映画『28年後…』(28 Years Later)を鑑賞。
私も大好きな『28日後…』『28週後…』の続編、シリーズ第3弾がついに劇場公開された!
- あらすじ・内容
- ネタバレなし感想:復習は必須?
- ネタバレ・ラスト結末
- 考察:母殺しや母性の継承
- 忖度なしの感想と評価
これらの情報をまとめました。果たしてシリーズ第3作の出来栄えは?面白いのかつまらないのかぶっちゃけます。
映画『28年後…』あらすじ
©︎コロンビアピクチャーズ
スタイリッシュグロアクションホラーの金字塔『28日後…』(2002)と『28週後…』(2007)の続編。
シリーズ第1作『28日後…』のダニー・ボイル監督とアレックス・ガーランド脚本が再びタッグを組んだ。
『28年後…』は3部作の予定で、続編の『28 Years Later: The Bone Temple』が2026年2月16日にアメリカで公開予定。こちらには第1作『28日後…』で主演を務めたキリアン・マーフィーが復帰予定。
ネタバレなし感想:復習は必要?
イギリス全土にレイジウイルス(感染すると正気を失って人を食い殺すようになる)が蔓延して、イギリス全土が他国から見捨てられて隔離されていることだけ知っておけば、特に過去2作の復習は必要ないと思う。
『28日後…』ではジム(キリアン・マーフィー)が病院から抜け出して仲間と安全な土地へ移動する過程、
『28週後…』ではイギリスで一旦感染が抑えられたかと思いきや感染者が発生してパニックになり、アンディ少年がスカーレット少佐やドイル軍曹(ジェレミー・レナー)に助けられつつ逃亡する過程が描かれた。
過去2作と『28年後…』は時系列上はつながってはいるものの、登場人物やストーリーの細かい繋がりはない。
ただ、過去2作とも傑作なのでパニックアクションホラーが好きなら絶対に見たほうがいい。
本題の『28年後…』についてもうぶっちゃけてしまうが、『28日後…』と『28週後…』のほうが個人的には全然好きだった。なんで28年経ってパワーダウンしているんだろう?(制作上は前作から18年)
感染者が射抜かれて死ぬ瞬間が静止画像になるなど映像上の工夫はあるし独特の世界観がクセになるが、ストーリーやアクションシーンのドライブ感が過去2作のほうが圧倒的にあった。
『28年後…』もぜんぜん悪くはないんだけど、過去2作が良すぎただけに物足りない感は拭えなかった。
映画『28年後…』ネタバレ・ラスト結末
母との旅路
通過儀礼として父・ジェイミーと一緒に本土へ渡った息子のスパイクは、本土のアルファの集団からなんとか逃げて廃墟でやり過ごし、夜に干潮になったタイミングで島へ戻る土手道を歩き出す。
しかし、後ろから巨大なアルファが全速力で走って追いかけてきた。
ジェイミーたちも走り、なんとか島の近くまでやってくる。しかしアルファはすぐそこに…アルファに捕まる寸前で仲間が槍を飛ばしてアルファを殺してくれた。
ジェイミーはホリー島で通過儀礼成功の祝いの席につき「息子のスパイクが何体もの感染者を倒した!」と話を誇張した。
その後、スパイクはジェイミーがロージーという女性と浮気しているのを目撃して失望する。
スパイクは老人・サムから本土の南西に住んでいるケルソン医師の話を聞き、母・アイラの病気を治してもらえると思った。アイラの頭痛はひどく、ときどき錯乱状態になった。
スパイクは父・ジェイミーと彼の浮気のことでケンカした。スパイクはアイラを連れてこっそり島から出る。
スパイクとアイラは本土で感染者たちに追い詰められ、エリックという兵士に助けられる。
エリックはスウェーデン人の兵士だが、イギリスを監視する巡航船が沈没したため、本土に漂着した。仲間の兵士は全員アルファに殺されたらしい。
頭蓋骨の塔
アイラは廃電車の中で、妊娠して出産しようとしている女性感染者を発見。お産を助け、スパイクが臍の緒を切る。赤ちゃんはレイジウイルスに感染していないようだ。
