映画『近畿地方のある場所について』を鑑賞。
菅野美穂と赤楚衛二が近畿地方の最大のタブーに挑む最恐Jホラー!
- ネタバレ・ラスト結末まで詳しく解説
- ラストシーンの本当の意味
- 呪いの正体やストーリーの意味を考察
- 意味がわかるとさらに恐怖が増す解説
- 謎の絵について
これらの情報を徹底解説していきます!
あらすじ・作品情報
監督の白石晃士さんは『ノロイ』『貞子vs伽椰子』『不能犯』など数々のホラーを手がける奇才。2024年はぶっ飛びホラー映画『サユリ』を担当した。

脚本の大石哲也さんはドラマ『金田一少年の事件簿』(1995)や、近年だと中田秀夫監督の『嘘喰い』(2022年)、『“それ”がいる森』(2022年)、『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』(2024年)を担当。
キャスト↓
瀬野千紘|cast 菅野美穂
小沢悠生|cast 赤楚衛二
『近畿地方のある場所について』ネタバレ・ラスト結末まで解説
近畿地方のさまざまな怪異
小沢と千紘が残された資料ビデオを見ていく。この過程が1番怖い。
目が真っ黒な少女:失踪した少女が夜中に目撃されるが、目が穴のようになっていた。この目が無い幽霊のビジュアルはのちのちの現象と共通する。
中学生たちの集団ヒステリー:ある中学の林間学校で、夜に外から「柿あるよ〜」という声が聞こえ、生徒たちが何人も意識を失う。外の木影から、何者かの手が見えた。
首吊り屋敷:2015年にニコ生配信者が首吊り屋敷に侵入。男の子の声を聞き、女の幽霊を見たのちに生配信中に失踪した。首吊り用のロープがたくさんある屋敷が怖すぎ。畳に大きな穴が空いているのがのちの伏線になっている。
近畿地方のあるアパートの5号棟:引っ越してきた家族が飛び降り自殺を目撃。アパートからは呪いの祠がある山が見える。
そのアパートでは、子供たちの間で「ましろさま」と呼ばれる遊びが流行っていた。ましろさまと呼ばれる鬼に捕まったら、何か身代わりを差し出さなければならないのだ。
さらに、そのアパートでは以前に中庭の木で男の子・了(あきら)が首吊りをし、母親が気が狂って変な絵(鳥居と人影)を拡散したという。
見たら死ぬビデオ:佐山が取材した大学生・目黒は、ニコ生にあった見たら死ぬビデオを友達と視聴。友達が失踪し、自身も呪われてしまった。首が曲がった男の子の霊や赤い服の女性の霊を見る。目黒の友達のアパートの玄関にも鳥居と人影の絵があった。
目黒は住職からお祓いを受けるが、住職から「強大な力に太刀打ちできない、とりあえず生き物を絶やさず飼え」と言われる。小沢と千紘の取材を受けた目黒は、首が曲がった男の子と女性の霊を見たという。飼った生き物がどんどん死んでいくが、自分は生き続けられると話す。
生き物が身代わりになってくれているということなのだろう。
ツーリングの男性:ツーリングをしている男が鳥居と祠の場所にやってくる。祠の中にはたくさんの人形があった。男はその場所で呪われる。
まさるさま
小沢と千紘は近畿地方に伝わる昔話「まさるさま」のビデオを見る。
昔々、まさるという男が大好きな母に死なれた後で神様から柿をもらう。神様は「この柿を女子に食わせて嫁になってもらい、母のように甘えたらいい」と言う。まさるは「柿あるよ〜」と叫ぶ。しかし柿を食ってくれる女子はおらず、まさるは死亡した。まさるが立っていた岩に祠が建てられたという。
これが現在、ツーリングの男が見つけた祠になっているのだろう。「柿あるよ〜」は林間学校で中学生たちが聞いた声と同じ。
「まさるさま」の話は抽象的だが、柿=生贄にされた人物(女)が偽物の身内(母親)に変換される呪いの象徴なのだろう。
ましろさま:あまのいわと宗教
小沢が呪われて奇妙な行動を取り出す。千紘が小沢をビンタして正気に戻すパワープレイ。
小沢は佐山の失踪を助けた人物から、佐山が現在は富士山の麓にいると連絡を受け、千紘と共に向かう。佐山は片目が潰れており(失踪前に自分と同じ見た目の霊に潰された)、奥さんは狂人となっている。たくさんの生き物の死骸があった。
佐山は「俺の次は小沢か!ほんととんでもない女だ!」と千紘にいうが、これが結末の伏線になっている。
奥さんは飛び降りて鉄の棒に突き刺さって死亡。佐山もその鉄の棒に自らの頭を突き刺して死亡した。
佐山が残したUSBの動画を再生する。そこには大切な人を失った人たちが集団で暮らす宗教・あまのいわとの映像があった。黒いギザギザの岩を祀り、天にいる大切な人に会うための宗教だった。なんとその映像に千紘も映っている。
千紘は以前に息子のたくみを亡くし、わらにも縋る思いでその宗教に入信したと語る。赤ちゃんだった息子が何者かに連れ去られ、公園の池に沈められて殺されたという。
千紘が最初から色々知っていて小沢を取り込んだ展開は台湾のホラー『呪詛』に似ている。
衝撃のラスト結末:すべてを仕組んだのは?
