帰った「予定外の戦果」とは、生まれたての赤ん坊。オンたちが嘉手納基地に侵入した日、ある女性が軍人の恋人を探して基地内にやってきた。そこで出産して死亡。オンは死んでいる女性と生まれたての赤子を見つけ、彼を連れ帰った。しかし辺土名に見つかって離島で密輸業者の手伝いをさせられることに。オンはそこで働かされながら、ウタを育てていた。しばらくしてその離島が襲撃される。オンは撃たれながらもウタを連れて船に乗り込み、本島まで逃げる。しかし浜で死亡した。

ウタも力尽きる。

その後、グスクやヤマコたちはオンの葬式を行った。レイが遠くから見守る。

映画『宝島』考察:ラストの本当の意味

ラストではウタが死亡し、オンの遺骨が発見される。

死んだオンは、古き良き沖縄を象徴していたように思える。グスク、ヤマコ、レイの3人がオンを探していたが実際は死んでいた。これは、ずっと探し求めていた古き良き沖縄がすでに失われていることを暗示しているようですごく切ない

ウタは、グスク、ヤマコ、レイの3人がオンを探しているのを知り、オンが死んだと伝えたらこの3人の絆は失われてしまうと考えて、真実を伏せてきたのだろう。

撃たれたウタは「自分が死んだらオンについての真相を知る者がいなくなる。グスクもヤマコもレイも一生真実を知ることはできない…」と考えて、病院でなく浜を目指してくれと言ったのだと考えられる。

ウタはグスク、ヤマコたちの次の世代の若者であり、ハーフということもあって沖縄県民と米軍人が平和に暮らす未来の象徴でもあった。

しかしグスク、ヤマコ、レイの絆が失われたせいで、オンが必死に守ったウタが死亡。この結末は非常に重い。

現実でも基地賛成派と賛成派などに分断されている沖縄県民。『宝島』のラストでは、沖縄県民同士で団結せずに争ってしまったら宝物を失ってしまう…そんな暗示がなされていた

今だからこそ受け止めなければいけない結末だ。

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キャスト

役名 キャスト
グスク 妻夫木聡
ヤマコ 広瀬すず
レイ 窪田正孝
小松 中村蒼
チバナ 瀧内公美
タイラ 尚玄
ダニー岸 木幡竜
謝花ジョー 奥野瑛太
辺土名 村田秀亮
アーヴィン・マーシャル デリック・ドーバー
喜舎場 ピエール瀧
ウタ 栄莉弥
徳尚 塚本晋也
オン 永山瑛太
この記事を書いた人

映画やドラマの考察歴5年。映画好き歴20年。映画鑑賞累計2000本前後。ドラマは数百本。Webライター歴8年。いくつかのメディアでの執筆歴あり。映画やドラマの本質を追求するような解説や考察が書けるように日々精進しています。パーソナルな感想に普遍的な何かが少しでも宿っていれば幸いです。

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