お産を終えた女性感染者が襲ってきそうだったためエリックが射殺。そこへ巨大なアルファがやってくる。巨大なアルファは、女性感染者の夫で赤ちゃんの親だ。
巨大なアルファはエリックの頭部をつかみ、脊髄を引き抜いて殺害。
スパイクたちは逃げる。そこへケルソン医師がやってきてアルファにモルヒネを塗った吹き矢を喰らわせ、眠らせた。
ケルソンはスパイクたちをアジトへ案内する。そこには骸骨で作られた巨大な塔があった。
ケルソンはエリックの死体を焼き、頭蓋骨を綺麗にして塔に置いた。死者への弔(とむら)いらしかった。
ラスト結末:大切な人との別れと出会い
ケルソンはアイラを診断し、癌だと告げる。アイラは余命わずかだった。ケルソンはアイラの同意を得て、薬で彼女を安らかに眠らせた。
スパイクは母・アイラの頭蓋骨を塔の最上部に乗っける。その瞬間、朝日が昇った。
スパイクは島へ帰り、赤ちゃんだけを置いてまた本土へ戻る。しばらく旅がしたかった。
スパイクは旅の途中で感染者に追い詰められ、ジミーという男性がまとめる集団に助けられて仲間に誘われる(冒頭でテレタビーズを見ていた少年が成長した姿)。
映画『28年後』終わり
『28年後…』考察まとめ:神秘的な母殺し
メタラーになったジミー
冒頭で家族を殺されたジミー少年が、最後に出てきたジミーだろう。
序盤でスパイクが逆さに吊るされてお腹にJIMMY(ジミー)と書かれている感染者を発見。
この感染者がジミーという意味かと思ったが違った。
ジミーの集団は感染者を殺してまわり、腹にJIMMYと書いていると考えられる。
ネックレスの十字架の向きが逆さなことから、キリスト教は守ってくれない…とアンチクライストになったようだ。
ジミーの父は神父だったが、家族が感染者に襲われたときも目を輝かせて「最後の審判だ(黙示録)」と言った。父が信仰心が厚すぎて何もしてくれなかったので、ジミーは信仰への不信感を持ったのだろう。
バックの音楽もゴリゴリのメタル。ジミーはメタラーになった。
感染者から生まれた赤ちゃん
女性感染者から生まれた赤ちゃんは母体と胎盤で繋がっているにも関わらず感染していなかった。
胎盤が感染を防ぐうんぬんの話もあったが、おそらく免疫を持っているのだろう。
『28週後』のアンディ少年と同じタイプだと思う。
アンディも免疫を持っており、噛まれても発症しなかった。
アンディはヘリでフランスへ逃亡することに成功したが、その後どうなったのだろう。
母親殺しのテーマ
28年後のテーマは、少年の通過儀礼と親殺し(子供が父母を精神的に乗り越えること)だろう。
とくに母親殺しの意図が顕著。母親・アイラはスパイクを優しく包み込むと共に、のみ込む存在(病気で錯乱して息子に頼り切りなところ)である。
ユング心理学のグレートマザー(太母)にピッタリ当てはまるキャラクターだ。
スパイクは尊敬する父のホラ吹き癖や浮気を見て彼を見下す。そのあとで母・アイラの庇護者(父)になろうと奮闘し、母と死別する。
父と旅をし、母と旅をしてそれぞれの存在を乗り越えるプロットが面白い。2回の旅をするコンセプトは非常に秀逸。
またスパイクは、女性感染者の出産を助ける母・アイラの姿を見て、母性のようなものもしっかり学んだと感じた。
暴力が支配する世紀末にあってマチズモ(男性優位の考え方)とは逆の価値観もしっかり学びとっているところに物語の深みがある。
難しいことは抜きにして、ケルソン医師のもとでメメントモリ(死を思え)の思想を教えられたスパイクが母の死を肯定的に受け入れる過程が、骸骨の塔と朝焼けと共に美しく描かれていた。
頭蓋骨の塔(スカルタワー)について
ケルソン医師は「頭蓋骨は眼窩でしっかり見ている」的なことを言っていた。
頭蓋骨の塔は死者が今もなお世界を見つめていることを意味する。
見た目のカルト感とは逆に、頭蓋骨の塔は世界を優しく見守る死者の魂の集合体だと思った。
紀元前頃にスコットランドやアイルランドで繁栄していたケルト民族では頭蓋骨崇拝の風習があったようだ。
