ネタバレ考察『劇場版モノノ怪 火鼠』形・真・理を解説!映画第二章の感想評価

第二章『劇場版モノノ怪 火鼠』(映画)

映画『劇場版モノノ怪 火鼠』(第二章 ひねずみ)を鑑賞。

前作と同じかそれ以上の日本的な映像美に圧倒された。

記事では火鼠のストーリーについて形・真・理からのネタバレ解説と、火鼠や御水様ついての考察をまとめていく。

『劇場版モノノ怪 火鼠』あらすじ・作品情報

日本公開日:2025年3月14日(金)
長さ:74分
監督|中村健治(総監督)鈴木清崇
脚本|新八角
音楽|岩崎琢
主題歌|アイナ・ジ・エンド「花無双」

あらすじ

モノノ怪・唐傘を倒してから1ヶ月後、薬売り(神谷浩史)が多くでネズミの気配を感じ取る。

大奥では大友ボタン(戸松遥)が歌山の代わりに大奥を取り仕切ることになる。

ボタンは大奥の厳しい戒律の徹底を宣言し、身分が低い家出身の御中臈・フキ(日笠陽子)が天子(入野自由)の寵愛を一身に受けることを防ごうとした。フキは激怒する。

ある日、フキは妊娠した。老中の大友(堀内賢雄)はフキが後継を産むのを防ぐために非道な行いを示唆した。
そんな中、フキに嫉妬した女中のサヨが突然に発火して焼死する事件が発生。さらにフキの水に毒を仕込んだ夜伽坊主も焼け死ぬ。

薬売りは、サヨたちを殺したモノノ怪の正体は火鼠(ひねずみ)の子供たち(小さな炎の集団)だと勘づく。火鼠の子供たちは母がどこにいるのかと探していた。

薬売りは剣でモノノ怪を斬るために形・真・理を知ろうと大奥を探る。20年前に火事で死亡したおすずという女中の霊が関わっているという噂だった。おすずは門番の坂下が若い頃に世話になった優しい女中だったが。。。

ネタバレなしの感想

今回も平面・フラットをコンセプトにしたアニメーションが極上。色彩と映像に圧倒された。これは絶対に劇場で見たほうがいいやつ!映画というよりもアニメーションの美術館。

映像の美しさだけで大満足だったが、火鼠の悲しい情念についてのストーリーにも心を打たれた。

話の難しさでいくと、前回の『唐傘』よりはストーリーがだいぶわかりやすかった。

映画『劇場版モノノ怪 火鼠』形・真・理ネタバレ解説

火鼠(ひねずみ)。妊娠・出産・子孫繁栄の象徴として人間たちを守る優しい面のあるモノノ怪だが、今回はフキの妊娠を妬む者や阻止しようとする者を炎で殺す恐ろしい面を発揮。

サヨや夜伽坊主を殺したのは火鼠の本体ではなく、子供たち。

20年前におすずという女中が天子様の子を妊娠したが、老中・大友の命により薬を飲まされて堕胎させられた。薬を渡したのはおすずの父親だった。

おすずは自らの子供を失ったことで感情を無くし、自ら畳にロウソクを落として火事で死亡した。

フキも身分が低く、父親から出産を諦めたという境遇がおすずと共通していた。しかしフキは産みます(口パクのシーン)と言った。

ついに薬売りは、老中・大友がいる部屋の下に火鼠の母親を見つける。火鼠の母親は自らを業火で燃やしていた。

火鼠はおすずの情念の化身だった。

おすずは自ら薬を飲んで子供を堕胎させたことが許せず、火鼠になったあとも自分を罰していたのだ。

薬売りは退魔の剣を抜いて神儀になり火鼠を一刀両断。

その後、火鼠を弔うような花火が上げられた。

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火鼠の母親と子供たち

火鼠はおすずの情念がモノノ怪になったもの。本体である母親と子供たちに分かれている。

女中のサヨや夜伽坊主を殺したのは火鼠の子供たちだった。火鼠の子供たちは小さな炎の集合体で、妊娠したフキを狙う者たちを焼き殺した。

火鼠の子供たちがフキの体に入っていったのは、害を与えるためでなく母親(おすず)だと思ったから。もしくは妊娠しているフキを守りたかったからだと考える。

大奥にはおすず以外にも望まれない子供を妊娠→堕胎させらた赤子の命が無数にさまよっているのだろう。それが火鼠の子供になったとも推察できる。

火鼠の母親が老中・大友の部屋の下にいたのは、すべての元凶である大友を恨んでいたからだろう。

おすずと同じ境遇のフキを守るために活発になったのだと思う。

合成の誤謬:子を失うことまで強制させる

前作『唐傘』では女中たちみんなが臭い水を飲んで犠牲を受け入れるような合成の誤謬(全体のためになることが、個人のためになるわけではない)がテーマだった。

そのテーマは一貫しており、『火鼠』では子を失うことまで権力に強制される合成の誤謬が表現されていた。

老中・大友の思惑=身分の低い家が天子様の後継ぎを産むのを防ぐというのは個人の視点では間違っている。しかし大奥を守るという全体の視点を考えた場合は権力者同士の争いを防いで多くの命を救うことになるかもしれない。

そんな難しい問題が提示されていた。

ボタンが大奥の決まりごとを徹底した理由

映画『劇場版モノノ怪 火鼠』

大奥の取締役になったボタンは夜伽(天子様との情事)に関する決まりを徹底し、フキが立て続けに寵愛を受けることがないようにした。

おそらくボタンは、フキが最初に妊娠してしまったら殺される・堕胎させられるなどの悲劇が起こることを予期していたのだろう。ボタンは大奥の決まりでフキを縛り、同時に守ってもいたのだ

映画『劇場版モノノ怪 火鼠』

エンドロールについて

エンドロールでは御水様を司どる社に繋がれていた青いロープ(綱)が切れた。

天照大神(あまてらすおおかみ)のロープは唐傘のエンドロールですでに切れている。

今回切れたのは黄色い絵の月読命(ツクヨミ)と思われる。

残されたロープはあと1本。建速須佐之男命(スサノオ)に繋がれたものだ。

3本のロープすべてが切れたときに御水様の力が暴走して巨大なモノノ怪が誕生しそうだ

映画『劇場版モノノ怪 火鼠』感想と評価(ネタバレ)

良かった点

嫉妬や情念が渦巻く大奥を舞台にしたモノノ怪シリーズの第二作。絵画的な美しさと自ら子を失う道を選んだ女性の情念が高いレベルでシンクロしていた。

画面にシワを入れることでよりフラットに見せる映像と、権力や同調圧力に負けた女性の悲劇がマッチしていた。だからこそ芸術にどっぷり浸かるような贅沢な時間を堪能できた。これは制作陣のセンスという他に説明できないだろう。

残念な点

酷評するような要素は何一つないが、前作『唐傘』に比べると謎が少なく、伏線を回収していくような楽しみ方をする作品ではなかった。

20年前に死んだおすずが火鼠になった動機も子供を失うことを強制されたからというのはわかりやすい。深く考え込むような大きな謎はそこまでなかった印象。

『火鼠』は1時間少々と短かった。もっとボリュームがあってもいいと思った。

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