高橋一生主演で映画化されることになった『岸辺露伴は動かない』懺悔室。
荒木飛呂彦の漫画版は短いが面白く、とても印象に残る話だった。
- 原作漫画のストーリー解説(ネタバレあり)
- 感想や考察
これらの情報をまとめました。

『岸辺露伴は動かない』懺悔室のあらすじ(ネタバレあり)
岸辺露伴はイタリアのヴェネチアに取材も兼ねて旅行にきていた。
露伴は教会に入り、取材のために懺悔室で適当な告白をしようとする。
しかし露伴は神父の側の席に入っていた。ある男が告白する側に入ってくる。その男は信じられない告白をしてきた。
男の話:男は若い頃に資材運びの肉体労働をしていた。そこへ移民した東洋人らしきホームレスが現れて食べ物を欲しがった。5日間食べていないらしい。
男は働かずに食べ物を貰おうとするホームレスに怒りがわき「荷物を運べば食べ物をやる」と言った。
ホームレスは荷物を運ぶがその最中に死亡。
ホームレスの怨霊らしきものが現れ、「お前が幸せの絶頂の時に迎えに(殺しに)戻ってくる」と言った。
それから男は幸運の数々に見舞われ、数年後に富豪になりモデルと結婚。
娘が遊んでいるのを見た男は幸せの絶頂を感じる。
しかしその瞬間、娘にあの時のホームレスの怨霊がのりうつった。
怨霊は、これまで男が運に恵まれていたのは自分が手伝っていたから…幸せの絶頂で殺すためだったと話す。そして、ポップコーンを高く投げて3回キャッチできれば、俺が死んだのは逆恨みだったとして消えてやると言った。
男は3回目で失敗して首を切られてしまう。
現在の懺悔室:露伴は首を切られたならなぜ男が生きているのか疑問に思った。男は怨霊が戻ってくるのを予期し、ある人物を整形させて影武者にしていたと告白。怨霊が殺したのはその影武者だったのだ。
露伴は懺悔室から出た男のそばに影武者の怨霊を見る。「お前の娘を幸せの絶頂のときに殺す」と男に言っていた。そばにはホームレスの怨霊もいた。
『岸辺露伴は動かない』懺悔室の感想と考察
『岸辺露伴は動かない』シリーズとしては第1作目の話。1997年に読み切りがジャンプに掲載されたあと、単行本『死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集』に収録され、2013年の『岸辺露伴は動かない』の1巻に掲載された。
タイトルは「エピソード#16 懺悔室」となっているが、シリーズの1話目。岸辺露伴は奇妙な出来事をたくさん経験している。そのうちのひとつ!ということで#16と表記されたのだろう。
男が怨霊の復讐を恐れて用意周到に準備してきたことがわかる。娘の隣にいた執事・使用人みたいな男が本物だ。つまり表向きはずっと執事として生活していたのだろう。
露伴がいうように、男は怨霊に取り憑かれながらも孤独に人生を前向きに生きている。闇(と2体の怨霊)を抱えながらも淡々と生き延びようとしているのが面白い。
男は娘も整形させそうだ。しかしそれはできないように2人の怨霊が見張っている。娘が幸せの絶頂のときに殺されるのは避けられないのかもしれない。娘が死んでも、それでも男は孤独に生きていきそうだ。そこに人間のしたたかさと恐怖があると感じた。

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