敵の頭蓋骨は勇気と豊かさの証、身内の髑髏は幸せをもたらしてくれるものとして飾られたらしい。
ケルソン医師がやっていることもケルト民族の風習に近いと思った。
巨体の感染者・アルファが敵の頭部をもぎ取って飾るのも、ケルト民族の風習からきていると考えられる。
つまり『28年後…』は、28年経ってキリスト教から古来のケルト文化に回帰していく話でもある。
ちなみに1800年代初頃にセルビアでは反乱者の首を切って見せしめのスカル・タワー(Skull Tower/壁に頭蓋骨が埋め込まれた塔)が作られた。『28年後』もこれにインスピレーションを受けたのかもしれない。
映画『28年後…』感想と評価
良かった点:少年が男になる通過儀礼を描いた
弓矢をメインの武器にした中世ヨーロッパ風のテイストが興味深い。
感染拡大から28年の歳月が経ったが、イギリスだけ時代退行している。
時代だけでなく、ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)がホラ吹きで浮気しまくりの古いタイプの父親代表だったように。
人々の価値観も時代逆行していて面白い。
そりゃあんな感染者だらけの土地で生き抜くなら、強くなきゃいけないよな。
また、いつ死んでもおかしくないからこそ、少年が母親の死を受け入れるスピリチュアルなストーリーも興味深かった。
序盤でジェイミーが殺したスローロー(ノロい感染者)の近くに子供スローローがいたり、アルファの夫婦が赤ちゃんを産むなど、
感染者が肉食動物的に自然の中での生活に溶け込んでいるのも考えさせられた。
人類が滅亡したあとの新しい生態系。妙な哀愁が漂う独特の世界観だった。
菜の花畑から感染者が出てくるところなど全体的に絵力が強い。
あとウイルスで巨大化した感染者・アルファはチ○コまでデカくてびっくり。ブランブランさせながら襲ってくるのが笑えた。
シーンとしては、干潮のときの土手道を巨体のアルファが走って追っかけてくるシーンがスリル満点だった。
残念だった点:過去2作の良さがない
「28○後」シリーズ最新作としてこれでいいの!?というのが率直な感想。
過去2作では感染者に襲われる瞬間の映像が手ぶれ上等な感じでめちゃくちゃ臨場感があったが、本作はそこまで。音楽とのシンクロもイマイチだった。
ストーリー面では、過去2作にあった大切な人が意外な場面であっさり死ぬ命の儚さとやるせなさがなかった。
肉親が予想外の場面で死に、怠惰なロックミュージックがかかって気分は最悪だけどドライブ感満載!みたいなシーンが今作になかったのは非常に残念。
ダニー・ボイルたちコンセプト変えたの? 正直いって過去2作とぜんぜん違う映画にみえた。
また、少年スパイクの精神的な成長を描いたのはいいけど、物語が続編ありきな印象も受けた。まとまりや解決感が少ない。
スパイクたちが暮らしているホリー島についてももう少しディティールを描いて欲しかった。
あとは細かいところだけど、イギリス全土を封じ込めるのはいいけど生存者助けてやれよと思った。
生存者助けたらその中に保菌者(キャリア)がいた場合大変だから全員見捨ててるんだろうけど、隔離とか検査でなんとかなりそうだ。
まとめると映画『28年後』は過去2作とはテイストの大きく異なる凡作だった。私が期待しすぎたせいか?
死に囲まれた状況下でほとばしる生命エネルギーみたいなものが感じられなかった。次作に期待したい。
2025年公開の映画レビュー↓


映画『28年後…』キャスト
アイラ|cast ジョディ・カマー
ジェイミー|cast アーロン・テイラー=ジョンソン
ケルソン医師|cast レイフ・ファインズ
ジミー・クリスタル|cast ジャック・オコンネル
ジミー・インク|cast エリン・ケリーマン
スパイク|cast アルフィー・ウィリアムズ
エリック・サンドクヴィスト|cast エドヴィン・ライディング
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