小沢と千紘は近畿地方の祠へ向かう。途中のトンネルで女性と子供の霊に襲われるが、千紘が叫びながら女性の霊をはねとばし、車を進める。この辺のパワープレイは映画『サユリ』と通じるものがある。
千紘は黒い岩は望む者の前に現れ、今は祠に岩が戻っていると考える。しかし祠に岩はない。千紘は祠をぶっ壊す。罰当たりで見てられない。
千紘と小沢は祠の奥にある山池へ。そこに無数の手を持った白い怪物がいた。千紘の前に黒い岩が現れる。小沢はここで気づく。すべては千紘が仕組んだことで、彼女は小沢を生贄にして自分の息子と再会しようとしていたのだ。
怪物から無数の目が飛び出し、小沢を襲う。小沢は黒い岩に取り込まれた。黒い岩から子供の声が聞こえる。
後日、千紘はSNSで友人が失踪したと呼びかける。友人の名は「小沢悠生」だった。千紘は赤ちゃんを抱いている。その赤ちゃんは触手が無数に生えた怪物だった。
冒頭で、千紘はSNSで友人が行方不明になったと呼びかけていた。これは佐山編集長のことかと思いきや、小沢のことだったというオチ!
ホラー映画のお手本とも言える最悪のバッドエンドで幕を閉じた。
『近畿地方のある場所について』考察まとめ
ストーリーの意味:呪いの正体
結論から述べると、大切な人を無くした人物が、黒い岩の力を受け、大切な人を戻してもらう代わりに他の人間を生贄にするのが呪いの根幹。
昔話「まさるさま」、息子が首吊りした後に呪いの絵を拡散させた母親、小沢を犠牲にして息子を取り戻そうとした千紘。
全員が誰かを犠牲にして大切な人を取り戻そうとしている。
柿を女に食わせれば母親代わりにできる「まさるさま」の話から察するに、柿=呪いを他人に喰わせると大切な身内が帰ってくる(実際には邪悪な存在)と考える。
また、呪いを受けてもペットなどの身代わりを差し出すことで生き延びることができる。
千紘が入信していたのがあまのいわと宗教であることから、千紘や教祖は黒い岩を天照大御神(あまてらすおおみかみ)だと勘違いしていたようだが、実際は邪悪なシシ神(もののけ姫)みたいな存在で、すべての呪いを拡散してたくさんの命を奪い取ろうとしていたと考えられる。
信じていた神が実は最悪の存在だった… というのは『女神の継承』や『呪詛』など近年のホラーでよく登場するモチーフだ。
また、失踪した少女や、首吊りをした少年の母親の霊に目がなかったこと、佐山が序盤で左目を奪われたこと、最後に小沢を襲ったのが目玉の大群だったことから、生贄にされたものはみな目を奪われ、呪いの一部になると考えられる。
千紘の息子も呪いで殺された?(結末がさらに怖くなる話)
近畿地方周辺でたくさんの呪いによる犠牲者が出た。犠牲者たちは呪いの生贄だ。
構造的には、
- 呪いによる犠牲者が出る
- 遺族が死者と会うために黒い岩を呼び出して呪いを拡散し、さらなる犠牲者を生む
- その遺族がまた呪いを拡散する…
このループ構造になっている。
そう考えると、千紘の息子も生贄として誰かに殺されてしまった可能性がある。
千紘の息子は池で死んだが、最後にましろさまがいたのも池という共通点もある。
推測になるが、5号棟アパートの中庭で首吊り自殺をした少年の母親が、千紘の息子を殺した線もあると思った。
千紘はこの母親の霊を車で撥ね飛ばしたが、復讐の意味もある(千紘は気づいていないかもだけど)というわけ。
謎の絵:了と女の意味
小沢は失踪した謎の家族の家にあった絵を写メった後から呪われ出した。絵を写真に収めると呪われると推測できる。
絵は、息子が自殺してしまった女性が拡散したもの。了(あきら)というのは息子の名前。生贄を捧げるから了を戻してくれという願いが込められているのだろう。
女と書かれた絵もある。これは「まさるさま」のお嫁を迎えて母親のように甘えたいという願いが反映されたものだと考える。
ラストの本当の意味:呪いは鑑賞者にまで感染
最後は千紘の顔が変形していた。これは、ましろさまに取り憑かれたという意味だろう。
(首吊り屋敷にあった写真の少年もこんな顔をしていた気がする。)
おそらく、最後に千紘が自分で撮影した「友人・小沢が失踪しました」(怪物の赤ちゃんを抱いている)この動画自体が、呪いを拡散するためのものだと考えられる。
この映画を観た鑑賞者にも呪いが拡散された。そんなメタ的なコンセプトが伺える。
このコンセプトも『呪詛』と通底するものがある。

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