ルヴィス・プレスリーの自伝をもとにした映画『エルヴィス』を観てきた。
エルヴィスの動きのダイナミクスとロックン・ロールの破壊力をマッチさせた演奏シーンは迫力があるのだけど、好みではなかった。
理由はエルヴィスとトム・ハンクス演じるトム・パーカー大佐の二項対立になっていたからだ。
例えばミュージシャン系映画で超ヒットしたクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』が、メンバーの断絶・ドラッグ・セクシャルマイノリティ・エイズなど諸問題をすべて伝説的なライブという枠組みに昇華した印象なのに対し、
『エルヴィス』では音楽が家庭不破など諸問題の一部になってしまったイメージ。
音楽という鍋なのか、音楽が鍋の材料なのかの違い。
言い換えれば、映画という枠組みを音楽の力で超えようとしたのが『ボヘミアン・ラプソディ』で、音楽をストーリーのひとつの要素と捉えたのが『エルヴィス』。
もちろんエルヴィスと彼を転落させたショービジネスの対立は話にはなりやすいし、自伝を描くなら別に間違いでもないのだが、音楽が最大公約数的に機能していないことに物足りなさを感じた。
音楽には善も悪も芸術も快楽も全てが含まれていて、個人を包み込む力がある!
そういう作品を私は欲していたのだろう。
同じ音楽映画でもストーリー構造やベクトルが根本的に違うというお話!
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